※平成29年2月10日に株式会社デジタルアイデンティティより適時開示されている「持株会社体制への移行方針決定に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。
内容
持株会社体制への移行
開示概要
●平成29年2月10日開催の取締役会において、
平成29年7月3日を目処に、持株会社体制へ移行する方針を決定し、
その本格的な準備を開始することを決議した。
●持株会社体制への移行については、
平成29年3月29日に開催予定の
定時株主総会での承認を経て正式に決定する予定。
持株会社体制移行の背景
●グループは、企業ビジョンである「創造の連鎖」の実現を目指し、
インターネット広告代理事業を中心とした
デジタルマーケティング事業からスタートした事業領域を、
テクノロジーとマーケティングで消費者を繋ぐプラットフォームを
運営するライフテクノロジー事業へと拡大してきた。
●今後も、主力事業であるデジタルマーケティング事業においては、
順調に拡大を続けるインターネット広告市場の成長率を超える速さで成長させていくとともに、
ライフテクノロジー事業を始めとした、
新たなインターネットの潮流を捉えた成長分野へも積極的に挑戦し、
企業価値の継続的な向上を目指していく。
●将来にわたる持続的な企業価値創造の実現のため、
今後の成長戦略を支える経営体制として持株会社体制へ移行する方針を決定した。
持株会社体制移行の目的
①グループ経営戦略機能の強化
●主力事業であるデジタルマーケティング事業において、
市場成長を着実に捉えた継続的・安定的な拡大を図るとともに、
内部留保の有効活用により、成長性・収益性の高い事業領域に積極的に挑戦し、
持続的な利益成長実現を目指すことが重要な課題と考えている。
●持株会社体制に移行することにより、
M&Aや新規事業創出に戦略的かつ機動的に対応できる組織体制を構築する。
②各事業会社の自律的経営による効率経営の実現
●各事業会社の権限と責任を明確化し、自律的な経営の推進により、
意思決定の迅速化による効率的かつ機動的な事業運営を図る。
③経営者人材の育成
●事業会社のマネージメント経験等の機会を積極的に創出することにより、
グループを牽引する次世代経営人材の育成を図る。
持株会社体制への移行方法
具体的な移行スキーム及び持株会社移行後の体制等については、
今後詳細な検討を実施し、取締役会で決議次第、開示する。
持株会社体制への移行スケジュール(予定)
①定時株主総会での議案上程:平成29年3月29日(予定)
②持株会社体制への移行:平成29年7月3日(予定)
Review
今回は「デジタルアイデンティティ」の事例です
同社の特徴としては、
・比較的、社歴が浅い会社である
・経営陣の年齢層も比較的若い
・最近(平成28年)、株式上場をした会社である
・平成27年10月より連結決算を実施している
・連結子会社は1社
といった点があげられます。
このような株式上場後間もない状況、かつ社歴もそれほど長くなく、
また、グループ経営という意味でも子会社が1社の状況のなかで、
ホールディングス化を決定した背景を知るために、
新規公開時の有価証券届出書(平成28年8月)を確認してみました。
同社が技術革新の早い業界で、競合も多いという
経営環境の中での課題やリスクについて、いろいろと記載がありましたが、
そのなかでもホールディングス化に少し関連しそうな部分を
以下に抜粋をしてみたいと思います。
<対処すべき課題>
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●海外展開への対応
経済活動のグローバル化に伴い、
デジタルマーケティング市場及びアプリ市場においてもグローバル化が進んでおり、
当社グループにおいても、海外市場への対応が必要であると認識しております。
かかる課題に対して、当社グループでは市場調査をすすめており、
デジタルマーケティング事業においては、
海外の投資用不動産のポータルサイトである「Global Homes」を運営しており、
ライフテクノロジー事業においては、
アプリ既存タイトルの海外展開の可能性等を検討しております。
●人材確保と人材育成
当社グループの企業規模の拡大及び成長のためには、
高付加価値なサービスを提供し、継続的に高い顧客満足度を得る必要があると考えております。
そのためには、社員全員が経営理念や経営方針を深く理解し、
チームワークを発揮していく必要があります。
当社グループでは、採用活動を積極的に推進するとともに、
社員への教育体制の整備及び改善を図り、
チームを構成する個々人の才能を伸ばす取り組みを推進して参ります。
●内部管理体制の強化
当社グループは、今後もより一層の企業規模の拡大及び成長を見込んでおります。
そのため、企業規模拡大に応じた内部管理体制の構築を図るために、
