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【事例】RIZAPグループ

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シェアリングサプライチェーン

今回は「シェアードサービス」の事例として、
RIZAPグループの「シェアリングサプライチェーン」について、
確認をしてみたいと思います。

 

シェアードサービスといえば、
一般的には、経理や人事、総務といった管理部門の話になりがちです。

ただ、グループ経営現場においては、
営業や商品部門、物流機能についての
グループ内のシェアリングの話は、
日常的に行われているのではないかと思います。

 

実際に、グループ会社同士で、
情報を共有したり、機能を共有したりしながら、
グループシナジー効果を高めようと努力をしている会社は多いと思いますが、
一方で、グループ会社間の「壁」に阻まれているケースの方が
多いのではないかと思います。

各グループ会社それぞれにおいて
目標があり、予算があり、企業風土があるため、
なかなか理想通りにはいかないという感じではないでしょうか。

とくにM&Aを積極的に活用して、
外部企業をグループ化してきている会社の場合には、
企業風土の違いに悩まされたり、
グループ会社間の「壁」に阻まれているケースは
とても多いと思います。

 

RIZAPグループも
M&Aによって事業拡大を進めている会社ですので、
その意味では、同社の取組みは参考になるのではないでしょうか。

 

同社のM&A戦略

ここで、まずは
同社の最近の業績を確認してみたいと思います。

——————————-
2013年3月期:連結売上高178億円、連結経常利益9億円
2014年3月期:連結売上高239億円、連結経常利益13億円
2015年3月期:連結売上高391億円、連結経常利益19億円
2016年3月期:連結売上高554億円、連結経常利益46億円
2017年3月期:連結売上高961億円、連結経常利益37億円
※日本の会計基準ベースでの業績推移
——————————-

 

いかがでしょうか?

 

この間の同社の連結子会社数は、

10社⇒14社⇒19社⇒23社⇒51社⇒直近63社

といった感じです。

 

グループ会社数は年々増加していますし、
それに合わせて、グループ売上も
すごい勢いで増加しているといった感じです。

 

同社のM&A戦略としては、
グループシナジーを発揮できることを念頭に置きながら、
RIZAPという中心的なブランドを磨きつつ、
周辺領域の機能・強みを有する会社をグループ化していっている印象です。

結果がついてくるかはこれからの経営手腕によるとは思いますが、
わかりやすく、かつ、明確なグループ戦略を立て、
忠実にそれを実行していっているような感じですし、
とても興味深い会社と言えるのではないでしょうか。

 

但し、急拡大していく会社としては、
グループ管理機能がとても重要である一方で、
管理部門の現場の状況としては、
とても大変な状況であることは想像に難くないですが…。

 

背景と目的、方針等

このような急拡大している同社ですが、
今回の「シェアリングサプライチェーン」に関する開示について、
概要を確認してみたいと思います。

————————————————————————
●グループは連結子会社63社より構成されており、
「自己投資産業グローバルNo.1」をグループビジョンとして掲げ、
・美容・健康関連事業
・アパレル関連事業
・住関連ライフスタイル事業
・エンターテイメ ント事業
を展開している。

●子会社である堀田丸正株式会社をはじめ
海外に生産拠点を持つ当社グループ企業を中心に海外生産体制を強化し、
素材開発から企画・生産、そして販売に至るまでのプロセスを一貫して行う
SPAモデル(製造小売業としてのビジネスモデル)の
グローバル規模での強化を進めている。

●今回構築する戦略的統合物流モデル「シェアリングサプライチェーン」とは、
グループの複数の企業が同じ倉庫での商品管理、配送センターの共有、
および共同配送を通じて、物流関連コストを抑えながら流通量を増やすことにより、
グループシナジーを通じてサプライチェーン全体の効率の最大化を目指した
新しい統合物流モデルとなる。

●本取組みを通じて、
グループ全体の物流関連コストの最適化、配送リードタイムの短縮等を通じた
顧客満足度の向上によるグループ全体の競争力強化につなげていく方針である。

●今回構築する戦略的統合物流モデル「シェアリングサプライチェーン」では、
グループ各社毎に分断されていたサプライチェーンをグループ全体で統合し、
サプライチェーンのあらゆるプロセス(コンテナ・物流センター・トラック等)の積載効率を
AI技術を活用して最適化することにより、物流網全体の効率の最大化を目指していく。

●具体的には、以下の項目を中心に、
グループ全体の物流関連コストの最適化、および、配送リードタイムの短縮を通じた
顧客満足度の向上に向けた物流改革の取組みを進め、
グループシナジーを発揮する中でグループ全体の競争力強化を推進していく。

①RIZAPグループ共有の物流プラットフォーム構築
・国際物流における倉庫・コンテナ等の共有による積載効率の最大化
・AI技術を活用した、サプライチェーンの各プロセスにおける最適配分の実現
・国内倉庫の統合、3PL委託および在庫管理の最適化
・スケールメリットを活かしたグループ配送料金の統一

②国際物流効率の最大化
・川上の海外調達から川下の最終配送目的地(ラストワンマイル)に至るまでの一貫輸送の実現
・海外調達先から国内倉庫を経由せずに店舗までの直送による物流コストの最適化
・海外倉庫での流通加工による国内物流作業コストおよび物流コストの圧縮

●本方針による効果として、
サプライチェーン全体の大幅な効率化を見込んでおり、
具体的には、3年後(2021年3月期)までの目標数値として
グループ全体の物流関連コストの25%以上を削減する方針である。

●中期経営計画「COMMIT2020」で掲げた
2021年3月期の連結売上収益3,000億円の達成に向けて順調に進捗しており、
今後のグループの事業規模の拡大に伴い、
今回構築する「シェアリングサプライチェーン」による物流関連コストの削減効果は
年々増加する見通しである。

※以上は、同社が平成29年11月1日に開示している
 『戦略的統合物流モデル「シェアリングサプライチェーン」の構築に関するお知らせ』の内容を
 引用・一部加工したものです。
————————————————————————

 

今回の開示内容から考えると、同社としては、
この「シェアリングサプライチェーン」を構築するために必要な会社を
最近のM&A対象の前提として考えていたことが推測されます。

 

同社のシェアリングサプライチェーンの特徴

同社が今回の開示で進めている方向性は、
おそらく他の多くの会社においても
同様な方針は持っていることが多いと思います。

同社のようなシェアリングサプライチェーンについては、
理想や構想としては常々語られている会社が多いのではないでしょうか。

 

但し、同社のようにきちんと形で外部に公表をし、
具体的に取り組みを進めていけている会社となると、
少ないのではないかと思います。

同社の代表的なフレーズには、
「結果にコミットする」
というものがあると思いますが、
経営においてもきちんと結果にコミットするために、
きちんと社内外に公表し、取り組みを進めている感じでしょうか。

 

参考までに
今回の開示の中に以下のような図が掲載されていましたので、
転載をさせていただきます。

同社開示資料より転載

 

最後になりますが、
今回の同社の取組みで、
個人的に興味深かったポイントは、

————————————-
グループ経営資源の最適配分に
AI技術を活用する
————————————-

という点です。

 

時代の流れを考えれば当然だと思うのですが、
個人的にはとても新鮮な特徴でした。

グループシナジーを発揮するためには、
グループ経営資源の適切配分は不可欠ですが、
このような機能についても「AI技術」にどこまで頼って、
どこの部分を「ヒト」が担っていくべきなのか。

このあたりを真剣に考えながら、
グループ経営を実践していくことも
これからの時代は重要な感じですね。

 

★★★★★★★
グループシナジーとAI
★★★★★★★

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