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【研究】判例をもとに経営指導料の妥当性を確認(2/2)

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結論

前回の続きです。

最初に結論からですが、
勝ったのは(最終的に認められた主張は)、
会社側の主張でした。

 

今回の結論の背景には、
どのような点があったのでしょうか?

私も、ピンポイントでこの判例内容を見ているので、
細かい裁判の流れは把握しきれていませんが、
私が確認する限り以下のことが書かれていました。

 

結論を導き出した大前提①

まずは、
裁判所がこの結論を導き出すにあたって、
大前提の考え方を示しています。

この内容は、
いろいろなところで参考になると思いますので、
下記に転載(一部加工)させていただきます。

——————————————————————
提供される役務が
①市場性を有さず客観的な価格が形成されていない場合
②様々な内容を含むため個々具体的な役務の提供に係る対価を個別に観念し難い場合
においては、
役務提供者において当該役務を提供するのに必要な費用の額(提供原価)をもって、
当該役務の価値を判断する基礎とすることは合理的な方法ということができるが、
提供者における利益ないし報酬の部分も
役務提供の対価として含まれてしかるべきことからすると、
提供される役務の価値が、
提供原価に尽きるものではないことは明らかである。
——————————————————————

 

ここまでのパートでは、
グループ内の役務提供において、
その役務提供の原価にきちんとした「利益」が上乗せされた
取引価格設定をすることは合理的である、
という点が主張されています。

当然と言えば当然の内容ですが、
経営指導料をはじめ、グループ内取引価格を決定する際に、
参考にできる主張ですね。

 

結論を導き出した大前提②

続けていきます。

———————————————————-
とくに、当該役務の提供が提供者の主たる活動になっている場合、
提供した役務の価値が提供原価を大幅に上回る場合などにおいては、
利益ないし報酬部分を加算しないことは不合理というべきである。

そして、独立企業間で役務の提供に対する
利益ないし報酬部分をどのように定めるかは、
私的自治の原則により基本的には当該企業が契約により
自由に定めるところにゆだねられているものというべきである。
———————————————————-

 

このパートでは、
グループ内の役務提供において、
その提供価値に応じて付加する利益は増減させるべきであること、
また、そのような金額の取り決めは、
グループ会社同士であってもそれぞれ独立した企業なので、
自由に決めることができるはず、
ということが主張されています。

ここまでのところを考慮すると、
グループ内取引だからといっても、
合理性があれば、堂々と価格設定をしてよい気がしてきます。

 

結論を導き出した大前提③

さらに続きを見ていきます。

————————————————-
提供される役務に対して支払われる対価の額が、
役務提供者における提供原価を超えているからといって、
当該超える部分が直ちに寄付金に該当すると速断することはできず、
この超える部分が寄付金に該当するかどうかは、

①契約当事者である企業間の関係
②当該役務提供契約において定められている役務の内容
対価の決定方法の合理性
実際の役務提供内容
⑤提供される役務の被提供者における便益の大きさ
役務と便益との関係直接性
提供者において当該役務の提供がその業務に占めている地位

といった点に照らして、
役務の提供の対価が独立企業間において行われる
同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離していて、
企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と
認めるべきものかどうかによって判断すべきものと解される
————————————————-

 

このパートでは、
グループ内取引の価格設定において
具体的に考慮すべき点の例示が挙げられています。

あくまで例示ではありますが、
きちんと合理性について理論武装する際には、
役に立つ例示になるのではないでしょうか。

 

今回の案件への当てはめ

上記の大前提の考え方をもとに今回の案件に当てはめた結果、
会社側の主張の方が妥当という結論とされています。

内容を1つ1つ書いていると長くなってしまいますし、
逆にぼやけてしまうと思いますので、
私なりにポイントをまとめてみますと、
以下のような点でしょうか。

①実際に子会社が親会社機能にかなり依存している事実があったこと
②外部会社との契約と比較しても租税回避的な内容と言えなかったこと
③親会社の経営指導業務はグループとして重要な位置づけにあり、代替不可のものであったこと
④国税側が主張する「あるべき経営指導料の金額(=提供原価のみ)」は非合理的であること
 利益要素もきちんと加味すべき

 

もともと
Vol.215 グループ内取引の経済合理性とは?
という記事から派生して、
今回の判例のご紹介という流れになっていました。

判例を持ち出すことで
逆に話が脱線していった感もありますが、
お伝えしたかったことは、

————————————-
グループ内取引の経済合理性は
堂々と主張するとともに、
きちんと実態と形式の両方を備えておきましょう
————————————-

ということでした。

そして、その際に、
今回の判例が少しでも参考になれば、
という思いでした。

 

★★★★★★★
経済合理性は
見える化されていますか?
★★★★★★★

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