※平成29年3月9日に株式会社ダイヤモンドダイニングより適時開示されている「会社分割による持株会社体制への移行及び子会社(分割準備会社)の設立に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。
内容
持株会社体制への移行
開示概要
●平成29年3月9日開催の取締役会において、
平成29年9月1日(予定)を効力発生日として
会社分割(吸収分割)の方法により持株会社体制へ移行すること、
及び平成29年3月下旬(予定)に
100%出資子会社(分割準備会社)を設立することを決議した。
●移行については、
平成29年5月下旬に開催予定の定時株主総会決議による承認、
及び必要に応じ所管官公庁の許認可が得られることを条件に実施する。
持株会社体制移行の背景・目的
●16社からなるグループは、
『GIVE“FUN & IMPACT”TO THE WORLD.』を企業理念とし、
食材・手作り・コンセプト・内装・エンターテインメント等に
『熱狂』的にこだわったサービス提供を通じ、
全てのお客様の満足の先にある「ワクワク・ド キドキ」する感動や歓喜を
さらに『熱狂』へ促すお店作りを追求している。
●平成7年6月の創業以降、現在は飲食事業を中心に、
グループビジョンである『世界一のエンターテインメント企業グループ』の実現に向け、
アミューズメント事業、ウェディング事業へも事業領域を拡大し、
平成29年2月末現在、国内外合わせて273店舗(ゼットングループ含め 343 店舗)を
直営展開している。
●このような状況の中、持株会社体制に移行することにより、主に
①各事業及び本社機能における人材及び資金等の経営資源配分の最適化
②M&Aを活用した業容拡大を目的とする機動的な組織体制構築の推進
③各事業における収益性及び経営責任を明確化し、経営人材の育成を図る
といったことにより、グループ経営体制を強化し、
グループ競争力を高め、さらなる企業価値向上を目指す。
持株会社体制への移行方法
同社を分割会社とする会社分割により、
分割する事業を100%出資する子会社(分割準備会社) に承継させる予定。
持株会社体制への移行スケジュール(予定)
①平成29年3月9日:持株会社化及び分割準備会社設立に関する取締役会決議
②平成29年3月下旬(予定):分割準備会社の設立
③平成29年4月中旬(予定):吸収分割契約取締役会決議
④平成29年4月中旬(予定):吸収分割契約締結
⑤平成29年5月下旬(予定):定時株主総会において持株会社化への承認
⑥平成29年9月1日(予定):持株会社体制への移行
Review
今回は「ダイヤモンドダイニング」の事例です
同社は、主に、
飲食事業、アミューズメント事業をメインとする会社で、
店舗数やブランド数も多く、全国展開しています。
同社の今回のホールディングス化の目的として、
———————————————–
①各事業及び本社機能における人材及び資金等の経営資源配分の最適化
②M&Aを活用した業容拡大を目的とする機動的な組織体制構築の推進
③各事業における収益性及び経営責任を明確化し、経営人材の育成を図る
———————————————–
の3つがあげられていました。
多店舗展開、マルチブランド展開の会社が、
ホールディングス化する事例は多いですし、
上記の3つの目的も納得ができるものです。
一応、同社の有価証券報告書(平成28年2月期)で状況を確認してみますと、
「対処すべき課題」として、以下の3つがあげられていました。
——————————————
(1)既存事業の高収益体質化による財務体質強化及び株主様に対する利益還元強化について
当社グループの今後の成長・事業拡大、財務体質強化及び株主様に対する
利益還元の強化には、既存事業の高収益体質化による
キャッシュ・フローの増大が不可欠であると考えております。
既存事業の高収益体質化を実現するため、平成29年2月期においては
当期に引き続き、集約した高収益ブランドの新規出店及び更なるブラッシュアップによる
ブランド価値向上、新ブランドの開発及び同ブランドの新規出店による
ブランドポートフォリオの拡充、店舗オペレーション力強化によるお客様満足度向上、
マーケティング強化による集客力向上とリピート率の引き上げ、センター物流の更なる強化等、
仕組み活用及び本部業務効率化によるコスト削減に積極的に取り組んでまいります。
また、財務体質強化及び株主様への利益還元強化につきましては、
上述のとおり既存事業から生まれるキャッシュ・フローを増大させつつ、
現金及び預金3,995,541千円(平成28年2月29日現在)の
