※株式会社アルデプロより適時開示されている「持株会社体制への移行検討に関するお知らせ(平成30年5月15日)」をもとに情報を整理しています。
内容
持株会社体制への移行の検討開始
開示概要
●平成30年5月15日開催の取締役会において、
平成30年11月1日を目処とする持株会社体制への移行の検討に入ることを決議。
●また、持株会社体制に移行する場合、
平成30年11月1日付(予定)で商号を変更することも検討しているが、
引き続き持株会社として上場を維持する前提で検討している。
●なお、これらの持株会社体制への移行および商号変更等につきましては、
平成30年10月開催予定の定時株主総会による所定の決議
および関係官庁の許認可等が得られることを条件とする。
持株会社化の背景と目的
●平成26年8月21日付の
「中期経営計画における基本戦略の拡充に関するお知らせ」
で発表している通り、
さらなる発展のため、再開発アジャストメント事業をコアビジネスとして
不動産再活事業に取り組んでいる。
●また、平成30年3月23日付の
「業務提携に関するお知らせ」で発表している通り、
仮想通貨決済サービスに関する業務提携を締結するなど、
不動産事業を軸としながらさらなる発展のため、
収益源として付随する新規分野の事業開拓についても模索している。
●こうした状況下で、
不動産事業単独での事業活動から、
新たにグループが保有する販売用不動産や今後取得する物件を活用した
民泊事業、フィンテックの分野に参入する方針である。
●加えて、高価格時に太陽光FIT(固定価格買取制度)認定を
既に取得している企業の買収を前提とした
太陽光・バイオマス発電等の再生可能エネルギー事業への参入も検討している。
●このようにグループとして不動産事業に依存することなく、
収益性、成長性の高い新たな事業領域を模索、獲得していくため、
M&A戦略に機動的に対応できる組織体制を整備する目論みである。
●こうした今後の事業構想の中で、
企業グループのさらなる事業の発展および企業価値向上を目指すため、
・経営戦略の策定
・経営資源の最適配分
・経営人材の育成
・コーポレート・ガバナンス強化
・機動的かつ効率的な情報管理の機能強化
を推進していく環境の構築が必要であると判断した。
●そして、業種が異なる子会社を統括するという
重要な機能を持株会社に集約するため、
持株会社体制への移行を検討することを決定した。
●また、今後の持株会社体制への移行に伴う経営全般に関して、
取締役会は、筆頭株主で主要株主であり創業者の豊富な経験と知見、
不動産業界のみならず異業種を含めた経済界での広範な人脈等が有益であると考えており、
取締役として招聘する事を含めて、大幅な取締役人事の刷新等も検討している。
●なお、創業者は、過去に経営責任を明確化するため
代表取締役、取締役を辞任しているが、
取締役会は、現時点、今後の発展のために
創業者の取締役としての尽力、貢献が有効であると考えている。
●今回の創業者の取締役招聘も勘案し、
さらなるガバナンス強化に向けた内部管理体制の構築を含めた
持株会社体制への移行に関する具体的なスキーム、
移行後の経営、取締役人事、事業運営体制については、
今後慎重に検討を重ね、取締役会で決議していく。
持株会社体制への移行方式
●具体的な移行スキームおよび持株会社移行後の体制等については、
今後詳細な検討を実施し、取締役会で決議していく。
持株会社体制への日程(案)
①平成30年8月中旬(予定):移行スキームの詳細の決定
②平成30年10月下旬(予定):定時株主総会での議案上程
③平成30年11月1日(予定):持株会社体制への移行
Review
今回は「アルデプロ」の事例です。
同社は不動産業を軸としつつ、
今後、収益性、成長性の高い新たな事業領域を模索、獲得していくため、
M&A戦略に機動的に対応できる組織体制として、
ホールディングス化を検討開始した、
との内容です。
つまり「多角化のためのホールディングス化」といった感じでしょうか。
今回の事例には、実は続きがありまして、
この「検討開始」の公表から約4ヵ月後に、
「(開示事項の延期)持株会社体制への移行延期に関するお知らせ」
という開示をしていまして、
ホールディングス化を延期することを決定しています。
ホールディングス化を本格検討した結果、
