※平成28年3月15日に株式会社トリドールより適時開示されている「会社分割(簡易分割・略式分割)による持株会社体制への移行に伴う子会社(分割準備会社)の設立に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。
内容
持株会社体制への移行
開示概要
●平成28年3月15日開催の取締役会において、
会社分割の方式により持株会社体制へ移行するため、
分割準備会社として株式会社トリドール分割準備会社を設立することを決議。
持株会社化の目的
●グループは
『すべては、お客様のよろこびのために。』を経営理念に掲げ、
「できたて、本物 のおいしさを、すべてのお客様へ」の思いを原点に、
それぞれの地域で一番店を目指し、邁進してきた。
●今後も国内基盤をさらに強固なものとすべく、
主力の丸亀製麺業態を牽引役に、
継続的な成長を実現するとともに、
新業態の開発や海外展開を積極化するなど、
果敢な挑戦を継続し、
複数の成長軸を持つグローバル企業へと成長していきたいと考えている。
●グループがお客様のよろこびを最大化するためには、
より一層の経営の効率化を図り、
市場環境の変化に柔軟に対応出来る体制づくりが必要であると考え、
持株会社体制へ移行することを決定。
持株会社体制への移行方法
●吸収分割の効力発生日から事業を開始するため、
同社が100%出資する本分割準備会社を設立した上で、
同社を分割会社とし、
本分割準備会社に事業を承継する簡易分割を行う予定。
持株会社体制への移行スケジュール
①分割準備会社の設立:平成28年3月下旬(予定)
②分割契約承認取締役会:平成28年4月中旬(予定)
③分割契約締結:平成28年4月中旬(予定)
④会社分割の効力発生日:平成28年10月1日(予定)
Reviw
今回は、
「丸亀製麺」で有名な
トリドール社の事例です。
麺類好きの私も
丸亀製麺はよく利用させてもらっていますので、
個人的に興味深い事例です。
同社は、半年後をメドに
ホールディングス化するとのことです。
但し、今回の開示では、
その目的や背景については
それほど詳しい記載はありませんでした。
直接的な記載としては、
———————————-
お客様のよろこびを最大化すために、
・より一層の経営の効率化を図る
・市場環境の変化に柔軟に対応出来る体制を作る
ことが必要と考え、持株会社移行する
———————————-
といったような趣旨の記載がある程度でした。
この記載内容だけでは、
なかなか真意を汲み取ることは難しいところです。
そこで何かヒントがないかと思い、
有価証券報告書の方も確認してみました。
そこから全体的に感じることとしては、
——————————————-
●海外展開を加速している
●いくつかの飲食ブランドを展開しているが、
丸亀製麺が圧倒的なメイン事業になっている
●「連結決算の利益<個別決算の利益」という構図になっている
——————————————-
といった印象です。
また、平成27年3月期の
有価証券報告書では、
以下のような趣旨の記載もありました。
対処すべき課題
●国内基盤の更なる強化、収益性の向上
●国内における新業態・新市場の開拓
●海外展開の積極化、世界展開できるブランドの確立、発信
事業等のリスク
●外食業界の動向及び競合の激化
●主要業態(=丸亀製麺)への依存度が高い
●有利子負債に依存するビジネスである
●人材の確保・育成が重要な課題になる
●海外事業展開におけるリスク管理
つまり、トリドール社は、
圧倒的な主力事業である
「丸亀製麺(とくに日本)」に依存した
グループ経営であるということです。
これは、ある意味効率的とも言えますが、
一方で、リスクが高いとも言えます。
日本でポジションを確立した「丸亀製麺」を
海外へ拡大していくとともに、
丸亀製麺が絶好調である今のうちに、
次なる柱(ブランド)の構築を急いでいる、
といったことが感じられます。
そう考えた場合、
「『グループ経営』をきちんと経営する」
ことが重要な要素になってきます。
そして、そのためにホールディングス化して
より一層グループ経営の専門化を目指していく、
という意志の表れなのではないか、
と推測します。
おそらく、これまでは、
「丸亀製麺」の拡大の延長線上で
グループ経営をしていたステージなのだと思います。
結果として、
「連結決算の利益<個別決算の利益」
という財務数値結果になっています。
一方でこれからは、
グループ経営という枠組みの中で、
「丸亀製麺」や「他のブランド」を経営していく、
という形にしていきたいのではないでしょうか。
ホールディングス化することで、
「対処すべき課題」「事業等のリスク」で掲げられていた
・グループ全体での人材育成
・グループ資金の効率的運用
・マルチブランド展開
といったことをグループ全体として戦略的に
取り組んでいくことができれば、
今後の成長・拡大にも期待が持てます。
今後のグループ組織デザインが
どのように変わっていくかもウォッチしていきたいと思います。