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Vol.208 連結決算業務は「仕組み」が9割

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ブラックボックス化しやすい連結決算

グループ経営に欠かせない業務の1つが
「連結決算業務」
です。

 

連結決算というと、
立場によってイメージされるものが違うかもしれません。

ただ、共通してイメージされていることは、
「連結決算=なんだか難しそう…」
というものです。

 

私が最初に会計を学んだ頃(20年前頃)は、
「連結決算」という概念や実務はありましたが、
それほど普及していなかった時代のように思います。

但し、この20年くらいで時代は変わり、
グループ経営が主流となり、
上場会社でも連結決算の方が重視されるようになりました。

 

上場会社で要求されるあらゆるルールも、
連結ベースが原則となっています。

非上場会社の場合は、
連結決算が強制される場面はほぼ無いと思いますが、
上場会社や上場を目指す段階では、
「グループ経営=連結決算は義務」
という状況になります。

 

上場会社で義務付けられる連結決算に関する
会計基準やその他管理ルールは
確かに複雑なものも多いのは事実です。

そのためか、
経理部門に「連結決算業務担当」という役割や部門が
できあがることが通常です。

 

そして、よく見かける状況なのですが、

——————————-
連結決算業務担当の役割・部門ができる
 ↓
少数で担当(1人の場合もあり)
 ↓
ブラックボックス化
 ↓
コントロール不能・業務の代替不能
——————————-

ということが起こりがちです。

 

とくに、この役割を1人に担わせているような会社の場合には、
その担当者の気分やわがままに左右されることも出てきたり、
最悪のケースとしては、その担当者が退職した場合に、
組織にノウハウもなく、引継ぎもできず、
新たな担当者探しに追われるという状況があります。
(このような事例は、結構多いのが実情です…)

 

連結決算業務の9割は簡単?

実際のところ、
「連結決算」とは、どのような業務なのでしょうか?
本当に難しく、高度な専門的知識が必要なのでしょうか?
これができる人材は少ないのでしょうか?

 

個人的な見解ではありますが、
結論から申し上げると、

———————————–
簿記2級~3級の知識があれば、
連結決算の9割は担える
———————————–

ということです。

 

会計知識がないと、
連結会計の理解が難しい部分があるのは事実ですが、
きちんと「仕組み化」できていれば、
たとえば、経理経験のある担当者や
簿記2~3級程度の知識がある担当者だけでも
対応できる業務のはずです。

 

裏を返すと、重要なことは、
「連結決算ができる人=すごい人」
というイメージをなくして、
誰でもできる業務にしておくことが重要だと言えます。

 

これは、
経理業務の業務標準化という意味でも重要ではあるのですが、
個人的には、それ以上に重要なことは、

———————————–
連結決算業務を「仕組み化」できるかどうかは、
経理部”以外”の社内の協力姿勢で決まる
———————————–

という事実をきちんと理解することだと思います。

 

連結決算がブラックボックス化したり、
連結決算の仕組みができていない多くの会社では、
「連結決算の仕事=経理部の仕事」
という社内認識が存在します。

この認識を変えられるかどうかが、
重要だということです。

 

さきほど、

———————————–
簿記2級~3級の知識があれば、
連結決算の9割は担える
———————————–

と表現させていただきましたが、
それと同時に

———————————–
連結決算業務の9割は、
経理部以外の社内協力姿勢で決まる
———————————–

ということです。

 

つまり、
連結会計や連結決算業務の9割は、
高度な会計専門知識が不要であるということです。

グループ経営者が率先して、この意識をもち、
グループ全体を「連結決算業務」に巻き込むことができれば、
連結財務諸表を作るという単なる作業だけでなく、
グループ経営管理を支える「連結決算の仕組み」を
構築していけるものだと思っています。

 

ちなみ、残りの1割は…

ちなみに、
先ほどから「9割」と表現していますが、
残りの「1割」についても少しだけ触れさせていただきます。

 

連結決算や連結会計は、会計の概念としては、
確かに複雑な部分が存在するのは事実です。

1割と表現したのは、
私の感覚的なところではありますが、
この1割部分が存在するがゆえに、
高度な専門知識を有する人材や
外部のコンサルタントが必要とされているのも
事実ではあります。

 

ということで、
このような専門人材やコンサルタントも、
当然、存在意義があり、希少価値の高い存在ともいえます。
この存在を決して軽視する思いはありません。

ただ、誤解をしていただきたくないのが、
この「1割」の部分だけを見て、
「連結決算=難しい」
「連結決算ができる人は=特別な存在」
「連結決算=多くの人には関係ない」
という結論付けにはしていただきたくない、
ということです。

 

重要なことは、
繰り返しになりますが、

———————————–
簿記2級~3級の知識があれば、
連結決算の9割は担える
———————————–
連結決算業務の9割は、
経理部以外の社内協力姿勢で決まる
———————————–

という事実です。

 

逆に言うと、この「9割」部分の領域まで、
専門的な人材だけに頼ろうとすると、
連結決算が上手くいかなかったり、
ブラックボックス化したり、相当なコストがかかったり、
数値の集計だけの作業になっていくということです。

連結決算の「9割」部分について
誰でもできる、誰もが関与する仕組みを構築できていれば、
残り「1割」にかかるコストも相当軽減されます。

 

連結決算の「本質」

ということで、
今回は「連結決算の”幻想”」について
書いてみました。

 

もしかしたら、
少しオーバーな表現に思われるかもしれません。

ただ、私もかなり多くの会社の連結決算の現場を見てきましたが、
高度な専門的知識を必要とする機会は、
本当に「1割」程度な印象です。

決して「嘘」ではありません。

 

そして、
専門的知識が必要な「1割」の部分は
多くのケースで「正解」もしくは「正解らしきもの」が存在するので、
粛々と対応し、時期が来れば解決していきます。

一方で、
専門的ではない「9割」の部分の方は、
とても苦労して、時間がかかりますし、
いわゆる「正解」は存在しない領域になります。

 

この「9割」の部分は、
いくら専門的知識を有していても
解決ができない要素が詰まっています。

 

結局、きちんと「連結決算の仕組み」にしていけるかどうかは、
グループ経営者だったり、役員だったり、部長だったり、
この「9割」の部分に向き合って、
グループマネジメントの重要な課題として
強く意識・関与していけるかにかかっていると言ってもよく、
専門的知識だけでは解決が難しい領域なのです。

 

連結決算に苦しんでいる会社、
これから連結決算の仕組みを構築していきたい社長には、
この「連結決算の9割」の部分を
是非、意識してみていただきたいと思います。

きっと見方が変わってくると思います。

 

★★★★★★★
連結決算業務は
「仕組み」が9割!
★★★★★★★

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