はじめに
よく議論になるテーマとして、
「経営指導料の金額」
があります。
とくに
同一グループ内で発生する
経営指導料は注意が必要です。
外部の第三者に支払うのであれば、
サービスに見合った金額が
支払われることが想定されます。
一方で、
グループ内でのサービスであれば、
いくらでも自由に金額を決定できてしまいます。
そのため、
グループ会社間での利益調整として
「経営指導料」が使用される可能性があります。
また、
経営指導は、
目に見えづらいサービスであるがゆえに、
金額の妥当性が問題になりやすいのです。
確かに
グループ経営の場合、
親会社が子会社から
「経営指導料」
の名目で収益を受け取っている事例を
よく見かけます。
そして多くの場合が、
経営指導料の金額の算定方法は
あいまいです。
なんとなくの定額報酬だったり、
売上高に一定の率(%)を掛けたり
利益に一定の率(%)を掛けたり。
いろいろな考え方があることは問題ないのですが、
そこに理屈が通っていることが、
重要なポイントです。
理論武装
そこで、
「経営指導料」について
今回は考えてみたいと思います。
まず意識しないといけないのが、
「経済合理性」
でしょう。
具体的には、
①なぜ「経営指導料」が必要なのか?
②なぜ「親会社」から経営指導を受けるのか?
③どのように「金額」を算定したのか?
の3点を明確にできるかどうか。
この3点が明確にできれば、
堂々と税務調査でも戦えるはずです。
上記の①~③をあいまいにせず、
徹底的に具体的にしておくことが必要です。
①なぜ「経営指導料」が必要なのか?
まず子会社にとって、
「経営指導」が必要であることが
大前提になります。
具体的には、
「経営指導が無かったらどうなるのか?」
「経営指導があると、どう変わるのか?」
といった問いに、
明確に回答できる必要があります。
あいまいにせず、
具体化して、明文化しておいてください。
②なぜ「親会社」から経営指導を受けるのか?
経営指導を受ける必要性があるとして、
なぜ、それが「親会社」からである必要があるのか?
ここで注意していただきたいのは、
「親会社は子会社を管理する必要があるから」
といった理由に逃げないでいただきたい、
ということです。
親会社が子会社を管理するのは、
当たり前のことであり、
そのこと自体を経営指導を受ける理由にしてしまうと
理論としては少し弱くなってしまいます。
そのため、
まず発想のスタートとしては、
経営指導提供者の選択肢として
・外部業者(コンサルタント)
・親会社
の2つがある前提で、
理論構築をしていただきたいと思います。
「なぜ外部コンサルタントではなく、
親会社を選択するのか?」
と聞かれた時に
明確に即答できるようにしておいて
いただきたいのです。
ちなみに、
この段階で金額の要素を加えると
少し複雑になるので、
この時点で金額の要素は除外して
検討していただくのが良いのと思います。
③どのように「金額」を算定したのか?
最後に問題になるのが、
経営指導料の金額算定です。
一般的に、
金額算定の根拠が
あいまいになりがちなのは、
経営指導の内容自体があいまいだからです。
そのため、
まずは「経営指導の内容」を
明確にすることがスタートです。
そうしたときに、
上記①②が明確になっていれば、
「経営指導の内容」
も明確になっているはずです。
その前提で、
金額の根拠を「数字」を使って、
具体的に設定する必要があります。
必ず数字を使って、
計算プロセスを説明できるように
しておきましょう。
個人的には・・・
上記の①~③ですが、
個人的には以下のような感じで考えます。
①なぜ「経営指導料」が必要なのか?
やはり「利益アップ」と必ず結びつけます。
それが一番経済合理性を説明できるからです。
利益アップの要因は様々ですが、
たとえば、
・売上増加
・コスト低減
・生産性UP
といったことです。
②なぜ「親会社」から経営指導を受けるのか?
親会社の「独自ノウハウ」と結びつけます。
他社でもできることであれば、
どうしても他社と比較をされてしまいますが、
親会社にしかないノウハウであれば、
他社と比較のされようがありません。
当然、親会社が実際に
独自ノウハウを保有していることが前提ですので、
親会社としても
そのような親会社になるように
努力をすることが重要です。
③どのように「金額」を算定したのか?
上記①で経営指導と利益を
結び付けていますので、
利益の増加額と関連付けて、
金額の算定式を作ります。
形式も重要です
概念としては、
上記の①~③を
理論武装しておくことが重要です。
一方で、
経営指導は、
やはり目に見えづらいサービスであることに
変わりはありません。
そのため、
数字を使って説明したり、
経営指導の結果がわかる報告書を残したり、
といった見栄え(形式)も
重視した方がよいでしょう。
実態のない形式では意味がありませんが、
実態があるのであれば、
形式もきちんと整備しておくことで、
主張の強さが増します。
ホールディングスという選択肢
形式を重視する中で、
組織構造自体も形式の1つといえます。
その点で、
ホールディングス経営は
わかりやすい形式の1つです。
ホールディングス化して、
「業務の主目的=経営指導すること」
「法人の存在意義=経営指導すること」
になるようにすれば、
実態と形式を伴ったグループ組織になります。
つまり、
ホールディングス化することは、
組織構造を通じて、
経営指導料の正当性を主張する
1つの理論武装といえるでしょう。
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