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今週の「減らす」決断(2015年9月28日~10月2日)~ワタミ特集~

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平成27年9月28日~10月2日の適時開示情報をもとに、
「子会社を減らす」決断をした事例をご紹介いたします。

はじめに

今週は「ワタミ」の事例に特化して、
紹介させていただきます。

「子会社を減らす」という決断は勇気がいるものですが、
経営者として重要な仕事の1つです。

事例1)ワタミ株式会社

●2015年10月2日開催の取締役会において、以下を決議した。
100%子会社であるワタミフードシステムズ株式会社(「WFS」) の吸収合併
100%子会社であるワタミの介護株式会社(「ワタミの介護」)の全株式譲渡

●グループは、「食」ビジネスのさらなる推進、
商品開発体制の強化、及び経営効率の改善を目的として、
平成27年3月1日付で連結子会社である3社間での合併を行い、
新たにWFSとしてスタートした。

●しかし、3社それぞれの沿革や事業特性の違いなどから、
今もなお事業分野毎に独自の運営がなされているため、
組織の融合を目指すための施策を講じることが必要となっていた。

●現在、事業持株会社として、
当社グループ全体の統括機能とともに、
各種シェアードサービス機能を有している。

●この度、グループの組織統合を進めるにあたって、
持株会社体制を見直し、
経営と事業運営が一体化された組織体制に移行することが、
グループ全体にとって最良の選択であるとの判断に至り、
100%子会社であるWFSを吸収合併することを決定。

●吸収合併と同時に、
従業員の給与体系など人事制度の統一をあわせて図ることにより、
人材の戦略的配置による組織の活性化を
さらに進めることが可能になると考えている。

●あわせて経営体制の強化を図り、
全社員が一丸となって業績改善に邁進する体制構築を進めていきたい。

ワタミの介護は、100%出資する連結子会社であり、
現在、全国で合計111か所(平成27年3月末時点)において、
「レストヴィラ」を主なブランドとして
・介護付有料老人ホームを運営、
・サービス付き高齢者向け住宅やデイサービスの運営
などを行っている。

●ワタミの介護は、
「ホームはご入居者様の幸せのためだけにある」を経営理念として掲げ、
入居者がその方らしく尊厳を保たれ、
自立した日常を過ごしていただけるような介護に努めてきた。

主力事業である国内外食事業で培った
チェーンオペレーションノウハウ
グループの製造加工拠点である「ワタミ手づくり厨房」を活用して、
全国に展開するホームにおいて、
美味しくかつ栄養バランスに配慮した日替わりの献立をご提供し、
入居者からも高い評価を受けている。

●他方で、介護報酬の改定など経営環境が変化する中、
入居者に対して高品質のサービスを継続的にご提供し、
かつ、事業としても中長期的に発展していくために、
抜本的な対策を講じることが必要となっていた。

●このような中で、SOMPOホールディングスより
株式譲渡に関するご提案を受けた。

●SOMPOホールディングスは、
株式会社損害保険ジャパン(当時)を通じて
九州及び関東を中心にデイサービスや施設サービスを行う
株式会社シダーの株式の34%を平成24年9月に取得して以降、
介護事業への取り組みを加速している。

●株式譲渡及び譲渡先を検討するにあたり、
ワタミの介護のホームへの
現時点での入居者、その家族、今後の入居検討者が、
株式譲渡後も安心してワタミの介護が提供する
サービスを適切に受け続けることができるかどうか、
という点を最も重視してきた。

株式譲渡後のワタミの介護の経営方針に関して慎重に吟味した結果、
SOMPOホールディングスがワタミの介護の理念に賛同し、
株式譲渡後もこれまでと変わらないサービスの提供を
継続されると確信したことから、
SOMPOホールディングスに決定。

株式譲渡後も引き続き、
同社グループからのワタミの介護のホームに対する
食材の提供を継続することについて
SOMPOホールディングスとの間で合意

●グループにおける一連の事業再編を実施することにより、
組織体制の強化及び「食」ビジネスへの経営資源の集中が進むとともに、
あわせて財務体質の大幅な改善が見込まれる。

●本株式譲渡により、
ワタミの介護が連結対象ではなくなるため、
連結ベースでの債務が大幅に減少し、
自己資本比率が改善することを見込んでいる。

●新たな事業推進体制の下、
中長期的な企業価値の向上を追求し、
株主及びステークホルダーの利益に資する経営を
今後も継続していく。

レビュー

今週のワタミの事例はいかがでしたでしょうか?

