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Vol.183 シェアードサービスによる「弊害」は?

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グループ経営と重複業務

グループ会社が増えていくと、
自然と業務の重複や肥大化
生まれてくるため注意が必要です。

 

グループ会社が複数できていくなかで、
いったん生まれた業務は
なかなか消滅しづらい特性があります。

いったん生まれた業務には必ず「人」がつくため、
その業務が会社にとって必要であるかどうかに係わらず、
その業務を「守ること」「存続すること」自体が
目的となっていく傾向があります。

 

そのため、
普段から意識的に「業務」を増やさないように
注意をしておかないと、
優先順位の低い業務が、
ルーティン業務として定着してしまうものです。

とくに管理系の業務は、
第三者からは何をやっているかが
わかりづらいこともありますので、
注意が必要でしょう。

シェアードサービス機能の組み込み

「管理コストをできるだけ削減したい」

これは、
すべての経営者の共通の思いだと思います。

そのなかで、
グループ経営を進めていく中で
自然と浮かんでくる発想が、
「シェアードサービス機能」
となります。

 

シェアードサービスとは、
たとえば、経理や人事・総務といった管理業務を
グループ会社全体で「シェア」することで、
業務を一元化するような組織デザインです。

 

シェアードサービス機能が上手く機能すれば、
必要な業務を削減することなく業務集約をすることで、
グループ全体での効率を上げることができます。

また、第三者からは見えづらい
管理系の業務がグループ各社へ点在せず、
1ヵ所に集約されるため、
各現場で優先順位の低い業務が
新たに生まれてくるのを防止する効果も期待できます。

 

グループ会社が増えていくと、
自然と業務の重複や肥大化が起こりやすくなるため、
グループ組織デザインの中に
いかに「シェアードサービス機能」を埋め込めるかが、
グループ経営の効率化のポイントでもあるでしょう。

シェアードサービスによる「弊害」を意識する

グループ経営のなかで、
シェアードサービス化をしようと思うと、
まずは、
・経理
・総務
・人事
・ITシステム
といった管理系の業務から検討していくのが
やはりオーソドックスなところだと思います。

経営者としては、
各事業子会社の現場における
管理上の負荷を軽減してあげたい、
という思いもあると思いますので。

 

“各事業子会社の管理業務について、
 各現場から切り離せる部分は、
 できるだけ切り離してグループ全体で共有する。”

この考え方については、
多くの経営者にとっても
違和感のないものだと思います。

 

但し、このような管理系の業務の
シェアードサービス化を検討していくうえで、
注意も必要だと思っています。

それは、

——————————-
「シェアードサービス
 ≠ 子会社が行う管理業務を無くす」
——————————-

であることです。

 

ここを意識しながら
シェアードサービス化を進めていかなければ、
各会社における「管理に対する責任感」が低下し、
逆にグループ全体で生産性が落ちてしまいかねない、
という懸念があるからです。

管理の「魂」

先ほどの
“ シェアードサービス ≠ 子会社が行う管理業務を無くす ”
という主張に対しては、

「シェアードサービス化することで、
子会社が行う管理業務を無くすことになるのでは?」

といった声も聞こえてきそうですので、
最後に補足をして今回は終わりたいと思います。

 

確かに、シェアードサービス機能を充実させると
各グループ子会社の管理業務は少なくなると思いますし、
それが大きな目的の1つでもあります。

但し、各事業子会社が
管理業務をすべてシェアードサービス組織に
丸投げする感覚になると、
危険だと思うのです。

 

やはり事業を遂行していくにあたって
管理業務は不可欠であり、
管理無き事業遂行は片手落ちと言えます。

そのような前提のうえで、
私が表現したかった
“ シェアードサービス ≠ 子会社が行う管理業務を無くす ”
の意味としては、

————————–
管理の「作業・手続き」は現場から切り離しても
管理の「魂(意識)」は現場から切り離してはいけない
————————–

ということが言いたかったのです。

 

つまり、
管理業務の作業等は、
シェアードサービス組織に委託しても、
その管理の意識だけは、
やはり各事業子会社が常に持っているべきだと思っています。

シェアードサービスという「形」ができるだけに、
現場の「誤解」が生まれないように意識しながら
シェアードサービス化を進めていかなければ、
管理業務に対して無責任な事業子会社群が出来あがってしまい、
グループ全体としての管理自体も
上手くいかなくなるリスクがあると言えるでしょう。

 

シェアードサービス化による
業務の切り分け、管理責任の切り分けは、
会社の状況によって違いは出てくると思いますが、
シェアードサービス化を進めるうえでの「意識」については、
是非押さえておいていただきたいと思います。

★★★★★★★
管理の「魂(意識)」は
事業子会社の現場に残っていますか?
★★★★★★★

 

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