税務研究会発行「経営財務/3233号/2015年10月26日」に掲載されている「特別誌上座談会 持株会社の経理実務」の記事をもとに情報を整理しております。
前回の記事で
前回の「【事例】サッポログループのシェアードサービス①」
の記事の続きとして、今回は、その後の
サッポログループのシェアードサービスの状況について、
インタビュー記事をもとに情報を整理させていただきます。
シェアードサービス化の効果
●2004年9月にシェアードサービスの元になる組織を
ホールディングカンパニー内に作り、
「経理」「人事」「総務」といった
グループ共通部分の集約化を実施。
●その3年後には、
シェアードサービス機能を別会社に分社化し,
一層の効率化推進を目指す体制を作った。
●さらにその3年後に組織改編を行い、
グループ本社という位置づけにスケールアップをして
一層の構造改革とコスト改革を目指して活動。
●規模のメリットによる一定のコストダウンはできた。
●但し、いまだ組織を変えながら進化・発展中。
●グループ各社の決算・単体決算業務
⇒主としてグループ内のシェアードサービス会社で実施。
●連結決算業務
⇒ホールディングカンパニー経営管理部において実施。
●主要事業会社の管理会計業務
⇒主要事業会社の経理部門が担当(=分業の体制)。
●グループの大多数の個社決算を
シェアードサービス会社で担っているため、
情報連携は比較的スムーズで統制が効きやすい。
●原則として,新入社員は
毎年シェアードサービス会社の経理部門に
配属(出向)され、
そこでベーシックな勉強をしたあとに、
ホールディングカンパニーや各事業会社に
配属される体制になっている。
●グループの経理部門の人材は、
経理部門内での人事ローテーション制のため、
知識や経験を深めながら育成する体制はできている。
●そのため、
・ホールディングカンパニー
・各事業子会社
・シェアードサービス会社
の間の経理部門は、
横串で一貫性がある体制を構築。
Review
サッポロの事例から興味深い点を
4点挙げてみました。
①規模のメリットによるコスト削減
②いまだ組織を変えながら進化・発展中
③グループ各子会社の決算を
シェアードサービス会社で実施することで、
情報の連携がスムーズで統制が効きやすい
④新入社員はシェアードサービス会社の
経理部門に配属(出向)される
まず①の規模のメリットですが、
これは、シェアードサービス導入の
主目的の1つです。
きちんと取り組んでいけば、
やはりコスト削減につながっていく、
というこだと思います。
一方で、②にありますように、
シェアードサービス組織は、
「いまだ組織を変えながら進化・発展中」
とのことです。
基本的には、
完璧なグループ組織デザインというものは
存在しないと思っています。
グループの成長、事業環境の変化に応じて、
グループ組織デザインは常に
変わり続けるものだと思いますので、
サッポロも状況はとてもよく理解できます。
そして、個人的には
その次の③④がとても参考になると思っています。
グループ各子会社の決算を
シェアードサービス会社で実施することで、
情報の連携がスムーズになり、
統制が効きやすくなったとのことです。
シェアードサービス化で目指すべきところとして、
コスト削減も良いのですが、
その先のステージとして、
このような情報連携や統制向上等の
付加価値の高い業務だと思っています。
シェアードサービス化することで、
各事業会社の貴重な情報が集約されることになります。
これは見逃せないポイントです。
グループ内の各事業会社の情報を
一元管理できますし、
さらに横串管理までできれば、
業務の標準化等も進めていけます。
また、
グループ情報を一元管理できれば、
グループの全体像を見える化したり、
改善提案等もできるようになっていきます。
このような
「攻めのシェアードサービス」
の体制に変えていければ理想的です。
そして④にあるように、
サッポロでは、新入社員を
シェアードサービス会社に配属する仕組みを
設けているのも、
とても良い仕組みだと思いました。
グループの貴重な情報が集まってくる
シェアードサービス会社において、
最初にグループ全体のことを学べることは、
新入社員にとっては
とても良い経験になるはずです。
グループ人材教育という意味でも
シェアードサービス機能が大きな役割を果たすことが
わかる良い事例だと思います。
参考記事(シェアードサービス)
●Vol.32 ホールディングス × シェアードサービス=?
●Vol.121 中小企業がシェアードサービスを活用すれば、売上が1ケタ上がる
●Vol.124 独自性のあるシェアードサービスの出発点とは?
●Vol.129 シェアードサービスとバリューチェーンの関係
●Vol.133 シェアードサービスをどのようにグループ経営に組み込むべきか?
●Vol.134 シェアードサービス子会社のメリット&デメリット
●Vol.135 ホールディングカンパニーにシェアードサービス機能を置く
●(Q13)シェアードサービス化していく前に押させておくべき点は?