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Vol.147 「逃げ」のグループ経営

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グループ経営の領域だと
子会社設立や他社株式取得といった、
会社を「増やす」方向の話が、
どうしても多いものです。

ただ、「増やす」だけでなく、
「減らす」という決断も
避けて通れないのも現実です。

そのなかには、
良い意味での「減らす」決断もありますし、
一方で、後ろ向きな「減らす」決断(≒撤退等)もあります。

個人的には、
いろいろな「減らす」決断の背景から
学べることがあるのではないか、
という思いから、毎週定期的に、
今週の『減らす』決断
という記事をまとめています。

Vol.147(1)

いずれにしても、
長く経営を行っていくうえでは、
「減らす」こと自体は避けて通れませんし、
「減らす=悪」というわけではありません。

仮に「後ろ向きな撤退」であっても、
そこから学ぶものがあり、
次の経営判断に生かせるのであれば、
意味のある「投資⇒撤退」なのだと思います。

 

ただ残念なことに、
「投資⇒撤退」から「学び」を得ている
グループ経営の事例ばかりではありません。

たとえば、
「子会社を作っては潰す」
という決断を繰り返しているケース
多いように感じています。

「子会社投資⇒撤退」の繰り返しが、
半ば「企業文化」のようになっている会社です。

同じような「子会社投資⇒撤退」の繰り返しが続き、
そこから「学び」を得て、
次の投資に生かせていない状況が、
残念だということです。

Vol.28(1)

私なりに、
そのような残念なグループ経営
行っている会社の特徴を考えてみたときに、
なんとなくではありますが、
ある「共通点」が思い浮かびます。

その「共通点」とは、

————————————————
もともとの「本業」から逃げるために
子会社投資をしている
————————————————

というケースです。

 

確かに事業環境の変化が激しい
今の時代において、
過去の延長線上の本業を
続けていける場合ばかりではありません。

富士フィルムのように
本業を変えながら生き残り、
成長していっている会社もあります。

環境の変化に適応することは
永続企業の必須条件です。

 

ただ、
「事業環境の変化に適応すること」と
「本業から逃げること」とは、
少し意味合いが違うように思います。

本業を変えると言っても、
所詮「餅は餅屋」です。

本業を変えるにあたっても
これまでの本業で培ってきた「強み」を生かすことが
大前提と言ってよいでしょう。

ただ単に
「あの事業は儲かりそうだから」
「本業が厳しいから、何か新しいことを」
といった発想で
新たな本業を作ろうとしても
極めて成功確率は低いと思います。

Vol.20(3)

どの会社においても、
本業に危機感を抱くことは当然です。

ただ、だからと言って、
これまで築いてきた「強み」を
活用しない多角化は、
あまりにも「もったいない」と思います。

 

そのため、
グループ経営のなかで、
本業を変えていきたい場合であっても、

—————————————————
あえて「本業の『強み』の延長線上」で
子会社投資をしていただきたい
—————————————————

と思っています。

その方が、
グループ内シナジー
生まれやすいです。

また、何より
社員の心が離れていかない、
と思います。

 

本業をそっちのけで、
新規事業や、
全く関連性のない子会社投資を
繰り返す会社は、
必ず社員の心が離れていきます。

そして、そのような状態が続くと、
優秀な人材の退職が増えたり、
残っている社員のモチベーションも
極端に低くなっていきます。

このような状況は、
私の過去の経験値からしても、
かなりの確率で断言できます。

Vol.33(1)

企業の根幹である「人材」の
流出やモチベーション低下は、
経営にとって致命傷になるため、
このような事態だけは
なんとか避けていただきたい、
と思っています。

 

もし、現時点やこれからにおいて、
本業の延長線上とは言いづらい事業領域へ
進出する決断をする場合には、
経営者として自問自答していただきたいことがあります。

————————————————
本業でやり残したことはないか?
本業でやれることはやりきったのか?
————————————————

この問いを言い換えると、
「どれだけ小さなマーケットでも良いので、
本業でNo.1になったのか?」
と表現しても良いでしょう。

 

この問いに対する回答が、
万が一「No」であれば、
「逃げ」のグループ経営になっている
可能性があるので、要注意です。

経営者としては、
「逃げ」のグループ経営にならないように、
心掛けていただきたいと思います。

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