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Vol.207 はじめてのホールディングス経営は不安?

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なぜホールディングス移行が増えているのか?

最近は、ホールディングス形態に移行される会社が
一段と増えてきたように思います。

経営者は、常日頃、
最適な組織デザインを試行錯誤していくものですが、
最近は、なぜホールディングス形態が選択されることが
多くなってきたのでしょうか?

 

国内マーケットの伸びが鈍化し、競争が激化していますし、
海外展開もそう簡単にはいくものではありません。

ライバル同士の業務提携や
M&A等による事業領域拡大も盛んになってきているなかで
これまでとは違った思考で、これまでとは違ったやり方を通じて、
多くの会社が事業存続と拡大を模索しています。

 

このような背景のなかで、
「これまで通りのグループ経営ではまずい」
「グループの経営もこれまでと違ったカタチに変えていかなければ」
という危機感もあり、
最適なグループ組織デザインを模索した結果、
ホールディングス体制に行き着くことが多いのではないでしょうか。

 

最近はM&A機会は増えていますし、
事業領域拡大とともに子会社数も増える傾向にあるため、
どれだけきちんとしたグループ経営を行って、
グループシナジーを発揮できる体制にしていけるかは、
事業存続・拡大の前提条件になってきていると言っても過言ではないでしょう。

つまり、
ホールディングス体制への移行が増えている状況を見ていると、
これまで優先順位としては低く位置づけられていた
「グループ経営の経営」
が本格的に重要視され始めたということなのだと思います。

 

従来のグループ経営

従来型のグループ経営で多いのは、
親会社の経理部とか経営企画部とかが、
親会社業務の傍らで連結決算やグループ数値まとめをしている、
といったカタチなのではないかと思います。

あくまで
主業務は「親会社事業のための業務」であり、
グループ経営自体が主業務という位置づけではないといった具合です。

 

グループ企業のトップである社長は、
グループ全体の数値を意識して経営する機会は多いですが、
それ以外の取締役レベルになると、
グループ全体のことを考える意識や余裕は
極端に低くなってしまっているのが実情ではないでしょうか。

 

数値面で言うと、
連結決算とかグループ経営計画といった形で、
グループ数値をまとめたものが作成されることは当然あります。

但し、極論すると、
グループのトップである社長以外は、
このようなグループ全体の数値に興味がなかったり、
グループ全体の数値の責任は自分には関係ない、
といった感じで接していると言えるでしょう。

 

グループ全体の前に、
やはり自身が管掌するグループ会社だったり、部門だったりが、
優先されるということです。

 

但し、この状況はある意味仕方ないとも言えます。

従来型のグループ経営の問題は、

—————————
「グループ経営」の経営について
責任の所在が明確でない
—————————

ということにあると言えるでしょう。

 

そして、
この問題を組織デザインの観点から解決を図るのが、
ホールディングス体制移行とも言えます。

 

ホールディングス化の背景

ホールディングス移行事例で必ずと言ってよいほど
挙げられる目的があります。

それは、

—————————————-
・グループ経営の戦略立案機能と事業執行機能の分離
・権限委譲と責任体制の明確化
—————————————-

といった点です。

 

この目的の裏を返せば、
「従来型のグループ経営では、
 グループ経営に関する戦略立案・業務執行に関する
 役割(権限)分担が明確ではなく、責任の所在も明確ではなかった」
ということが読み取れます。

おそらく、このような状況は、
多くのグループ経営の現場での実態だと思います。

 

経営者であれば、このような状況に
気づいていなかったわけではないと思います。

ただ、この問題に気づいてはいても、
この問題を改善することが優先順位の高い経営判断だとまでは、
感じていなかった経営者はいらっしゃったかもしれません。

 

それでも少しずつですが、
この「グループ経営の責任の所在」があいまいであることが、
緊急度も重要度も非常に高い課題であるということに
多くの経営者が気づき、解決に向けて行動に動き出しているのが、
ここ最近のホールディングス体制移行事例の多さの理由だと思っています。

グループ経営の仕組みを作り、
グループ経営のノウハウを蓄積していくことが、
経営者の最重要課題になりつつあるということです。

 

別にホールディングス体制に移行したからといって、
このような問題・課題がすぐに解決できるほど甘くはないと思いますが、
この課題にきちんと向き合って、試行錯誤を繰り返しながらでも、
グループ経営の仕組みを作ろうとする姿勢は、
中長期的にみると企業グループの競争優位の源泉になると思います。

 

初めてのホールディングス経営

ホールディングス体制への移行を決断することは、
1つの重要な経営判断ではありますが、
実際には移行を決定した後からが、
本当の意味で大変な状況が始まると言ってもよいのではないでしょうか。

理想的にはホールディングス体制は最適なように思えても、
実際に詳細を決めていこうとすると、
いろいろな点で悩むと思いますし、試行錯誤すると思います。

 

但し、このような悩みや試行錯誤は、
当然起こるべきことだと思います。

 

なぜなら、
これまでと違う仕組みを作ろうとする取り組みであり、
多くの人にとって初めての取り組みでもあるからです。

ホールディングス経営には、
まだまだ事例や歴史も少ないこともあり、
他社の事例や書籍等で正解を探すようなことは
基本的にはできないと思ってよいと思います。

逆に、現場が悩んだりしない程度で行う
ホールディングス体制移行であれば、
あまり効果も期待できないと言ってもよいかもしれません。

 

つまり、

———————————
ホールディングス化
=過去のグループ経営のやり方との決別
=新しいグループ経営の仕組みを構築する
———————————

ということなので、
当然難しいチャレンジだということです。

 

どの会社も試行錯誤しながら、
1つ1つ前に進んでいる状況は一緒だと思います。
(なので、試行錯誤しても心配しないでください)

きっと、グループ経営の仕組み作りにチャレンジしない会社よりは、
長い目で見ると良い結果になると思います。

 

★★★★★★★
ホールディングス体制移行は、
過去のグループ経営のやり方との決別
★★★★★★★

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