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Vol.194 なぜグループのシナジー効果が生まれないのか?

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連結グループ経営 vs 複数会社経営

 

連結グループ経営は、

「1+12」

複数会社経営は、

「1+12」

 

今回のテーマは「グループシナジー」についてです。

この言葉はよく使われますが、
かなりあいまいに使われているような気がします。

 

あいまいな状況では、
「グループシナジー」を発揮することは難しいと思いますので、
今回は改めて「グループシナジー」について
簡単に整理をしてみたいと思います。

 

グループシナジーとは?

話を単純にするため、
グループ会社が2社のみのケースをもとに
考えてみたいと思います。スライド2

そして、この2社について、

—————————————————
「1+1>2」となるケース⇒「グループシナジー」がある状態
「1+1<2」となるケース⇒「グループシナジー」が無い状態
—————————————————

の2つのケースを以下で整理をしていってみたいと思います。

 

ちなみに、私なりの表現ですと、

—————————————————
連結グループ経営 ⇒ 1+12 ⇒ グループシナジーあり
複数会社経営 ⇒ 1+12 ⇒ グループシナジー無し
—————————————————

となります。

 

まず、
「1+1>2」の連結グループ経営の方からですが、
以下のような感じです。
スライド3
売上高という視点で考えると、
グループシナジーが働くことで、
2社の売上の単純合算にプラスアルファが加わります。

 

一方で、ただの複数会社経営の場合は以下のようなイメージです。
スライド4
この状態だと、
とりあえず「1+1=2」の状態です。
(グループシナジーは見られません)

 

もう少し続けてみていきたいと思いますが、
次は費用面のグループシナジー」についてです。

 

「1+1>2」を目指す連結グループ経営の場合、
どのようなイメージになるかというと、こんな感じでしょうか。
スライド5
費用面においては、
両社で重複している業務を一体化したり、
模の経済が働いてコスト削減につながったりすることで、
2社の費用の単純合算より少なくなります。

これが費用面でのグループシナジーになります。

 

一方で、ただの複数会社経営の場合についての
費用面はどうなるのでしょうか?
スライド6
おそらく、こんな感じです。

 

私の経験上、ただの複数会社経営の場合には、
費用面においても、2社の単純合算でおさまるというよりは、
いろいろな調整コストやムダが逆に生じて、
2社の単純合算より増えてしまう傾向があると感じています。

費用面を数字で表すと
「△1+△1>△2」
といった感じでしょうか。

 

ということで、
ただの複数会社経営の場合には、
売上の方は「1+1=2」となる一方で、
費用面が「△1+△1>△2」となることで、
利益面で考えると「1+1<2」になってしまうということです。

 

このように、ひと言で「グループシナジー」と言っても、
いろいろな視点があるということを押さえておく必要があります。

 

グループシナジーはなぜ発揮されないのか?

複数の会社を経営するのであれば、
やはり「グループシナジー」がある状態を
目指したいところです。

つまり、
ただの「複数会社経営」にとどまらず、
グループシナジーが発揮される「連結グループ経営」を目指し、
「1+1>2」を実現できる経営です。

 

ただ、多くの会社において、
「グループでシナジーを発揮しよう!」
という思いが、結果に表れず、
掛け声倒れになってしまうのはなぜなのでしょうか?

 

その理由は、

——————————–
「グループシナジー」というものが
抽象的な状態で放置されているから
——————————–

だと考えています。

 

そのため、経営者としては、
「グループシナジー」を抽象的な状態に留めずに、
きちんと具体的に議論をしていくことが
やはり必要なのだと思います。

 

そう考えると、
まず「グループシナジー」の定義を明確にするため、
どのような要素から構成されているかを見える化しておくことが必要です。

たとえば「売上高のグループシナジー」を考えてみる場合には
こんな感じでしょうか?
スライド8

いろいろな分解の仕方はあると思いますので、
まずは「自社にとってのシナジーとは?」
具体的に考えてみることだと思います。

 

そして次に、より具体的にする必要があるため、
測定できるようにしていきます。

たとえば、以下のような感じで、
「どのようなシナジー効果で何がいくら増えるのか?」
をより具体化しておくイメージです。
スライド10
ここまで分解・定量化していくことで、
「グループシナジー発揮に向けての行動」
をようやく管理することができるようになり、
その結果として「達成」が見えてきます。

スライド12

ただ、当然ではありますが、
この「グループシナジー発揮に向けての行動」を
・いつ
・誰が
・どのように
管理していくのか、といったことを、
きちんと事前に決めてフォローをしていかなければ、
グループシナジーの「達成」は難しくなると思います。

 

要するに、

—————————-
1つの会社のなかでは普通に行われているような
予算による数値管理や行動管理といった行為が、
グループ経営という視点に変わった途端に放置されてしまう
—————————-

ということが、
多くの会社で起きているのではないかと思います。

 

これこそが「グループシナジー」が達成されない
大きな理由なのだと感じています。

 

ただの複数会社経営ではなく、
「1+1>2」となるような連結グループ経営を目指すためには、
このような「グループ視点の経営」という業務も
1つの仕事として実施していく必要があるということです。

 

事例

この「グループシナジー」管理の視点で、
個人的に興味深かった事例を1つ挙げさせていただきます。

ゼビオ社の事例です。

 

詳細は以下の記事をご参照くださいませ。
【事例】株式会社ゼビオ①
【事例】株式会社ゼビオ②

 

同社では、ホールディングス化するにあたって、
グループシナジーが発揮されているかどうかをチェックする機能を
グループ組織の中に設けています。

つまり、

————————————-
グループシナジーを達成するための「仕組み」を
グループ組織の中の機能としてきちんと設けている
————————————-

ということです。

 

同社の取組み結果がどのように出るかわかりませんが、
このような意志のこもったグループ組織デザインこそ
「連結グループ経営」においては、
重要な要素だと考えています。

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