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【事例】株式会社クスリのアオキ

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※平成28年6月30日に株式会社クスリのアオキより適時開示されている「株式交換による持株会社体制への移行に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行

開示概要

●平成28年6月30日開催の取締役会において、
平成28年11月21日を効力発生日として、
株式会社クスリのアオキホールディングスを株式交換完全親会社、
株式会社クスリのアオキを株式交換完全子会社
とする株式交換を実施し、
持株会社体制に移行することを決議。

●本株式交換は、
・平成28年8月18日に開催予定の当社定時株主総会での承認
・同日開催予定のクスリのアオキホールディングス定時株主総会での承認
を前提としている。

●株式交換の実施により
株式会社クスリのアオキの株式は上場廃止となるが、
株主に新たに交付されるクスリのアオキホールディングス株式については
クスリのアオキホールディングスがテクニカル上場を申請し、
平成28年11月21日に上場することを予定し、
実質的に株式の上場を維持する方針である。

持株会社体制への移行の背景

●明治2年に石川県において創業した薬種商をその前身とし、
昭和60年1月に設立以来、
「健康と美 と衛生を通じて社会から期待される企業作りを目指すこと」
という経営理念に基づいて、医薬品や化粧品を核商品としながら、
日用雑貨、食品、小物衣料などの生活必需品をも重視した品揃えで
ドラッグストア事業を行ってきた。

●平成28年6月30日現在、
北陸3県に172 店舗、
その他の地域に152 店舗の直営店を展開し、
平成28年5月期は、
・売上高1,634億円
・営業利益90億円
・当期純利益65億円
と増収増益となっている。

●ドラッグストア業界は、
・厳しい出店競争や価格競争
・M&Aによる業界再編
・他業種の参入
によって競争環境が激化し、経営環境は厳しさを増している。

持株会社体制への移行の目的

●このような経営環境の中、さらなる成長を目指しているが、
今後、中長期的な企業価値向上を図り、持続的な成長を実現するためには、
・経営における意思決定の迅速化
・M&A等を活用した事業規模の拡大
が必要になり、そのための組織体制として、
監督機能と業務執行機能を分離して
グループ経営管理を強化することが必要であるとの観点から
持株会社体制への移行を決定した。

持株会社化への移行方式

●持株会社体制への移行方法については、
・株式交換
・株式移転
・会社分割等
の手法も含めて慎重に協議・検討した。

●筆頭株主のクスリのアオキホールディングスは、
創業家の資産管理会社であるところ、
創業家によるクスリのアオキホールディングスを通じた株式の間接保有は、
経営の安定および株主構成の安定性確保に寄与してきた。

●持株会社体制への移行の手段として
クスリのアオキホールディングスを株式交換完全親会社とする
株式交換を利用する場合、
創業家各人による持株会社株式の直接保有となるため、
持株会社の株主構成の透明性が向上し、
ガバナンスに対する株主の皆様の理解がより一層深まると考えている。

●さらに、株式交換を利用する場合、
完全親会社となる持株会社を新たに設立する必要が無いことから、
迅速かつ機動的に持株会社体制に移行できると考えている。

●一方、株式移転を利用する場合、
創業家による持株会社株式の間接保有が継続するため、
株主構成の透明性の向上を図ることができない。

●また、会社分割を利用する場合、
株式移転による場合と同様に、
創業家による持株会社株式の間接保有が継続するのみならず、
事業や資産等を子会社に移転する手続や
許認可の再取得等の煩雑な手続が必要になるなど、
事業への悪影響が生じる可能性がある。

●以上の理由により、
持株会社への移行方法については、
クスリのアオキホールディングスを株式交換完全親会社とする
株式交換が最善の手法であると判断した。

本株式交換の日程

①取締役会決議日(両社):平成28年6月30日(木)
②株式交換契約書締結日(両社):平成28年6月30日(木)
③株主総会決議日(両社):平成28年8月18日(木)(予定)
④株式売買最終日(クスリのアオキ):平成28年11月15 日(火)(予定)
⑤上場廃止日(クスリのアオキ):平成28年11月16日(水)(予定)
⑥株式交換実施予定日(効力発生日):平成28年11月21日(月)(予定)
⑦上場予定日(クスリのアオキホールディングス):平成28年11月21日(月)(予定)

Review

今回の事例は、
「㈱クスリのアオキ」
のホールディングス化についてです。

 

ドラックストア業界は、
同社の持株会社化の目的や背景にあるように
「M&A等を活用した事業規模の拡大」
が頻繁に行われているため、
M&Aに適したグループ組織デザインである
ホールディングス形態を活用する会社が多いです。

 

そのため、
その点においては目新しい点はありませんが、
今回注目したいのは、
「ホールディングス化の手法」
についてです。

今回採用した手法は
「株式交換」
になっていますが、
ホールディングス化の手法としては、
どちらかというとマイナーな手法と言えるでしょう。

 

そのようななかで、
なぜ「株式交換」という手法を選択したかについて、
丁寧に説明がされているところが、
興味深いところです。

 

ホールディングス化の手法として、
もっともポピュラーなのは「会社分割」や「株式移転」で、
今回のような「株式交換」という手法を活用するケースは、
事例がかなり少なくなります。

参考までに、
経済産業省より開示されている
「純粋持株会社実態調査」によると、
最近のホールディングス化の手法の割合は、
以下のような結果になっています。

ikouhoushiki
専門的な用語になってくるので、
経営者としては、
「そんなものなのか」
という程度で見ていただければ十分かと思いますが、
今回の事例の特徴は、要は、
「ホールディングス化の手法が珍しい」
ということです。

 

それでは、なぜ同社が
今回「株式交換」を採用したのでしょうか?

 

説明されている理由を簡単にまとめると、

————————
①移行方式としては手間がかからない
②資産管理会社を通した間接保有を止めることでガバナンスが向上する
————————

と表現できます。

 

①については、
1つの事実としてはあるかと思いますが、
別に「株式交換」を積極的に採用するほどの理由とは思えません。

 

そう考えると、
今回、同社が「株式交換」を選択したのは、
②の方に背景があるように思います。

そして、この②については、
「創業家の資産管理会社の方針」
と深くかかわっている印象です。

 

会計の専門家でなければ、
少しわかりづらいと思いますので、
あえて、平たく説明すると、
「株式交換を選択=創業家の資産管理会社を無くす」
という目的のもと、今回の説明がなされています。

 

実は、この方向性が
とても新鮮な流れのように
個人的には感じました。

一般的には、
創業家としては「資産管理会社」を
どのように上手く活用していくか、
という点を考えることが多いように思いますが、
同社の場合には、
これとは逆の流れを選択したといえます。

 

つまり、今回のホールディングス化の流れの中で、
創業家の資産管理会社を
クスリのアオキグループのホールディングカンパニーに変換する、
ということです。

未上場の会社であれば、
なんとなく理解はできるのですが、
上場会社の発想としては、
やはり珍しいように感じるのです。

 

個人的には、
この視点をもう少し考えてみたいので、
改めて、この続きを書いてみたいと思います。

★★★★★★★
創業家の資産管理会社を
どうしていきますか?
★★★★★★★

 

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