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【事例】シチズンホールディングス株式会社

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※平成28年2月12日にシチズンホールディングス株式会社より適時開示されている「事業持株会社体制への移行準備開始に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

事業持株会社体制への移行準備開始

開示概要

●平成28年2月12日開催の取締役会において、
平成28年10月1日を目処に
純粋持株会社体制から事業持株会社体制に
移行する準備を開始することを決議。

事業持株会社移行検討の経緯等

●平成19年4月以降、
純粋持株会社体制のもと、
グループ競争力強化と成長促進を図るべく取り組んできた。

●平成25年4月よりスタートした
中期経営計画「シチズング ローバルプラン 2018」では、
「『真のグローバル企業』を目指して」というスローガンのもと、
徹底した体質強化と製造力強化を目指した構造改革に取り組むとともに、
事業ポートフォリオを明確にし、
強みを発揮できる事業分野へ経営資源を集中させ、
時計事業を中心とした事業の拡大と強化を図る等、
一定の成果を得ることができた。

●平成26年4月より、
「時計事業の成長戦略の加速」と「経営の効率化」を目的に、
・シチズンホールディングス株式会社(親会社)
・シチズン時計株式会社
・シチズンビジネスエキスパート株式会社
3社一体運営のもと、
様々な取り組みを行ってまいりました。

●しかし、「シチズングローバルプラン2018」を更に推し進め、
時計事業を中核としたグループ全体の更なる成長と本社機能の強化を図るため、
現在の純粋持株会社体制から
事業持株会社体制へと移行する準備を開始する。

●移行後は、新しい体制で
更なるグループの競争力強化を図り、
グループ企業価値・株主価値の向上に努めていく。

事業持株会社体制への移行方法

●シチズンホールディングス株式会社を存続会社とし、
シチズン時計株式会社及びシチズンビジネスエキスパート株式会社を
消滅会社とする吸収合併の方法により、
事業持株会社とする体制に移行する予定。

●事業持株会社への移行に伴い、
商号をシチズン時計株式会社に変更することを予定。

純粋持株会社体制への移行スケジュール

①平成28年4月27日(予定):合併契約承認取締役会
②平成28年4月27日(予定):合併契約締結
③平成28年10月1日(予定):合併効力発生日

レビュー

今回の事例は、
「純粋持株会社から事業持株会社への移行」
についての開示で、
一般的な流れとは逆行する事例だけに、
貴重な事例なのではないかと思います。

 

通常「ホールディングス化」と私が表現する際には、
基本的には「純粋持株会社」をイメージして表現をしています。

一般的な「ホールディングス化」事例も、
いわゆる「純粋持株会社」もしくは、
「純粋持株会社+一定の機能」
といった形をイメージしていると思います。

 

一方で、
今回シチズンが移行しようとしている
「事業持株会社」とは、極論すると、
「本業を行いながらグループ管理をしている通常の親会社」
と表現しても良いと思います。

今回のシチズンの事例においても、
メイン事業を実施していると思われる
「シチズン時計株式会社」を持株会社にくっつける、
ということなので、
「本業を行いながらグループ管理をしている通常の親会社」
という形に近づくような形態になります。

 

多くの会社が「純粋持株会社」へ移行しているなか、
シチズンは、時代と逆行して、
昔の親会社の形態に少し逆戻りするような、
グループ組織デザインにする背景には、
いったいどのような考えがあるのでしょうか?

ここには、
いち早くホールディングス化して、
試行錯誤をされてきた同社だからこそ感じているものが
あるのだと思います。

そのため、
今後ホールディングス化しようとする会社や
現在ホールディングス化した会社にとっては、
学ぶべき背景があるような気がします。

 

今回の開示を受けて、
私もシチズンの過去の持株会社化の流れを
改めて確認してみました。

すでに持株会社形態である同社ですが、
調べてみると平成19年にホールディングス化をしています。
いわゆる「純粋持株会社」形態です。

 

当時の平成18年10月26日の開示資料である
「会社分割による純粋持株会社体制への移行に関するお知らせ」
においては、
純粋持株会社化の目的を以下のように開示されています。

—————————————————–
当社はこれまで、
グループ企業価値の一層の向上に繋げることを目的として、
主要連結子会社の完全子会社化等の施策を積極的に推進し、
グループ全体としても構造改革に継続的に取り組んでまいりました。

このたびグループ構造改革の一環として、
①スピード経営・自主自立経営の徹底
②各業種・ 業態に最適な経営体制の確立
③変化に対応できる柔軟な経営体制の確立
④ポートフォリオマネジメントに基づく選択と集中
⑤グループとしてのシナジー効果の追求
により、
グループの競争力強化と成長促進を図るべく、
純粋持株会社体制への移行を決断いたしました。
—————————————————–

 

同社が純粋持株会社へ移行して
約10年になります。

そして今回の開示によると
事業持株会社へ移行を考えた背景としては、

————————————–
時計事業を中核とした
グループ全体の更なる成長と
本社機能の強化を図るため
————————————–

といった記載があります。

 

ここには2つのメッセージがあります。
それは、
・時計事業を中核にする
・グループ本社機能を強化する
の2点です。

 

後者の「グループ本社機能強化」については、
いわゆる「純粋持株会社」として目指してきた
——————————————-
①スピード経営・自主自立経営の徹底
②各業種・ 業態に最適な経営体制の確立
③変化に対応できる柔軟な経営体制の確立
④ポートフォリオマネジメントに基づく選択と集中
⑤グループとしてのシナジー効果の追求
——————————————-
の継続を意味するものと思われます。

これだけであれば、
あえて「事業持株会社」へ移行する必要性は
低いように思います。

 

そう考えると、
今回の事業持株会社移行のポイントは、
「時計事業がグループの中核である」
という方針を改めて打ち出した結果、
グループ組織デザインが引きづられて変える必要が出てきた、
ということなのだと解釈しました。

 

結局、純粋持株会社形態は、
各事業子会社を横一列で捉え、管理する、
という考え方が、
基本姿勢としてあるように思います。

それまで親会社としてグループ全体を
引っ張ってき「メイン事業」も
他の子会社と同様に
横一列で見なされることになります。

これはホールディングス化する際の
1つの目的と言えるでしょう。

 

一方で、
ホールディングス化したとしても、
グループ全体の実態が
もともとの親会社のメイン事業を中心とした状況に
変化が無いようであれば、
ホールディングス化した効果は限定されます。

シチズンの場合、
時計事業だけに頼らず、
グループ全体のポートフォリオマネジメントに基づく選択と集中をして、
グループとしてのシナジー効果の追求を目指した結果、
やっぱり「時計事業が中心である」というところに行きつき、
グループ組織デザインも「メイン事業」を中心にした
現状に合ったデザインへの変更を検討したのではないか、
と勝手に推測してみました。

 

実際のところはどうなのでしょうか?

シチズンの今後をウォッチしてみて、
同社からのメッセージを見ながら、
考えていってみたいと思います。

★★★★★★★
ホールディングス化する際に、
メイン事業の位置づけをどうするべきか、
考えていますか?
★★★★★★★

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