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今週の「減らす」決断(2015年11月9日~11月13日)

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平成27年11月9日~11月13日の適時開示情報をもとに、
「子会社を減らす」決断をした事例をご紹介いたします。

はじめに

今週は2件の事例をご紹介させていただきます。
「子会社を減らす」という決断は勇気がいるものですが、
経営者として重要な仕事の1つです。

是非、各事例における経営者の決断から
学べる部分を学ばせていただきましょう。

事例1)株式会社システム・テクノロジー・アイ

<概要>

●平成27年11月9日開催の取締役会において、
子会社である株式会社SE プラスの全株式
SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ株式会社(SE H&I)に
譲渡することを決議。

<背景>

SEプラスは、
旧 株式会社翔泳社(現 SE H&I)の
一事業部門として創業し、
平成13年11月に同社子会社として設立された。

●平成19年7月に、
システム・テクノロジー・アイとSEプラスが、
それぞれ保有する経営資源を活用することで、
大きなシナジー効果が期待できると判断し、
・システム・テクノロジー・アイ:株式交換完全親会社
・SEプラス:株式交換完全子会社
とする株式交換をSE H&I との間で実施した。

●その結果、
・システム・テクノロジー・アイ:SE H&Iの連結子会社
・SEプラス:システム・テクノロジー・アイの連結子会社(=SE H&Iの連結孫会社)
となり、両社は共にSE H&Iグループの
教育・人材事業を担ってきた。

●株式交換後、約8年が経過したが、
その間、取り巻く経営環境が一層厳しさを増し、
当初期待されていたSEプラスやSE H&I グループ各社との
事業連携によるシナジー効果が必ずしも発揮できていない。

●今後、業績の回復と企業価値の向上を図るためには、
シナジー効果が期待できる他社との
資本提携・事業提携の構築が有力な選択肢と考えていた。

●このようななかで、株式会社ブイキューブと
資本提携を含んだ業務提携を検討することになった。

●SEプラスは引き続き
SE H&I グループの一員とした状態で、
システム・テクノロジー・アイが
SE H&Iグループから離脱することが、
両社の企業価値向上に最も資するとの結論となった。

事例2)株式会社 VOYAGE GROUP

<概要>

●平成27年11月12日開催の取締役会において、
連結子会社である株式会社fluctを吸収合併存続会社、
同じく連結子会社であるKauli 株式会社を吸収合併消滅会社とする、
連結子会社間の吸収合併について決議した。

<背景>

●グループは、「人を軸にした事業開発会社」として、
インターネット領域において様々な事業開発を進め、
広告配信プラットフォームを運営する「アドテクノロジー事業」と、
オンラインメディアを運営する「メディア事業」
2つを主力事業として展開している。

●グループの「アドテクノロジー事業」では、
今後も拡大の予想される
プログラマティック取引市場における
広告配信プラットフォームで
ナンバーワンとなることを目指している。

●「アドテクノロジー事業」において、fluct社は、
グループの「アドテクノロジー事業」における重要な子会社として、
媒体社にとっての広告収益最大化の支援に取り組み、
現在では 7,000 以上のメディアを支援している。

●また、平成27年4月に
独立系SSPを提供するKauli 社を連結子会社化し、
国内SSP市場におけるナンバーワンのポジションを
確固たるものとしてきた。

●これまでもグループ内での
サービス連携やノウハウ共有を進めてきたが、
今後、fluct社及びKauli社の両子会社が有する
・経営資源
・顧客基盤
・プロダクト
・システム
・データ
・ノウハウ
等を集約・融合し、
より一体的かつ効果的に事業展開していくことが、
さらなる事業の発展や顧客満足の向上に繋がると判断。

●その結果、fluct社を吸収合併存続会社とし、
Kauli社を吸収合併消滅会社とする合併を実施することした。

レビュー

今週は2つの事例となります。

 

まず1つ目の事例は、
システム・テクノロジー・アイという会社です。

もともと、他のグループ会社のなかの会社を
子会社化すると同時に、
システム・テクノロジー・アイ自らも
そのグループ会社の傘下に入った経緯があったとのこと。

但し、思うような連結シナジーが生み出せず、
システム・テクノロジー・アイだけが、
子会社化していた会社を当該グループに残したまま、
そのグループから離脱する決断に至ったようです。

結果的に、
取得した子会社株式を、
再度、取得先へ買い戻してもらう、
といったような感じになったようです。

グループ内でシナジーを生み出すのは、
難しいものですね。

 

2つ目の事例は
VOYAGE GROUPです。

もともとサイバーエージェントの
連結子会社だった時代もある同社ですが、
その後MBOによってサイバーエージェントから独立
そして2014年には株式上場といった
歩みがある会社です。

直近の2015年9月期の
決算短信によりますと、
・連結子会社が17社
・持分法適用会社が5社
となっており、
グループ企業としては大きな規模です。

インターネット関連分野において
様々な事業を展開していることもあり、
良い連携もあれば、
逆にムダが発生していることもあり得ます。

 

そのようななかで、
グループ内のシナジーを追求する一方で
グループ内の合理化を検討した結果、
同事業内のグループ子会社同士の合併を
判断されたのだと思います。

【決算短信(2015年9月期)の「事業系統図」より一部抜粋】
※以下の赤枠部分が今回の合併対象部分です。
decrease voyage

 

私の感覚でも、
同様な事業をしている別会社であれば、
1つの会社にした方が、
連携・共有がスムーズになったり、
合理化を図れる部分が大きいと考えています。

 

成長していく「グループ経営」のなかでは、
このようなグループ組織デザインの変更は
常に発生してしまうと思いますが、
逆に考えると、
「グループ組織デザインの変更=グループとして進化の証」
ともいえると思います。

 

以上、今回の事例となります。

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