コーポレート・ガバナンスを重視し、リスクマネジメントの強化、
並びに金融商品取引法における内部統制報告制度の適用等も踏まえた
内部統制の継続的な改善及び強化を推進して参ります。
また、当社の事業に関連する法規制や社会的要請等の環境変化にも対応すべく、
内部管理体制の整備及び改善に努めて参ります。
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<事業等のリスク>
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●新規事業について
当社グループは事業規模の拡大及び収益基盤の強化のため、
今後も新サービスもしくは新規事業の展開に積極的に取り組んで参りますが、
これにより、人材採用やシステム開発等の追加的な投資が発生し、
安定的な収益を生み出すには時間を要することがあります。
また、新サービス、新規事業の展開が当初の計画通りに進まない場合には、
投資回収ができなくなる可能性や、
当社グループの事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
●経営陣への依存について
当社は、創業間もなく現時点においては、ノウハウが経営陣に集約されているため、
当社の代表取締役及び各取締役は、経営方針や事業戦略の策定をはじめとして、
当社グループの事業活動全般において極めて重要な役割を果たしております。
このため、当社グループでは当該役員らに過度に依存しないよう
組織的な経営体制の構築や人材育成を進めております。
しかしながら、当該役員らのキャリアプラン、健康状態、家庭事情
その他の何らかの理由により当該役員らが辞任しその代替を確保できない場合、
当社グループの事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
●人材の確保・定着及び育成について
当社グループは、競争力の向上及び今後の事業展開のため、
優秀な人材の確保・定着及び育成が重要であると考えております。
しかしながら、優秀な人材の確保・定着及び育成が計画通りに進まない場合や
優秀な人材の社外流出が生じた場合には、
競争力の低下や事業規模拡大の制約要因になる可能性があり、
当社グループの事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
●小規模組織であることについて
当社グループは平成28年6月30日現在、従業員80名と比較的小規模な組織であり、
業務執行体制もこれに応じたものになっております。
当社グループは、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、
これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しておりますが、
事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追い付かない場合には、
適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業活動並びに財政状態及び業績に
影響を与える可能性があります。
●社歴が浅いことについて
当社グループは平成21年6月に設立され、業歴が浅く成長途上にあります。
したがって、過去の財務情報だけでは今後の事業展開及び業績を予測する上で
十分な判断材料を提供しているとは言えない可能性があります。
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上記の記載から読み取れることは、
・海外展開も含め、グループ規模拡大フェーズである
・業容拡大等に伴い人材確保・教育が大きな課題である
・グループとしての内部管理体制の強化が必要である
・新規事業投資に対するリスク管理をしていくことが重要である
・一部の経営陣にノウハウ等の依存度が高い
といった感じでしょうか。
これからの成長に向けて、
事業や人材に投資をしていくフェーズであることから、
おそらくM&Aや人材獲得・教育といった点が、
グループ全体として大きなテーマになるはずです。
今回のホールディングス化の目的にも
①グループ経営戦略機能の強化
②各事業会社の自律的経営による効率経営の実現
③経営者人材の育成
という3つの大きな目的が掲げられていました。
小規模組織の良いところも残しつつ、
特定個人に依存しすぎない組織的な経営体制を構築していこう、
という意志の表れとして、まずは、
ホールディングス体制を構築してインフラ整備をしておく
ということなのだと思います。
同社の場合は上場会社なので、
小規模組織とまでは言えないと思いますが、
同社規模の中小規模会社がホールディングス化していく流れは、
今後も強まるような気がします。