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Vol.216 グループ経営のなかでシェアードサービス機能はどこにデザインするべき?

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うどん

私事ではありますが、
週末農業を始めてもうすぐ2年が経ちます。
4歳になった娘と2人で農園に行くのですが、
最近は娘も少し戦力になってくれるようになりました。

だいたい午前中に農作業を終え、
お昼ご飯は「うどん」を食べに行きます。
娘が食べたいというので。

 

先週も午前中に農作業を終え、
いつものうどん屋さんに行きお昼ご飯を食べていたのですが、
お客さんの1人がうどんをひっくり返してしまい、
辺り一面が、うどんとおつゆだらけになってしまっていました。

店員さんは、そのお客さんに
「大丈夫ですよ、代わりのうどんを用意してきますね」
と言って、代わりのうどんを用意してきて、
テーブルやいす、床といった辺り一面の掃除を始めました。

そのお店は働いている店員さんのほとんどが外国人のような印象で、
店内オペレーションもかなりてんてこ舞いな時間帯のようにも見えましたが、
嫌な顔もせずに対応していた店員さんの姿勢を見ながら、
「良い接客姿勢だなぁ」
と改めて感心してしまいました。

 

ということで、雑談が長くなりましたが、
今回は、娘と毎週通っている「丸亀製麺」を運営しているトリドール社が
最近「シェアードサービス」について開示をしていたので、
シェアードサービス機能とグループ組織デザインについて書いてみたいと思います。

 

シェアードサービス子会社

平成29年5月31日付で同社から、
「会社分割(簡易新設分割)によるシェアードサービス業務の分社化に関するお知らせ」
という開示が公表されていました。

 

以前、同社がホールディングス化する際に、
以下の記事を書いたことがあります。

【事例】株式会社トリドール

当時の開示はホールディングス化することについての内容でした。

 

一方で今回の開示では、
「シェアードサービス子会社を設立する」
ということがメインの開示になっています。

ホールディングス化したのが1年前くらいですが、
より効率的かつ効果的なグループ組織デザインに
変更していくということなのだと思います。

 

今回の開示の中では、以下のような内容が記載されています。

————————————————-
●主力の丸亀製麺業態を牽引役に継続的な成長を実現するとともに、
新業態の開発や海外展開を積極化するなど、果敢な挑戦を継続し、
複数の成長軸を持つグローバル企業へと成長していきたいと考えている。

●グループがお客様のよろこびを最大化するためには、
間接部門業務の柔軟性・安定性・機動性を高め、
より一層の経営の効率化と企業体質の強化を図り、
市場環境の変化に柔軟に対応出来る体制を構築することが必要であると考え、
間接部門シェアードサービス新会社として分社化することを決定した。
————————————————-

 

シェアードサービス機能は別会社化すべき?

参考までに、ここ最近の同社の
グループ会社の異動状況を確認してみると、

——————————————————-
2016年3月期:子会社19社、関連会社等25社
2017年3月期:子会社31社、関連会社等32社
——————————————————-

となっており、グループ会社数がかなり増加しています。

 

また、2017年3月期の第三四半期決算の発表日を
延期していましたが、その理由としては、
「関係会社の増加に伴い、連結業績値の確定に時間を要する」
とコメントがありましたが、
ホールディングス化というタイミングとも重なっていますし、
同社グループのこの1年のグループ内の管理体制は、
結構大変な状況になっていたのではないかと推察されます。

 

このような状況を経て、
グループ内の間接部門の機能をシェアードサービス化して、
別会社として位置付けるという判断になったということです。

 

グループ経営において、
グループ各社で必要とされている機能を共有することで
効率性を上げていくというシェアードサービス機能の強化は、
必然の流れといえます。

ただ、
実際にシェアードサービス機能を実現させるのは、
結構ハードルが高いものです。

グループ各社の業態が近かったり、
新規で設立した子会社ばかりであれば、
まだ取り組みやすいとも言えますが、
事業多角化していたり、M&Aで他社を子会社化していたり、
さらには海外子会社が存在したりすると、
シェアードサービス化するのはかなり大変なプロセスとなります。

 

そのようななかで、同社の場合には、
シェアードサービス専門の子会社を設立する、
という判断をされていますが、同社のように、
シェアードサービス機能は別会社化して、
機能をさせた方がよいのでしょうか?

 

グループ組織デザインとシェアードサービス

シェアードサービス機能をデザインする場合に、

———————————————-
①ホールディングカンパニー内にシェアードサービス機能をデザインする
②シェアードサービス機能を専門にする別子会社をデザインする
———————————————-

という2つに大きく分けられます。

 

一般的な統計があるわけではないのですが、
いろいろな会社の事例や情報を確認すると、
シェアードサービス機能は別会社化して、
1つの子会社として運営している会社が多いような印象です。

とくに、今回のトリドール社のように
グループ組織をホールディングス化した当初は、
間接部門をホールディングカンパニーが有したうえで
シェアードサービス機能も上手く反映させようとした結果、
最終的にはシェアードサービス機能を別会社化する、
という例がそれなりにあるように感じています。

 

それでは、上記①②のどちらの方が
より効果が高まるのでしょうか??

 

個人的な理想としては
①のデザインの方だと以前は思っていました。
ホールディングカンパニーがシェアードサービス機能も有して、
グループ全体をコントロールするカタチです。

ただ、実際にシェアードサービスを機能させていくという「効果」を考えると、
最近は②のデザインの方が効果的なのではないかと思うようになってきました。

 

というのも、
ホールディングカンパニー内にシェアードサービスを設けると、
シェアードサービス化への取り組みが、
その他のホールディングカンパニーの重要業務のなかに紛れてしまい、
うまく進捗していかないことがあるからです。

 

このような状況を前に進めていくためには、
シェアードサービス機能に特化した別会社を作ることで、

—————————————
・シェアードサービス人材がより集約され意識が統一される
・シェアードサービス化への「逃げ道」がなくなる
・シェアードサービスの効果/採算が法人損益という形で明確になる
—————————————

といった効果を期待する方が
最終的にはシェアードサービス化の効果が高まると思うようになりました。

 

いずれにしても・・・

但し、シェアードサービス機能を
グループ内のどこに配置するかは正解があるわけでもありませんし、
グループ組織デザインがすべてを決めるわけでもありません。

 

シェアードサービスを機能させるためには、
やはりグループ内のお互いの業務を理解することが、
一番重要だと思っています。

そう考えると、

——————————–
・グループ内人材交流/業務交換
・グループ内人材の相互異動
——————————–

はとても重要な手段であり
経営者としても重要な経営判断と言ってもよいでしょう。

 

理屈だけでシェアードサービスの必要性を唱えても、
日常業務に追われている現場は上手く動いていきません。

実際に相手側の業務をやってみることで、
相手側の問題点を一番把握できますし、
相手側の大変さや思いも理解ができますので、
シェアードサービス化への取り組みが前に進んでいきます。

 

そのため、
現場にとって重要な「今の仕事」である日常業務に配慮してあげつつ、
このようなシェアードサービスに必要な環境をどのように作っていけるかが、
経営者としてはとても重要な仕事であり、
それを実現しやすいグループ組織デザインを考えていくということが、
今回のテーマの本質なのではないかと感じます。

 

★★★★★★★
シェアードサービス機能と
グループ組織デザイン
★★★★★★★

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