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【事例】三井造船株式会社

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※平成29年3月30日に三井造船株式会社より適時開示されている「会社分割による持株会社体制への移行準備開始に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行準備開始

開示概要

●平成29年3月30日開催の取締役会において、
平成30年4月1日(予定)を効力発生日として、
会社分割の方式により持株会社体制へ移行すべく、
その準備を開することを決議した。

●持株会社体制への移行は、
平成29年6月28日開催予定の定時株主総会による所定の決議
及び関係官庁の許認可などが得られることを条件として実施する予定。

持株会社体制移行の背景

●船舶、海洋、機械、プラント、社会インフラ、
その他IT・サービス関連など広範囲の事業分野において培った複合技術と
グローバルな事業活動で積み重ねた経験を基に、
社会や人々からの期待に応え信頼を高めることを経営の基本方針としている。

●平成28年2月に発表した、目指す将来像や方向性、
今後の10 年間にわたる会社のあり方を示す長期ビジョン
「MES Group 2025 Vision」の達成に向けたファーストステップとして、
平成29年2月7日に「2017年度中期経営計画」を策定、公表している。

●そのなかで、
「環境・エネルギー」「海上物 流・輸送」「社会・産業インフラ」
3事業領域に注力し、グループ総合力の発揮による利益率の向上と
収益安定化を目指していく旨を記載しているが、
そのためには「2017年度中期経営計画」にある
「経営基盤の深化」「グループ経営の深化」を進めていく必要がある。

●事業環境は、原油価格の変動、大型プラント投資の回復速度の鈍化、
為替変動(米国の為替政策転換リスク)、商船市場の需要回復の遅れに加え、
中国・韓国といった新興国の競合造船会社勢による技術面を含めた
急速なキャッチアップなどの大きな変化の時期を迎えている。

●新興国を中心としたエネルギー需要の増加や
環境・省エネ志向の高まりを背景に事業拡大の機会も大きくなっている。

●このような事業環境下において、
グループ経営の深化を加速させるために、
船舶事業、機械事業及びエンジニアリング事業を
それぞれ事業会社として分社化し、持株会社体制へ移行すべく、
その準備を開始することを決議した。

持株会社体制移行の目的

●持株会社体制に移行することにより、
分社化された各事業会社は、業務執行権限・責任を大幅に移譲され、
事業独立性と経営責任が明確になる。

●これにより、各事業会社は、
①戦略立案・実行スピードの向上
②外部環境の変化に伴う柔軟な戦略変更
③他社とのM&A(業務提携を含む)などの大胆な戦略実行
④選択と集中の促進による一層の企業価値の向上
に取り組んでいく。

●一方、純粋持株会社は、
①事業独立性が強くなった各事業会社及びグループ内各社との連携体制の強化
②グループ全体の経営計画策定などの戦略立案を通じたグループ各社の有機的な一体感の醸成
③「MES Group 2025 Vision」で成長領域としている3事業領域への経営資源の集中
により、グループ企業価値の向上に取り組んでいく。

●純粋持株会社は、
グループ全体の戦略立案グループファイナンスなどの機能を担い、
グループ全体最適の経営を追求していく。

持株会社体制への移行方法

●同社を分割会社とする会社分割の方式により、
「船舶事業」「機械事業」「エンジニアリング事業」を完全子会社とすることを想定。

●会社分割の詳細、持株会社体制移行後の詳細事項については今後決定次第、開示する。

持株会社体制への移行スケジュール(予定)

①持株会社体制への移行に関する取締役会決議:平成29年5月22日(予定)
②持株会社体制への移行に関する定時株主総会における承認:平成29年6月28日(予定)
③持株会社体制への移行:平成30年4月1日(予定)

 

Review

今回は「三井造船」の事例です

大きな会社ではありますが、
大きな会社も小さな会社もホールディングス化という意味では、
同様の課題を持っていると思いますので、
取り上げさせていただきたいと思います。
(大きな会社の方が、組織改革はより大変な印象はありますが)

 

まず前提情報として、同社の財務状況を
確認してみたいと思います。

————————————–
平成24年3月期:連結売上高5,718億円/連結営業利益314億円(5.5%)
平成25年3月期:連結売上高5,770億円/連結営業利益240億円(4.2%)
平成26年3月期:連結売上高6,700億円/連結営業利益199億円(3.0%)
平成27年3月期:連結売上高8,165億円/連結営業利益132億円(1.6%)
平成28年3月期:連結売上高8,054億円/連結営業利益118億円(1.5%)
平成29年3月期(予想):連結売上高7,400億円/連結営業利益120億円(1.6%)
————————————–

注目したい点としては、
グループの売上高は拡大傾向である一方で、
グループ全体としての営業利益は下がってきていて、
グループ営業利益率は、5年程度で、
5.5%から1.6%へと大きく下落しています。

 

外部環境の影響を受ける要素が強いとはいえ、
当初の中期経営計画は達成できていないようですし、
この傾向は気になるところです。

そして、2017年2月7日に
新たに公表された2017年度中期経営計画では、
過去の中期経営計画の実施状況を振り返ったうえで、
今後の方針が記載されています。

 

このなかでは、いろいろと施策が書かれていますが、
これらの施策を支える前提として、

—————————————
グループ経営の深化・経営基盤の深化
(1)リスクマネージメント強化
(2)グループ視点での人材ローテーション推進
(3)グループ財務基盤の強化
(4)投資計画
—————————————

といったようなことに注力する旨のメッセージがありました。

 

また、この2017年度中期経営計画のなかで、
三井造船グループとして目指す姿(2019年度末のありたい姿)として、
「グループ総合力の発揮による利益率の向上と収益安定化」
ということも掲げられていました。

 

同社のこのような流れを前提に考えると、
今回のホールディングス移行準備の開始の背景や目的も
とてもよく理解できます。

 

とはいえ、グループ会社も150社以上ある
大きなグループ会社ですし、歴史もありますので、
相当大変なグループ組織デザインの変更になるとは思います。

ただ、ホールディングス化することは、
かなり大きな組織改革になると思いますし、
グループ経営の意志(メッセージ)も社員に伝えやすい機会なので、
妥協せずに、過去にあった組織の壁や弊害等を壊して、
良い意味で徹底的に組織改革にできれば理想的なような気がします。

大きな会社、歴史のある会社の場合、
どうしても無難なところで落ち着きがちなので・・・。
(私の勝手なイメージですが)

 

大きな会社がホールディングス化することで、
グループがどのように変化をしていくのか、
新たな2017年度中期経営計画の進捗とともに、
個人的には注視していきたいと思います。

 

★★★★★★★
ホールディングス化は
過去の企業文化を変えるチャンス?
★★★★★★★

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