経営者が大好きな「グループシナジー」という言葉
連結グループ経営の現場では、
「グループシナジーを発揮しよう!」
というフレーズが多く聞かれます。
まさに経営者が大好きな言葉が
この「グループシナジー」という言葉です。
ただ、グループシナジーを発揮させて
グループの経営を上手く実践していくことは、
経営者として重要な業務ではありますが、
決して容易なことではありません。
グループシナジーについては、
過去に以下の記事でも少し触れていますので、
ご興味があれば、ご参考までに。
参考記事:Vol.194 なぜグループのシナジー効果が生まれないのか?
要は、
グループシナジーという抽象的な言葉だけでなく、
この効果をきちんと見える化して管理できる形にしたうえで、
実行していく仕組みのカタチまで構築しておかないと、
グループシナジー効果は期待できない、
ということです。
グループシナジーの反対にあるもの
今回は「グループシナジー」に関連して、
少し視点を変えたテーマで書いてみたいと思います。
「グループシナジーの反対は何でしょうか?」
グループシナジーという言葉や考え方は、
経営者が大好きなので、よく意識をしていると思います。
そこで今回は、少し視点を変えて、
グループシナジー効果とは反対にある考え方にも焦点を当てながら、
グループシナジーについて書いてみたいと思います。
あまり一般用語かわかりませんが、
シナジー効果の反対語として
アナジー効果という言葉あるようです。
この単語(アナジー効果)は
あまり耳にすることは少ないのではないでしょうか?
両者の言葉が対義語ということで、
「グループシナジー効果 ⇔ グループアナジー効果」
と表現できます。
別の表現に置き換えると、
「グループシナジー効果が強い状態:1+1>2」
「グループアナジー効果が強い状態:1+1<2」
と表現しても良いと思います。
ここから考えるに、
もし「1+1>2」にしたい(シナジー効果)のであれば、
できる限り「1+1<2」にする負の力(アナジー効果)を
減らしていく必要があるのだと思います。
なぜなら、
グループシナジーの効果が実は発揮されていたとしても、
グループアナジーの効果がそれ以上に強ければ、
結果的には「1+1<2」になり、
あたかもグループシナジー効果が
全く発揮されていないように見えてしまうからです。
ということで、
少し逆説的な表現になりますが、
—————————-
グループシナジーを発揮したければ、
グループアナジーも管理する必要がある
—————————-
のだと思います。
経営者はどうしても
「プラス」の側面の方が気になると思いますので、
シナジー効果の方を意識してしまうものです。
ただ、
プラスの効果であるシナジー効果と
マイナスの効果であるアナジー効果は
表裏一体のものと考えても良いと思いますので、
是非、「グループアナジー効果」の方も
意識的に抑制できるような管理をしていただきたい、
と思っています。
グループアナジー効果の具体例
冒頭に、
グループシナジー効果を発揮するためには、
この効果の内容ををきちんと見える化して
管理できる形にしたうえで、実行していく仕組みを作る必要がある、
と書かせていただきました。
おそらく、これと同じことが
グループアナジー効果についても言えるはずです。
つまり、
グループアナジー効果の内容を
きちんと見える化して、管理できる形にしたうえで、
このアナジー効果を抑制していける仕組みを作る必要がある、
ということです。
シナジー効果が発揮されるための管理と
アナジー効果が抑制されるための管理。
この両者を同時に進めていくことで、
結果的に、
「1+1>2」
となり、
「グループシナジーがある」
という状態になっていく、ということです。
それでは、「グループアナジー効果」とは、
具体的にはどのような例があるのでしょうか?
いろいろとあると思いますが、
少し例を考えてみました。
・子会社支援に労力がかかり、重要なことに割ける余力が減ってしまう
・子会社にお金を貸すことで、より投資効率の良いはずの事業へお金を使えなくなる
・グループ会社間の壁ができて、本業(親会社)の業績に悪影響を与える
・グループ全体を管理するための人材が増えて固定費が高くなる
・経営者の大事な時間がグループ全体のことに分散されてしまう
・グループ間取引が増え、逆に実態がわかりづらくなる
・個社最適な判断になりがちになる
・グループ全体で力(経営資源)が分散し、逆に効率の悪くなる
—————————————————-
少し抽象的な表現も多いですが、
このような形で、まずは具体的に
自社にとっての「グループアナジー効果」を見える化したうえで、
さらに定量化・測定可能化したりしながら、
グループアナジー効果を抑制していけると理想的です。
グループアナジー効果をどうやったら抑制できるか。
これを真剣に考えるのも経営者の重要な役割ということです。
まとめ
M&Aやグループ内組織再編、新規事業子会社の設立、
といった「攻めのグループ経営」をするときには、
「グループシナジー」と「グループアナジー」の
両側面を同じくらい重要な要素として検討する必要があります。
一見、グループシナジーがあるだろうということで
M&Aやグループ内組織再編を実施したとしても、
実はグループアナジー効果の方が大きかった、
ということはよくあることですので。
ということで、今回のまとめですが、
グループ経営のなかで「1+1>2」を実現するためには、
以下のステップで取り組む必要がある、
ということです。
STEP1:グループシナジー効果の管理
①グループシナジーを言語化する
②それぞれのグループシナジーを定量化する
③いつ、だれが、どうやって、実行するかを具体的にする
STEP2:グループアナジー効果の管理
①グループアナジーを言語化する
②それぞれのグループアナジーを定量化する
③いつ、だれが、どうやって、対策するかを具体的にする
STEP3:両者のバランスを見ながら具体的に管理
結果として、
「グループシナジー効果>グループアナジー効果」
であることを定量的に管理する。(継続管理)
シナジー効果とアナジー効果の
相対的な力関係・バランスによって、
結果として「グループシナジー」があったかどうかが判断される、
ということなのだと思います。
少し理屈っぽくなりましたが、
どちらの管理も同じくらい重要だというまとめでした。