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【事例】日本工営株式会社

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※日本工営株式会社より適時開示されている「純粋持株会社体制への移行に向けた検討開始に関するお知らせ(2021年6月10日)」をもとに情報を整理しています。

内容

・純粋持株会社体制への移行とそれに伴う組織再編の詳細な検討を開始

 

検討の背景と目的

●グループは創業以来、総合建設コンサルタントのリーディングカンパニーとして
安全・安心な生活、豊かな日常を支える社会資本づくりに関わる
コンサルタント事業や電力エンジニアリング事業を展開している

●グループでは、2030年を見据えた長期経営戦略において、
社会課題に応えることを戦略の基本に据え、
「コンサルティング」、「都市空間」、「エネルギー」の3事業を基幹事業と位置づけ、
さらなる成長を目指している

グループ全体戦略を担う純粋持株会社を設立し、
業務執行を担う各事業会社のそれぞれが
責任と機動性を発揮できる経営体制への移行を目指す

●経営資源の適切な配分、グループガバナンスの一層の強化等により
中長期的な視点でグループの経営を深化させ、
成長をより確かなものにしていくため、
新たなグループ経営形態への移行について検討を開始する

●検討にあたっては、グループ内のみならず、
関係するステークホルダーとの対話も通じて
グループ企業価値向上に向けた最善の判断を行いたいと考え、
本件の検討開始を現時点でお知らせすることとした

 

純粋持株会社体制への移行の方法など

2024 年6月期を目処に、新たに純粋持株会社を設立し、
当該持株会社の傘下に分野別の事業会社群を配置することを基本に、
今後具体的なスキーム等の検討を行っていく

●今後検討を進め、詳細が明らかになった段階で、改めてお知らせする

 

持株会社体制への移行方式

~これから検討~

 

持株会社体制への移行日程

2024 年6月期を目処に移行する前提で検討

 

Review

今回は「日本工営」の事例です。

ホールディングス化の詳細はこれから検討をしていくということですが、
2024年6月期を目途に移行予定ということで、
3年くらい先の計画のようです。

このタイミングでの公表ということで、
かなり先のような気がしましたが、
同社の有価証券報告書を確認すると、
グループ会社が100社弱あり、海外への展開も多いようなので、
それくらいの準備・検討期間が必要ということでしょう。

 

また、セグメント情報を確認すると、
以下のような感じで、事業も多岐に渡っているようです。

 

同社がホールディングス化を決定した目的・背景は、
————————————————-
●グループでは「コンサルティング」、「都市空間」、「エネルギー」の
3事業を基幹事業と位置づけ、さらなる成長を目指す

グループ全体戦略を担う純粋持株会社を設立し、
業務執行を担う各事業会社のそれぞれが
責任と機動性を発揮できる経営体制への移行を目指す

経営資源の適切な配分、グループガバナンスの一層の強化等により
中長期的な視点でグループの経営を深化させ、
成長をより確かなものにしていくため、
新たなグループ経営形態への移行について検討を開始する
————————————————-
とあります。

グループ成長にあたって、
最適なグループ組織デザインを検討した結果、
ホールディングス体制を決定したとのことです。

 

もう少し背景を確認してみたいと思い、
同社の状況を確認していたところ、
このホールディングス化の方針決定と同時に、
「日本工営グループ 長期経営戦略策定のお知らせ」
というリリースも公表していました。

もともと、この「長期経営戦略」がベースにあり、
そのためのグループマネジメントの理想形として
ホールディングス体制を決定したということだと理解ができました。

 

この「長期経営戦略」の概要は以下の通りです。

<外部環境>
・長期経営戦略では、環境変化に機敏に対応し、
 更なる基盤強化と体制整備を通じてグループの更なる企業価値向上の実現を目指す

<目指す姿>
・コンセプトを共創。限界なき未来に挑む」とした
・社内および社外の多様なパートナーとの共創を通じ、知の探究、
 技術の革新と統合をすることにより新たな価値を提供し、
 人々が豊かさを実感できる持続可能な社会の実現に貢献する企業グループを目指す

<基本戦略>
共創のために下記の3施策を推進する

●共創施策1:事業区分の再編、ワンストップ体制構築
1)3つの事業ドメインの新展開
・事業群を「コンサルティング事業」、「都市空間事業」、「エネルギー事業」の
3つのドメインに再編のうえ、既存事業の高度化および新たな事業展開を推進する
2)ワンストップサービスの実現と機動的な事業運営
・地域・会社ごとの区分けをせずシームレスに融合・連携することで、
各ドメインのサービスを横断的にワンストップで提供できる事業体制を目指す
3)事業マネジメント分野への本格展開
・各ドメインにおいて、事業投資(PPP、PFI)、行政支援、データマネジメント等の
「マネジメント分野」への本格的な展開を図る

●共創施策2:自律と連携の促進
1)自律と連携、意思決定の迅速化、多様性の共存のため純粋持株会社へ移行
・グループ会社が自律的経営を行いつつ、日本工営グループのミッション、
 技術とガバナンスによる強力な求心力で結ばれた組織を作り上げる
純粋持株会社をコアにした企業群を作り、
 グループ全体に亘るコンプライアンス、情報セキュリティー等に係るリスクマネジメントの徹底、
 ガバナンスの強化、世界各地域単位の統括管理、運営の合理化・効率化を徹底する
2)事業と地域を両軸としたマトリクス経営の実施
グループが持つ全サービスを横断的に提示できる営業体制を構築し、
 各ドメインの事業および地域単位での事業をマトリクスで
 運営管理する組織体制により機動的な事業展開を図る
・グローバル・各地域が持つ社会問題に向き合い、
 多様なニーズに対し、スピード感をもって最適な解決策を提案する

●共創施策3:NKG ブランド、NKG クオリティの体現
1) 技術戦略と連携した世界トップクラスの人財育成
・グループ全体で世界トップクラスの人財を育成するため、
 ナレッジマネジメント、教育研修、外部機関との連携を柱とする
 NKG Global Academy を創設する
・同時に、各国拠点毎に日本工営ブランドを体現する人財を育成する
・技術戦略と密接に連携した教育機会・プログラムを拡充するとともに、
 各国拠点での現地人財の積極登用、ダイバーシティ推進等にも取り組み、
 優れた人財を育成していく
2)デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現化
・デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを加速化させ、
 DX技術を用いた最適なソリューション提供を実現する
・将来性のある技術を自社開発および社外とのアライアンスで開発し、事業に適用していく

 

上記の「長期経営戦略」から、、
同社の長期的な戦略のキーワードは
「共創」
であると言えます。

個人的には「共創」というフレーズは好きなフレーズでして、
グループ経営においてもとても重要な考え方になると思います。

 

また、2030年という長期の戦略を公表されているということで、
かなり本気のグループ経営改革に挑戦しようとしていることが感じられます。

 

同社は、この長期的な「共創」の施策を実現していくために、
ホールディングス体制がよいと判断したということだと思いますが、
そこには、「自律と連携の促進」という考え方で取り組んでいくとのことです。

グループ共創戦略を、
グループ全体としてマネジメントする役割として、
ホールディングカンパニーを位置付けていくという感じですね。

 

★★★★★★★
グループ共創戦略としての
ホールディングス化
★★★★★★★

 

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