有効的・戦略的活用により、増配等の株主還元策を順次検討・実施してまいります。
(2)グループシナジーの最大化及びグループ経営力の向上・効率化について
当社グループは、当社グループが運営する店舗間において最大限のシナジー効果を発揮させるため、
お客様を当社グループの店舗間で回遊いただき、
グループ全体のリピーターとして定着いただくことが重要であると考えております。
また、お客様満足度向上及び店舗利用における利便性の更なる強化に向け、
予約コールセンター機能の拡充、オンライン予約システムの認知度向上、
「DDマイル会員」の更なる増加により、グループ全体でのお客様回遊促進、
リピート率向上を中心に取り組むことで、グループシナジーの最大化を図ってまいります。
また、当社グループは間接部門である本部機能をグループ内で共通化することにより、
間接コストの低減を図っております。
今後も間接コスト低減に努力する一方、店舗支援機能の強化にも積極的に取り組み、
グループ経営力の向上・効率化を図ってまいります。
(3)人材の確保・育成等について
当社グループの今後の成長・事業拡大には、
正社員だけでなくパートナー(アルバイト)を含めた人材の確保、
人材の育成が必要不可欠であります。
現在、当社グループでは正社員に比べ流動性の高いパートナーに対し、
グループ統一教育プロジェクトとして「Smile-Project」を実施しております。
同プロジェクトをはじめとしたパートナーに対する教育システムを確立させることにより、
更なるパートナーの能力向上による店舗オペレーション力向上は勿論のこと、
大幅な早期退職削減を実現させ、長く働ける店舗環境作りを進めていく方針であります。
また、当社グループの将来ビジョンを共有している正社員に対しては、
QSCに対する意識向上といった店舗回りの人材教育だけでなく、
経営者視点を持ちながらブランドマネジメント可能な人材へと育成することが急務であります。
当社グループでは経営者視点を持つ正社員を育てていく為に、「理念浸透」を重要課題としており、
年に2回開催される社員総会(当社グループ全社員が集う集会)や
社内報の制作及び配布等の施策によりロイヤリティの高い正社員を増やしていく方針であります。
正社員の人材の確保については、即戦力となる中途採用に加え、
将来経営幹部候補となる新卒採用を積極的に強化していく方針であります。
(※以上、平成28年2月期有価証券報告書より抜粋)
——————————————
上記の「対処すべき課題」に取り組むプロセスにおいて、
今回のホールディングス体制移行の決断は
必然的な流れのように感じました。
また、同社の最近のトピックとしては、
上場会社である「株式会社ゼットン」の株式を取得して
グループ会社化(持分法適用会社)したことでしょう。
将来的には、子会社化も視野に入れているとのことです。
同業と言ってもよいダイニングテーブル社とゼットン社が
グループ会社になることで、
いろいろな面でグループシナジー効果が期待されます。
同社から2017年1月13日に公表されている
「当社による㈱ゼットン持分法適用関連会社化について」資料によると、
シナジー効果としては、
—————————————
<スケールメリット享受>
・購買、物流、人材採用、販促
<経営資源拡充・補完・共有>
・【拡充】 ブランド、ドミナント
・【補完】 エリア、季節変動
・【共有】 ノウハウ、人材、集客インフラ、物件情報
<効率化>
・システムインフラ、本社組織
—————————————
といった点があげられています。
このようなシナジー効果が発揮されるように
グループ経営管理をきちんと実施していくうえでも、
また、異なる企業文化がグループに増えていくという意味でも、
ホールディングス体制が理想的なカタチと判断されたのだと思います。
<参考>
Vol.177 グループシナジーが発揮される形になっていますか?
Vol.194 なぜグループのシナジー効果が生まれないのか?
M&Aによるグループ規模拡大は、
一歩間違うと、グループの一体感がなくなったり、
各社の動きがバラバラになったりと、逆効果になる可能性もあるため、
きちんと「グループ経営」を専門的に行うことが必要です。
最近は、買収による「のれん」金額も
一段と多額になりがちな傾向にありますし、
想定した通りにシナジー効果が発揮されなければ、
投資回収という意味でも、厳しい状況に追い込まれます。
同社のように、
今後もM&Aによる規模拡大等が見込まれるような会社では、
グループ経営の1つの有力な選択肢として、
ホールディングス体制が選ばれていくケースが増えていくのではないでしょうか。