※平成29年5月15日に株式会社関門海より適時開示されている「会社分割(簡易分割・略式分割)による持株会社体制への移行に関する検討開始のお知らせ」をもとに情報を整理しています。
内容
持株会社体制への移行の検討開始
開示概要
●平成29年5月15日開催の取締役会において、
平成29年10月1日を目途に会社分割(簡易分割・略式分割)の方式により
持株会社体制へ移行することの検討を開始することを決議。
持株会社体制移行の目的
●「食で明るい未来実現に貢献する」という企業理念に基づき、
主力事業であるとらふぐ料理専門店「玄品ふぐ」を中心に事業展開している。
●長期的な経営方針において「人が資本の関門海」をスローガンに掲げ、
継続的に繁栄するビジョナリーカンパニーとして、
全てのクラスにおいて人財が育ち、社長・副社長候補、マネジャー候補が
多数存在する企業を目指している。
●そのためには、経営感覚を持ちあわせた
将来の幹部候補となる人財を早期に多数育成することが不可欠であり、
①全社的な経営戦略と飲食及びFC運営事業を分離
②大幅な権限移譲を図る
ことにより、
③意思決定の迅速化
④機動的な運営体制を構築する
ことの必要性があると考え、
会社分割による子会社の設立並びに持株会社体制への移行を
検討することを決定した。
会社分割の方法
平成29年10月1日(予定)に、同社を分割会社としたうえで、
あらかじめ飲食事業及びFC事業を承継する目的で設立予定の子会社3社に
簡易吸収分割する予定。
移行日程
①体制移行方針決定取締役会:平成29年5月15日
②分割準備会社の設立:平成29年7月上旬(予定)
③分割契約承認取締役会:平成29年7月中旬(予定)
④分割契約締結:平成29年7月中旬(予定)
⑤会社分割の実施:平成29年10月1日(予定)
Review
今回は「関門海」の事例です。
同社の規模感ですが、
売上規模として50億円程度、
利益規模(営業利益)として2億円程度、
といった感じの会社です。
上場会社ではありますが、
少し大きめの中小企業といった感じの規模感とも言えますので、
非上場の中小企業にも参考になるかもしれません。
事業内容としては、飲食業形態で、
複数店舗(100店舗くらい)を経営している会社です。
このような同社ですが、
興味深いトピックとしては、
1年前くらいに子会社であった2社を会社清算し、
グループ経営をいったん止め、単一会社となっていた点です。
この流れから考えると、
今後は組織をスリムにして単一会社として
事業を進めていくように思えましたが、
今回、ホールディングス化して、
新たに子会社3社を設立するカタチの
グループ経営に再チャレンジする方針とのことです。
つまり、
「グループ経営 ⇒ 単一会社 ⇒ グループ経営」
といった感じで、
短期間で組織形態を変えています。
おそらくですが、
以前のグループ経営での反省を生かし、
再度、事業展開を考えた結果、
・単一会社では限界がある
↓
・但し、単なるグループ経営でもしっくりこない(⇒過去の反省)
↓
・理想的なカタチはホールディングス型のグループ経営である
といった判断プロセスがあったのかもしれません。
今回の開示の中には、
————————————–
継続的に繁栄するビジョナリーカンパニーとして、
全てのクラスにおいて人財が育ち、社長・副社長候補、マネジャー候補が
多数存在する企業を目指している
————————————–
という表現がありました。
そして、これを実現するための手段として、
———————————————
①全社的な経営戦略と飲食及びFC運営事業を分離
②大幅な権限移譲を図る
———————————————
ということが必要だと判断し、
それに最適な組織デザインが、
ホールディングス経営だったということだと思います。
ちなみに、上記の①②のことは、
当然、単一会社であってもできるはずですが、
やはり同じ1つの会社という環境の中では、
なかなか「変化」を生み出すことが難しいものです。
そこで、
まずは「カタチを理想形にする」ことから始めよう、
ということなのだと思われます。
同社の場合は、
まずは「インフラを変える」ことから始めて、
そのうえで、同社の長期的な経営方針である
「人が資本の関門海」
を実現するための重要なソフト(人財)の育てていく、
という流れです。
過去にグループ経営をしていて、
その後一度単一会社に戻った会社の経営判断として、
ホールディングス形態を選択されていることを考えると、
ホールディングス型のグループ経営は
多くの経営者の理想形の1つと言っても良いような気もします。
ホールディングス経営というと
どうしても「大企業のカタチ」というイメージが
まだまだ強いかもしれません。
但し、
小さな会社や中小企業であっても、
会社内の組織変更の選択肢の1つとして、
自然とホールディングス型経営にたどり着くといった流れも
最近は非常に多い気がします。
経営者であれば、
理想的な組織形態や人事制度は、
常に模索し続けるものだと思いますが、
その過程で一度は「ホールディングス型」のカタチを
検討することがあるのではないかと思います。
この思考プロセスに
企業の大小は関係ない気がしています。
「ホールディングス経営がベストかも」
このように感じられたときは、
是非チャレンジしてみるのも悪くない気がします。
理想的な組織デザインは変わり続けるものなので、
また元のカタチに戻しても良いわけですし。