それを中止したり、延期する事例はたまに見かけますが、
今後ホールディングス化を検討される会社にとっては、
参考になる部分もあるかと思いますので、
今回は同社の「延期」の背景について確認をしてみたいと思います。
平成30年9月25日に公表された
「(開示事項の延期)持株会社体制への移行延期に関するお知らせ」
によると、
ホールディングス化の移行延期の理由には、
以下のような背景があるようです。
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●不動産事業単独での事業活動から、
新たにグループが保有する販売用不動産や今後取得する予定の不動産を活用した
民泊事業、フィンテックの分野、加えて、
高価格時に太陽光FIT(固定価格買取制度)認定を
既に取得している企業の買収を前提とした太陽光・バイオマス発電等の
再生可能エネルギー事業への参入を検討していた。
●こうした今後の事業構想の中で、
グループのさらなる事業の発展および企業価値向上を目指すため、
・経営戦略の策定
・経営資源の最適配分
・経営人材の育成
・コーポレート・ガバナンス強化
・機動的かつ効率的な情報管理の機能強化
を推進していく環境の構築が必要であると判断し、
業種が異なる子会社を統括するという重要な機能を持株会社に集約するため、
持株会社体制への移行手続を進めてきた。
●この準備手続きの一環として、平成30年7月20日には、
100%子会社として「株式会社アルデプロ分割準備会社」を設立し、
宅地建物取引業免許も申請済みである。
●このようななか、
持株会社体制への移行手続きと並行して進めていた平成30年7月期における
不動産事業での大口物件の売却が不調となり、
平成30年7月期の通期業績が未達となった。
●これを受け、主に業績、現在の経済基盤状況
及び今後取り組むべき優先課題等について総合的に検討したところ、
現時点で人的および物的資源を投下して持株会社体制を進めることは
時期尚早と判断するに至り、持株会社体制への移行を延期することとした。
●なお、持株会社体制への移行の延期とは別に
太陽光・バイオマス発電等の再生可能エネルギー事業等の新規事業分野への参入については、
今後も時期を見ながら継続して検討していく予定である。
●また、合同会社甲州マネジメントの出資持分の取得時期に関しては、
売買契約書の締結と決済を2018年9月予定とお知らせしていたが、
再生可能エネルギー事業への参入時期と合わせて取得を行う予定であるため、
2018年9月中の取得は見込んでいない。
●なお、デューデリジェンスについては継続して行うが、
太陽光発電設備設置のために確保すべき土地の調査対象事項が広範に亘り、
デューデリジェンスに相当程度の時間を要している状況である。
●取得することが確定した場合には、改めてその取得内容および時期をお知らせする。
●持株会社体制への移行を延期したことにより、
筆頭株主で主要株主である創業者の取締役への招聘及び就任の予定も白紙となった。
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上記を要約すると、
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・業績が順調に推移していない
・ホールディングス化の1つの柱である新規事業のM&Aが予定通り進んでいない
・そのようななかで経営的な優先順位を再考した
・結果、人的・物的資源をホールディングス化に振り向けるのは優先ではないと判断した
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といった感じでしょうか。
個人的には、良い決断だと思います。
背景の詳細は当然わかりませんが、
一度決めたことでも、優先順位が変われば、
その決定にとらわれず、方針を変えることは重要です。
ホールディングス化はメリットも当然ありますが、
一時的には混乱やデメリットもあり得ますし、
また、一度ホールディングス化すると、
なかなか元に戻しづらいという点もあると思います。
その意味では、同社のように
きちんとホールディングス化の要否を検討して、
ホールディングス化を延期するといった決断は、
他の会社の皆様にとっても勇気をもらえる事例と言えるのではないかと思います。