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Vo.209 なぜシェアードサービス化が難しいのか?

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シェアードサービス

グループ経営の現場では、
しばしば「シェアードサービス」について、
議論が上がることがあります。

 

グループで機能・業務をシェアすることで、
グループ全体での効率化を図るという趣旨だと思いますが、
主に間接部門を中心に議論されることが多いのではないでしょうか。

たとえば、
人事や総務の機能、経理関連の機能、といったあたりに
まずはフォーカスが当たるケースが多いと思います。

 

ただ、理想と現実のギャップは大きく、
大きな方向性としては理解を得られやすいシェアードサービス化ですが、
実際に掛け声だけで前に進まなかったり、
思ったようなカタチにならなかったり、
といったことはよくあると思います。

頭では理解できても、
実際に実行していこうとすると
何から手を付けていけばよいか、
とても悩むのがシェアードサービス化です。

 

そのうえ、
もともとの間接部門の特性として、
「変化を嫌う」「変化に弱い」
といった傾向がありますので、
より難しい取り組みなっていきます。

 

シェアードサービスの目的

とはいえ、
シェアードサービス化を進めていくのであれば、
このあたりの難しさを克服していく必要があります。

そのためにまず必要なことは、

————————————
間接部門のマインドブロックを外してあげて、
変化へのモチベーションを上げてあげること
————————————

なのではないかと考えています。
なんだか抽象的かつ精神論的ですが…。

 

ただ、この課題は、
経営者が想像しているであろう以上に
大きな課題だと最近は感じています。

 

多くの現場では、
シェアードサービス化について「あるべき論」は語られていて、
間接部門のメンバーも、その必要性や有用性自体は、
概ね理解をしているはずです。

但し、「あるべき論」だけで
シェアードサービス化に向けて動き出せるほど
容易な取り組みでないことも、事実です。

 

営業や製造の現場とは違い、業績評価が難しいのが、
間接部門・管理部門の特徴と言えるでしょう。

また、「攻撃」というよりは「守り」の役割を
求められやすいのも間接部門・管理部門の特徴です。

 

そのような状況において、
変化することで業務負荷が増えたり、ミスしたり、
さらには失敗してしまうことに対する抵抗や不安・恐怖は、
間接部門の現場においては想像以上に大きいと思います。

 

「できることなら同じやり方を続けたい」

 

間接部門では、自然とこのような方向に傾きがちです。

 

このような状況下においては、
「あるべき論」だけを唱えても変化は期待できず、
きちんと、精神面をフォローし、マインドブロックを外してあげたうえで、
シャアードサービス化することへのモチベーションを
きちんと持たせてあげることこそが、
とても重要なことのように最近感じています。

 

シェアードサービスの目的は?

一般的なシェアードサービス化の目的としては、
いろいろな切り口があると思いますが、
集約すると、

————————–
①コスト削減
②業務の標準化(質向上)
③スピード向上
————————–

の3つぐらいに分類できるような気がします。

この①②③はそれぞれ関連しているため、
当然、複合的に達成される側面はありますが。

 

そして、多くの会社では、
これらの3つの目的を重要なものとして
並列的に掲げている印象が強い気がします。

さらに言うと、
これらの3つの目的を並列的に掲げつつも、
最も強調されるのは「①コスト削減」のような気がします。

 

経営者の感覚としては、
当然気になるのが「①コスト削減」であることは、
私自身も一経営者の立場としては、とても理解ができます。

 

ただ、先ほど記載したように、
間接部門のシェアードサービス化を進めていくためには、

————————————
間接部門のマインドブロックを外してあげて、
変化へのモチベーションを上げてあげること
————————————

が重要であるとすると、
この「①コスト削減」を強調するのは、
あまり得策ではありません。

 

なぜかというと、
間接部門の現場側の思いからすると、
「間接部門のコスト削減=間接部門の人件費削減」
「間接部門のコスト削減=間接部門の存在意義の否定」
と捉える傾向が非常に強いからです。

そして、このような認識になると、
間接部門の人材の特徴である「変化を嫌う」という側面が強く表れるため、
前に進んでいけなくなっていきます。

 

間接部門の生産性向上は、
とても重要な経営課題であることは確かですが、
それを達成していくためには、
間接部門のモチベーションコントロールに相当な神経を使ったうえで、
シェアードサービスの目的を伝えていく必要がありそうです。

 

シェアードサービスの目的の優先順位

経営者としては、
「最も大きなコスト=人件費」
という認識は必ず持っているはずです。
とくに間接部門となるとなおさらです。

 

とはいっても、
人件費を削ればよいものではないことや
「最も重要な投資=人件費」
であることも、当然ながら、
同時に理解されていると思います。

 

このように、
ハイリスク・ハイリターンな投資であるのが、
「人件費」
と言えます。

 

そして、
売上を稼いでくれる「営業部門」の場合には、
「人件費=投資」
という認識を持ちやすいのですが、一方で、
後方支援部隊である「間接部門」のこととなると途端に、
「人件費=コスト」
認識しがちになるのも、また1つの事実なように思います。

 

ただ、このようななかでも、
経営者として重要なこととしては、
「間接部門の人件費も『投資』である」
と認識してあげて、そのことを
間接部門の現場へメッセージとして発信してあげること
なのではないかと思うのです。

たとえば、
シェアードサービス化の目的として
上記の①②③のうち、あえて「①コスト削減」は強調せず、
「②業務の標準化(質向上)」
「③スピード向上」
の2つだけを強調するだけでも、
間接部門の現場のモチベーションはかなり変わるように思います。

 

なぜなら、
この「②業務の標準化(質向上)」「③スピード向上」といった点は、
間接部門としての専門性にフォーカスされているので、
自分たちが「コスト」対象ではなく「投資」対象として見てもらえている、
という存在意義・価値を刺激するような気がするからです。

 

当然、経営という観点で言うと
「①コスト削減」という目的を無視してよいわけではありません。
結果としては「①コスト削減」も達成できるという前提が当然あってのうえです。

 

イメージとしては、こんな感じでしょうか。

————————————————
シェアードサービス化によって…、
  ↓
「③スピード向上」
  ↓
経営判断の迅速化や競争力の向上の達成
  ↓
さらに、「②業務の標準化(質向上)」していくことで、
  ↓
グループ経営管理の質向上
  ↓
業績の拡大・生産性向上
  ↓
間接部門の評価UPで給与もUP
  ↓
相対的な間接部門のコストは削減され「①コスト削減」も達成
————————————————

 

なんだか、理想論をこねくり回しているように思われるかもしれませんが、
意外と核心をついているのではないかと、個人的には思っています。

 

要は、

————————————
シェアードサービス化をしたいのであれば、
間接部門の価値を認めてあげることから始める必要がある
————————————

というお話でした。

 

★★★★★★★
シェアードサービスを始める前に
知っておきたかったこと
★★★★★★★

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