中央経済社発行「企業会計/2007年3月号」に掲載されている「サッポログループにおけるシェアードサービス/山田良一(サッポロホールディングス株式会社ビジネスサポート統括部長)」の記事をもとに情報を整理しております。
ホールディングス化の目的
サッポロでは、以下の目的のもと、
2003年にホールディングス移行。
①連結経営の強化
②経営資源の効率化
③環境変化への迅速的な対応
④グループ経営資源を活用した積極的な事業戦略展開
⑤各事業会社の自主独立したスピード経営
⑥グループシナジー効果の創出
シェアードサービス組織設立の目的
ホールディングス化を機に、
以下の目的のもとシェアードサービス機能を
ホールディングカンパニー内に新設。
①グループ企業に重複する間接業務の統合による効率化
②事業会社組織を戦略部門に集中させることによる戦略機能の強化
シェアードサービス組織(ビジネスサポート統括部)
ホールディングカンパニー内の
シェアードサービス組織として、
以下のミッション等のもと、
「ビジネスサポート統括部」を設立。
※上図:「企業会計/2007年3月号:P27より引用)
(1)ミッション
サッポロホールディングス及びグループ各社に共通する
サポート業務を集約・統合し、業務メニューを運用することで、
●専門性の発揮による業務品質の向上
●スケールメリットを活かした効率化によるコスト削減
●グループ各社の業績向上に貢献
といったことを達成する。
(2)顧客の定義
サッポログループの各社とその従業員を
当部の「顧客」と定義。
行動指針として、
①業務品質の向上
②コストの削減
③顧客志向
の3つを掲げて、
当部のメンバーが仕事をするときに
常に念頭に置けるように取り組みを進行。
シェアードサービス化の効果
シェアードサービス化の効果としては、
以下が挙げられる。
①業務品質の向上
②効率的な人員体制
③業務の進め方の見直し
④インフラの整備
※当参考文献自体が2007年のものと古いため、
タイムリーな情報ではありません。
Review
今回ご紹介させていただいた
同社のシェアードサービス組織づくりの事例については、
今となっては10年近く前の取組みとなります。
そのため、
同社内の現状も変わっていると思いますし、
シェアードサービスに対する研究も
当時よりは進んでいると言えるため、
あくまで参考としての情報となります。
但し、
当参考文献に記載されている
シェアードサービス化に向けての意図や
その過程での問題点等については、
普遍的なテーマとして、参考になります。
同社では、まず
ホールディングカンパニー内で
シェアードサービス組織を作る形で
スタートをしています。
その理由としては、
①円滑的な移行
②新規子会社設立コスト・手間の省力化
③本社としての指導力の支援
といった点を挙げられています。
一方で、
その後は「シェアードサービス子会社」方式へ
移行をされています。
もともと「シェアードサービス子会社」方式で
採算管理等をしっかりしたい意向が
あったのだと思いますが、
まずはスムーズな移行を優先し、
ホールディングカンパニー内に
シェアードサービス組織を作る方式から
スタートした感じです。
また、同社の取組みでは、
「グループ内の各事業子会社=顧客」
という定義にすることで、
シェアードサービス機能の役割を
明確にしていることが、
特徴的だと感じました。
本文献からも感じますが、
シェアードサービス機能を作るにあたって
グループ組織デザインに正解は
無いように思います。
また経営環境やステージの変化により
最初に意図したデザインから
変わっていくことも十分あり得ます。
このようななかで重要なことは、
「シェアードサービスの存在意義(ミッション)」
について、しっかりと考え、
明確にすることだと思います。
ここさえブレなければ、
どのような組織デザインがよいかは、
自ずと見えてくると思います。
参考記事(シェアードサービス)
●Vol.32 ホールディングス × シェアードサービス=?
●Vol.121 中小企業がシェアードサービスを活用すれば、売上が1ケタ上がる
●Vol.124 独自性のあるシェアードサービスの出発点とは?
●Vol.129 シェアードサービスとバリューチェーンの関係
●Vol.133 シェアードサービスをどのようにグループ経営に組み込むべきか?
●Vol.134 シェアードサービス子会社のメリット&デメリット
●Vol.135 ホールディングカンパニーにシェアードサービス機能を置く
●(Q13)シェアードサービス化していく前に押させておくべき点は?