新たに別会社を作ろうとしている社長や、
複数会社経営を始めようとしている社長から、
よくこののような質問をされます。
「子会社の決算期をいつにしたらよいですか?」
この質問は本当に多いです。
海外では決算期を自由に決められない国もありますし、
12月決算が一般的だという傾向もあります。
一方で、日本では、
決算期は自由に決められ、
とくに法律上の制限が無いこともあり、
逆に迷ってしまうという状況です。
分類してみると、
①親会社の決算期と合わせる方法
②親会社の決算期と意図的にズラす方法
③特定の月を決算期として選択する方法
の3つくらいに分けられると思います。
上場会社からご質問をいただく場合は、
「子会社管理」の視点が重視され、
未上場会社からのご質問の場合は、
「税金対策」の視点が重視される、
という傾向があります。
当然、別会社、子会社を設立する目的に
左右される要素もあります。
一般的には、
未上場の会社の社長の方が
悩まれるテーマだと思います。
というものも、
上場会社の場合には、
子会社管理がとても大きなテーマであり、
自ずと選択肢が限られてくるからです。
つまり、
上場会社の場合の優先順位は、
「①がベストで、対応が難しければ②にする」
といった感じが事例として多いです。
それでは、
未上場の会社や、
将来的に株式上場も少し考えている社長は、
どの選択肢が一番良いのでしょうか?
私の意見は、ずばり
「①」
です。
特別な意図が無い限りは、
中長期的に見ると「①」が理想的だと思います。
この点においては、
未上場会社の社長も、
是非「上場会社」の視点に見習っていただきたいです。
理由は、
グループ経営においては、
決算期が一致している方が、
あらゆる面で統一感が図れるからです。
私のメインテーマは、
永続する「連結グループ経営」の実践です。
決して「節税」をメインテーマに置くことはありません。
税金対策は、
副次的には重要なテーマではありますが、
あくまで永続する「連結グループ経営」を
実践していくなかでの
一戦略でしかありません。
この考え方を前提にしたときは、
「グループ会社は決算期が一致していた方がベスト」
という結論に至ります。
また、
決算期の異なる会社の株式を取得して、
グループ会社化するようなことがあれば、
この場合も、決算期を変更し、
他のグループ会社の決算期と合わせた方が良いと思っています。
それでは、
グループ会社の決算期を一致しない場合には、
どのようなデメリットがあるのでしょうか?
決算期を一致しないことの
デメリットの視点から考えてみたいと思います。
①社員の活動モチベーション
決算時期は社員の活動モチベーションに
少なからず影響します。
グループ全体でモチベーションを
高めようと思った時にも、
この決算時期の違いにより、
一体感が作りづらいことがあります。
②グループ会社の管理期間
年度決算や半期決算、
四半期決算といった感じで、
会社は節目を作ることが多いものです。
もし決算期が異なっていると、
グループ会社間で節目が異なることになり、
会社の管理が難しくなることがあります。
③グループ内取引の管理
決算時期ごとに
残高を正確に固めていく場合が多いと思いますが、
決算期がズレていると、
グループ内取引を合わなくなり、
グループ内管理が難しくなることがよくあります。
④グループ内への甘え
決算期がズレている期間があることを理由に、
グループ内取引の処理を遅延してしまう、
といった甘えにつながる傾向があります。
「子会社の決算期まで考えよう」
といった会話がよく出るようになります。
この甘えは、経営の質を落とすことに
つながっていきます。
⑤無駄なグループ内取引の調整
税金対策として、あえて決算期をズラして、
その期間のズレを利用して、
グループ会社間で取引を調整するような考えを
たまに耳にします。
但し、これは小手先のテクニックであり、
かつ、実質的には全く意味の無い考え方です。
決算期がずれていることを
上手く活用しようとした結果、
経営とは関係ないところに、
無駄なエネルギーを費やすようになっていきます。
⑥連結決算の仕組み
連結決算書を作成する際には
グループ各社の数値を合算することになりますが、
決算期がズレていると、
この合算のタイミングに迷うことがあります。
結果、連結決算の仕組みも
効率が悪くなる場合があります。
⑦グループ資料の作りやすさ
グループとしての資料を作る際に、
決算期がズレていることで、
「まだこの会社は決算を迎えていないので・・・」
といったようなケースが生じてしまい、
グループ資料を作成するのが難しくなることがあります。
以上、
まだまだいろいろとありますが、
思いつくままにいろいろと挙げてみました。
グループ全体で決算期が一致している場合には、
意外とそのメリットを感じづらいものです。
一方で、
決算期をズラしたとたんに、
いろいろと迷うケースが出てくるものです。
多くの場合、
本質的な経営活動とは無縁な
無駄な検討や作業が生じる場合が多いです。
また、
決算期がズレていることが理由で、
いろいろと無意味なアイデアを利用したくなる、
といった状況に陥りがちです。
変な「甘え」も生んでしまいます。
このような弊害を考えていくと、
連結グループ経営の実践をメインテーマとする社長には、
自ずと決算期をいつにするべきかの答えは
見えてくるはずです。