経営指導料とは何か?
グループ経営のなかで
よくテーマに上がるのが、
「経営指導料」
です。
以前にも、
「【コラム】経営指導料の算定方法 」
「【研究】経営指導料の比率(1/2)」
「【研究】経営指導料の比率(2/2)」
のなかで、
考え方についてお伝えしてきました。
ただ、
多くの場面で「経営指導料」という言葉が、
一人歩きしているような印象を感じるのも事実です。
たとえば、
「適正な経営指導料はいくらですか?」
「いくらだったら経営指導料は認められますか?」
「グループ間の経営指導料で上手く損益を調整したいんですけど・・・」
といった類の質問をよく受けます。
気持ちはよく理解できますが、
議論のスタートを、
「経営指導料をどうすればよいか?」
というところに設定すると、
どうしても実態とかい離してしまう傾向があります。
本来は、
実態があったうえで、
その対価として「経営指導料」の話に
移っていくべきだと思います。
そこで、今回は改めて
「経営指導料とは何か?」
について考えてみたいと思います。
親会社とは?
いわゆる「経営指導料」を議論する前提として、
最初に「親会社」の立ち位置を
明確にしておきたいと思います。
そもそも「親会社」とは、
どのような立場にある法人なのでしょうか?
端的に表現すると、
———————————–
親会社=大株主としての立場
———————————–
と言えるでしょう。
一番シンプルなケースとしては、
親会社はオーナーとしての立場だけに徹して、
基本的に経営にも口を出さないスタイルが考えられます。
このケースを考えた場合に、
「経営指導料」
という概念が成り立つかどうか?
普通に考えると、
経営指導の前提となる実態が
存在しないと思いますので、
「経営指導料」は存在し得ないことになります。
この場合、
親会社のオーナーとしての見返りが
何になるかというと、
「配当収入」
になると言えるでしょう。
つまり、
親会社であることと
経営指導料を受け取れることは、
別問題ということです。
そう考えると、
経営指導料と言われる類のものを
子会社から親会社が受け取るということは、
—————————————–
親会社=「大株主+α」の存在
—————————————–
である必要があると言えそうです。
この「プラスα」が何なのか?
ここを明確にすることが、
「経営指導料」と深く関係する、
ということだと思います。
親会社の「プラスα」の存在意義
グループ経営において、
親会社はどのような存在意義(ミッション)を
持っているのか?
この前提次第で、
親会社の活動や取引も変わりますし、
それにより発生するお金の流れも
変わってきます。
たとえば、
いくつかのケースを考えてみましよう。
■設例
ケースA)親会社=大株主
ケースB)親会社=大株主+資金融資
ケースC)親会社=大株主+経営管理
ケースD)親会社=大株主+業務受託
ケースE)親会社=大株主+権利貸与
ケースF)親会社=大株主+不動産賃貸
ケースG)親会社=大株主+設備・インフラ貸与
このようなパターンあった場合に、
親会社の収入としては、
どのような収入になるのでしょうか?
■親会社の収入イメージ
それぞれのケースにおいては、
以下のような収入が考えられます。
ケースA)配当収入
ケースB)配当収入+貸付利息
ケースC)配当主入+経営管理料
ケースD)配当収入+業務受託収入
ケースE)配当収入+権利利用料(≒ロイヤリティ)
ケースF)配当収入+不動産賃貸料
ケースG)配当収入+設備等利用料
つまり、
親会社の存在意義が明確になっていれば、
親会社がやるべき活動が明確になります。
親会社がやるべき活動が明確であれば、
それに伴い生じるお金のやりとりが明確になります。
その結果として、
「経営指導料」
の前提となる役務提供があるのであれば、
堂々と経営指導料を受け取ればよい、
ということです。
どうしても、
「親会社はどうやって子会社から
お金を回収すればよいか?」
という議論が先に行われる傾向にありますが、
発想としては「逆」なはずです。
また、
なんでもかんでも、
「経営指導料」という名目で
処理しようとする傾向もありますが、
これも議論を変な方向に向かわせる
要因の1つのような気がしています。
本来は、
親会社の存在意義(ミッション)を明確にしたうえで、
上記のケース分けのように、
お金のやりとりの前提を細分化して金額算定すれば、
理論的になりますし、わかりやすくなるはずです。
子会社の立場で考えてみる
経営指導料や
親会社収入のことを考える際には、
どうしても親会社の立場での検討になることが多いものです。
親会社は、
グループ全体のことを考える立場にあることを考えると、
当然なのかもしれませんが、
1つ意識をしていただきたい視点があります。
それは、
———————————-
子会社の立場で考えたときに、
本当に必要な取引なのか?
———————————-
という視点です。
通常、役務の授受は、
双方の意思が合致して初めて
成り立つものです。
このことは、
グループ経営の場合においても
例外ではないはずです。
親会社側の立場や視点がある一方で、
子会社側の立場や視点もあります。
どちらか一方だけ、
というものではないはずです。
このあたりを突き詰めていくと、
いわゆる「経営指導料」議論も
少し進展していくのではないかと思っています。
長くなってきましたので、
続きは、次回に譲りたいと思います。