前回の続き(グループ内取引の経済合理性)

前回の投稿では、
Vol.215 グループ内取引の経済合理性とは?
という内容で書かせていただきましたが、

その続きとして、今回は、
「東京地裁 平成12年2月3日 法人税(平成7年(行ウ)第262号)」
の判例をもとに、
経営指導料についての論点を確認してみたいと思います。

 

判例がすべてではないと思いますが、
参考になる部分はあると思います。

なお、そのままの表現等でお伝えすると、
堅苦しくなったり、理解しづらくなったりすると思いますので、
私の勝手な判断で適度に表現をやわらかくしたり、
内容を省略してお伝えさせていただきます。

(正確な内容をお知りになりたい場合には、判例の本文をご確認くださいませ。)

 

背景と登場人物の概要

オランダの会社(フィリップス社)の日本現地法人として、
日本親会社と日本子会社が存在する。

 

登場する会社

●オランダ本社(≒フィリップスグループ)

●日本親会社
・フィリップスグループの100%子会社
日本におけるフィリップスグループ会社の管理運営責任を負う

●日本子会社
・海外で製造されたフィリップスブランド製品を輸入して日本国内で販売
日本における各種製品の調達

 

裁判の争点
子会社は親会社に対して、
・一般経営・管理・技術援助・営業・法務等の人的役務提供
・海外顧客の紹介及び連絡の人的役務提供
の対価として、
子会社の年間売上総(予算)額の
1パーセントに相当する経営指導料を支払い、
経費計上(損金算入)をしている。

この子会社から親会社への経営指導料が
経費(損金)として認められるのか?
それとも寄付(経済的利益の贈与=損金にならない)に該当するのか?

※他の論点もありますが、今回は経営指導料に限定してお伝えさせていただきます。

 

会社の主張

①親会社の役務提供内容1
親会社は、子会社の経営全般にわたる
指導、役務提供を実施している。

子会社は親会社から受けた経営指導、
役務提供に対する対価として、親会社に対して、
取引高の1%に相当する金額の経営指導料を支払っていて、
その支払は正当な経済取引である。

 

②親会社の役務提供内容2
親会社は、
管理、広報、渉外等を中心とする諸活動を行い、
その業務の主たる内容は経営指導活動であり、
子会社の事業開発・拡大のために尽力してきた。

親会社は、
・子会社の事業推進
・日本国内市場における新製品としての紹介
等、諸種の活動により販売拡大を図ることにより、
子会社の事業活動の中枢機能を果たしてきた。

さらに親会社は、子会社が、
日本においてフィリップスグループの企業理念及び
一定の基準に則った事業活動を展開できるように
支援活動を行ってきた。

子会社が販売活動を行うにあたっては、
親会社から様々な営業上及び経営管理上の支援が必要であった。

子会社は、
管理、広報、渉外等の活動については、
主として親会社からの役務提供によって賄っており、
その対価として親会社に対して経営指導料を支払っていた。

 

③第三者の存在
経営指導料について覚書を締結しているが、
この覚書を締結した当時(1973年)は、
この親会社と外部企業である松下電器産業との合弁子会社として、
当子会社が存在していた。

グループ外企業の松下電器産業も
この経営指導料に関する覚書には同意して
経営指導料を受け取っており、
経営指導料の率をグループ内の所得移転を目的として、
恣意的に決定されたということはあり得ない。

 

④経営指導料の算定方法
経営指導料は、
子会社の売上高を基準として、
計算が実施されている。

グループとしての最終目的は、
フィリップス製品の売上拡大に基づく利益追求であり、
親会社の経営指導も、
最終的には子会社の製品売上増加を目的とした役務提供であり、
経営指導の価値評価は、子会社の売上の増減とういう形で現れる。

したがって、
子会社の売上高を基準として経営指導料を決定するのは、
きわめて合理的である。

 

⑤経営指導内容の付加価値
親会社からの役務提供(経営指導)により
子会社が受けていた利益は、
個々の役務や、それに要する費用の積み重ねのみでは
評価できない多大なものであった。

具体例としては、以下のようなものがある。

・オランダ本社や全世界グループとの交信・情報伝達
・全世界的経営戦略会議への出席
・経営諮問会議の設置
・社団法人日本電子機械工業会での活動
・子会社の製品事業活動についての検討、指導
・子会社が当事者となっている取引について相手方との折衝、交信
・経理財務
・人事、福利厚生等
・法務(子会社にはそのような部署・人員なし)
・製品及び技術の研究開発(子会社にはそのような部署・人員なし)
・市場調査、市場研究、市場開発(子会社にはそのような部署・人員なし)
・広報活動(子会社にはそのような部署・人員なし)

 