今回のポイントは、
ざっと4つくらいになると思います。

<ポイント>
①経営と事業運営の一体化へ回帰
②稼ぎ頭の介護事業の売却と本来の主力事業へ経営資源集中
③介護事業売却後の連携できる売却先
④財務体質の改善(継続企業の前提)

以下少しずつレビューしてみたいと思います。

①経営と事業運営の一体化へ回帰

もともとワタミは、
ホールディングス経営をしていました。
2010年10月にホールディングス移行しています。

当時の2010年5月22日に同社より開示された
「会社分割による純粋持株会社への体制移行に関するお知らせ」では、
以下のような記載がありました。

「当社グループの企業価値を最大化し、
当社グループが100年企業として今後とも永続的に発展していくためには、
お客様の近くにいる事業会社に権限を大幅に委譲し、
意思決定と業務執行の迅速化を図るとともに、
当社は純粋持株会社として当社グループ全体の
経営戦略立案・コンプライアンス体制強化及び
シェアードサービスに特化する体制に移行する必要があると判断」

それから5年後の2015年10月において
上記の目的とは裏腹に、
実際の経営現場にギャップがあったのかもしれません。

今年の3月から、
連結子会社3社を合併したできた
主力事業の子会社(WFS)は、
3社それぞれの沿革や事業特性の違いなどから、
事業分野毎に独自の運営が維持され、
組織の融合が上手く進んでいなかったようです。

このような背景のもと、
持株会社体制を見直し、
経営と事業運営が一体化された組織体制に移行すべき、と判断され、
主力事業子会社のWFSを
ホールディングカンパニーに吸収合併するようです。

これによって、
・従業員の給与体系など人事制度の統一
・人材の戦略的配置による組織の活性化
といったことを進め、
全社員が一丸となって業績改善に邁進する体制を
構築していくとのことです。

開示資料から判断する限り、
当初理想としていた
ホールディングス経営の形が上手く機能できず、
逆に元の組織形態に近い形に
戻すイメージだと思います。

ホールディングス経営の
理想と現実のギャップをうかがい知れる
事例と言えるでしょう。

②稼ぎ頭の介護事業の売却と本来の主力事業へ経営資源集中

次に介護事業の売却についてです。

同社の有価証券報告書を確認すると、
ここ最近は「介護事業」が稼ぎ頭になっていた様子です。

一方で、
稼ぎ頭の介護事業も、
利益の方は少し減少傾向が見られました。

上記説明にあるように、
介護報酬の改定など経営環境が変化する中、
入居者に対して高品質のサービスを継続的に提供し続けることが、
少しずつ厳しくなっている背景があるのだと思います。

このような状況もあり、
利益が生じているうちに介護事業を売却し、
もともとの主力事業である
食ビジネスの方へ原点回帰・経営資源集中をするには、
今がベストのタイミングだと判断したのではないでしょうか。

グループ全体として大きな赤字に陥っていて、
グループ再建が必要な状況を考えると、
「原点回帰」と「経営資源集中」は、
同社にとってベストな選択だと感じます。

ちなみに、本日(2015年10月4日)の
日本経済新聞によると、
介護事業の売却額は210億円で
売却益が130億円程度と見込まれているようです。

③介護事業売却後の連携できる売却先

一方で売却先については、
いろいろと試行錯誤されたのではないかと思います。

介護事業自体は、
高齢化社会に突入していく日本において、
魅力的な事業ともいえます。

介護事業を高く売れること自体は悪くないことですが、
それ以上に、これまで築いてきた介護事業マーケットと
良い形で「つながり」を維持し、
売却後もWin-Winな関係で協業できる企業へ
介護事業を売却するのがベストな選択肢のはずです。

今回の売却先である
SOMPOホールディングスとの間では、
株式譲渡後も引き続き、
ワタミグループからの介護のホームに対する
食材の提供を継続することについて
合意している旨の記載もありました。

食ビジネスに原点回帰し、経営資源を集中しつつ、
介護マーケットとも食ビジネスの中で関わり続ける、
ということです。

④財務体質の改善(継続企業の前提)

最後に財務体質についてです。

株式譲渡により、
連結ベースでの債務が大幅に減少し、
自己資本比率が改善することを見込んでいるとのことです。

2015年3月末時点の
ワタミグループの自己資本比率は、
「7.3%」
となっていました。

それもここ数年で
大きく低下しての数値です。

このまま赤字体質が続くと、
自己資本が枯渇してしまうリスクが高まるので、
財務体質改善は、
緊急かつ重要な経営課題だったと言えます。

2015年3月期の有価証券報告書においても
「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況」
が存在している旨の記載があります。

つまり、
「このままだと会社としての存続が危ぶまれます」
という黄色信号です。

赤信号に変わる前に、
財務体質改善が喫緊の経営課題であったことを考えると、
短期的取り組みとしては、
今回の介護事業売却は重要な決断だったと思われます。

ちなみに、本日(2015年10月4日)の
日本経済新聞によると、
今回の介護事業売却により自己資本比率が、
「30%」程度まで上昇する見込みとのことです。

 

以上、簡単にレビューをしてみました。
ホールディングス経営の見直しの面も含めて、
今後の「ワタミ」がどうなっていくのか、
個人的には注視しておきたいと思います。

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