前回の「Vol.49」でも書きましたが、
限られた入手可能な情報をもとに、
上場企業のオーナーの個人資産管理の事例を
私なりにいろいろな切り口で研究しています。
前回の「Vol.49」では、
オーナーの資産管理会社の必要性
について書きましたが、
今回は、資産管理会社の内容を
もう少し掘り下げて紹介してみたいと思います。
資産管理会社の形態についてです。
資産管理会社が保有している資産や、
事業形態、管理状況から分類すると、
大きくは、
①株式
②株式+不動産
③株式+保険代理店
④株式+一般事業
といった形態に分けられそうです。
ここでいう「株式」とは、
もともとオーナーが出資した会社の株式、
つまり「自社株式」のことです。
つまり、
当初はオーナー個人が
保有していたであろう自社株式を
資産管理会社へ移行したということです。
上記①の形態は、
まさに、この自社株式だけを、
オーナー個人から資産管理会社へ移した形態です。
とてもシンプルな形ですし、
目的もわかりやすい形態になっています。
おそらくオーナーにとっての
資産管理会社のスタートとしては、
この①の形態になるでしょう。
次に、上記②③についてですが、
これは①を少しバージョンアップしたような感じなります。
株式保有だけではなく、
オーナー個人の資産全体の運用・管理も含め、
不動産や保険代理業まで合わせて
運営する形態です。
会社が軌道に乗り、報酬も増えてくると、
オーナー社長のお金が増えてきます。
この段階になると、
次第に「資産運用」を考えるようになってきます。
その最たるものが、
不動産であったり、保険だったりします。
つまり、
上記②③の形態は、
オーナーの個人資産を総合的に
マネジメントする段階になった
資産管理会社形態と言えるでしょう。
最後に上記④の形態は
どう考えればよいのでしょうか?
これは一概に言えません。
いろいろな経緯があると思われます。
但し、オーナー社長は、成功してくると、
いろいろなことをやりたくなってきます。
それまでの本業の枠組みで
新規事業をすることもありますが、
あえて、本業とは完全に切り離して、
全く別の個人の会社で新しいことを始める、
ということもあります。
おそらく上記④のケースは、
このオーナー個人の別の思いのもと作った会社を
資産管理会社として使っている、
というパターンが多いように思います。
以上のように、
いろいろな形態はありますが、
どれが良い悪いというものでもありません。
オーナーの個人資産管理を
どのように考えるか、
現在持っている個人資産として
どのようなものがあるか、
等によって状況は変わってくると思いますので。
但し、1つ言えることは、
オーナーがもともと保有していた自社の株式を
資産を管理する会社へ移している、
という点ではどれも共通である、
ということです。
その意味では、どの形態も
「ホールディングカンパニー」
「ホールディングス」
と表現されることもあります。
但し、
私が考える連結グループ経営のためのホールディングスは、
この個人の資産管理がメインのホールディングスとは
意味合いが異なります。
あくまで、
グループ経営にあたり、
グループ内でリーダーシップを発揮し、
グループ企業価値の最大化を目指すために、
ホールディングスを活用することを
私は勧めています。
たんにオーナーの資産管理をするためだけに
ホールディングスを活用した方がよいとは、
考えていません。
その意味では、
ひと言で「ホールディングス」といっても、
どのようなホールディングスを目指すかは、
オーナーや経営者によって様々ということです。
そのなかで、
私が考える理想のホールディングス経営は、
「連結グループ企業価値の最大化」
「オーナー個人資産管理の最大化」
の2つの目的を同時追求するために、
ホールディングスを活用すべき、
というものです。
この2つの目的は、
密接にリンクはしているものの、
同時に達成していくのはとても難しいものです。
入口の段階から、
複数会社化するにあたって、
きちんとグループ組織デザインをし、
デザイン通りに運用できるような仕組みを
構築していく必要があります。
流れに身を任せて自然と出来上がるものではありません。
オーナー社長の本気度と努力が不可欠です。
但し、
きちんと仕組みを構築し、
回り続けるところまで持っていければ、
永続するグループ企業経営に近づいて行けます。
ホールディングスを検討されている社長には、
「なぜ、ホールディングスにするのか?」
という点を、是非もう一度見つめ直して
いただきたいと思います。
ホールディングスにもいろいろな目的や形が
ありますので。