⑥長期間にわたる経営指導料の是認
長期間にわたって(13年間)
子会社は親会社に経営指導料を支払ってきたが、
税務上問題とされることはなかった。

判例上、税務関係においても、
信義則の法理は適用されるものとされており、
長期間の経営指導料の是認は、
信義則が適用されるべきである。

 

⑦外部企業の実績
従来、フィリップスグループと
松下電器産業との合弁会社である松下電子工業は、
その親会社である松下電器産業から役務提供を受け、
この対価として、売上の2.5%の経営指導料を支払っていたが、
税務上問題にされていなかった。

この率から考えると、
今回の経営指導料の率が合理的なものであったことを
間接的に裏付けるものである。

 

⑧参考ガイドライン
フィリップスグループが採用している一般サービス契約は、
フィリップスグループ会社間での費用の負担を定める契約であり、
OECD移転価格ガイドラインに合致している。

一般サービス契約に基づき、
仮定的に計算した子会社の負担額は、
子会社が実際に支払っていた経営指導料の金額と
ほぼ同じであった。

これは、子会社の支払った経営指導料の額が
合理的なものであるったことを示すものである。

 

国税側の主張

①金額の根拠の曖昧性
管理部門を有していない子会社の管理事務の遂行に関する
費用負担の相当額として認められる部分以外は、
経営指導料金額と対価関係に立つべき個々具体的な役務提供の事実が認めらない。

また、会社が提出した証拠資料等によっても、
その経営指導料の額の
・計算根拠
・負担理由
・その支払金額の相当性
が明らかではない。

そのため、
子会社が負担すべき管理事務の費用を超える部分の金額は、
対価関係を欠いた贈与行為によるものといえ、
親会社に対する経済的利益の贈与に当たる(寄付金に該当)と認められるべきである。

 

②合理的な金額計算
経営指導料として損金にできるのは以下の合計額である。

————————————–
●社長室及び専務室の費用
 親会社の実質発生額×1/2
●広報室、法務室、生産企画開発室、外人給与担当及び技術本部費用
 親会社の実質発生額×子会社負担率
 ※子会社負担率=子会社の人件費・従業員数の親会社の人件費・従業員数に対する割合
————————————–

 

③金額の合理性
経営指導料について覚書において、
子会社の年間売上総(予算)額の1パーセントとして定めはあるが、
上記の推定計算額を超える部分については、
支払根拠となる具体的な役務提供の事実が認められず、
また、1%という率の算定根拠、負担理由、支払金額の正当性が認められず、
支払は対価性を欠く合理性がない。

 

④役務提供の受益者
親会社が子会社に対して提供した役務の具体例として、
全世界的経営戦略会議への出席及び経営諮問会議の設置等を会社は主張しているが、
全世界的経営戦略会議開催に関する費用の負担はオランダ本社が、
経営諮問会議を開催するために要する費用の負担は親会社がすべきであり、
子会社が経営指導料として費用負担すべきものではない。

なぜなら、以下の理由による。
<全世界的経営戦略会議>
本社のトップマネジメントとナショナル・オーガニゼーションの代表者が出席し、
グループ全体の経営指導活動について討論を行う場
<経営諮問会議>
親会社の内部に設置され、
フィリップスグループ会社の経営全般について助言を受けるための諮問機関で、
その目的は親会社自体がナショナル・オーガニゼーションとしての役割を
果たすためのものである

 

⑤税務調査の妥当性
13年間税務調査等においても問題とされていなかったのは、
経営指導料を今まで是認してきたわけではなく、
単に見過ごされていたために更正されなかったにすぎないものである。

決算書等の資料からは明らかではなく、
容易に状況を知りえる状況になかったのであるから、
税務上、認めていたとか、黙認していたということはできない。

 

⑥外部企業との比較
親会社以外の会社(例:松下電器)にも同様な経営指導料を支払っており、
これについて税務上問題とされたことはないとの会社の主張は、
今回の件とは別個の問題であり、今回の判断には影響しない。

 

⑦参考ガイドラインの参照妥当性
親会社等の提供するサービスが
親子会社などのグループ企業全体の便宜のために行われるもので、
グループ企業内の各法人が合理的と認められる基準により
按分して負担すべき費用であるとして、
OECDの移転価格ガイドラインに沿った方式であるとの会社の主張について、
関連費用の算出根拠等の具体的な立証はなされていない。

 

気になる結論は?

それでは、
このような背景と両者の主張の結果として、
この裁判の結論はどうなったのでしょうか?

 

内容をかなり省略したり簡便化したので、
少しニュアンスが変わっている部分もあるかもしれませんが…、
是非、予想をしてみてください!

どちらの主張の方が勝てそうでしょうか?

 

ということで、今回は長くなったので、
気になる回答は、論点の整理等含め、
次回に書かせていただきます。

 

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経営指導料を考える
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