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【事例】萩原電気株式会社

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※平成29年2月27日に萩原電気株式会社より適時開示されている「持株会社体制への移行に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行

開示概要

●平成29年2月27日開催の取締役会で、
平成30年4月1日を目処に持株会社体制へ移行すべく、
準備を開始することを決議。

●持株会社体制への移行は、
平成29年6月下旬に開催予定の定時株主総会で
関連議案が承認可決されること及び
必要に応じて関係官庁の許認可等が得られることを条件とする。

持株会社体制移行の背景と目的

●グループを取り巻く環境は、世界規模での業界の垣根を超えた
新たなビジネスモデル創出の動きやIoT・人工知能(AI)の活用といった
新しい技術の台頭など、環境変化が激しい状況となっている。

●グループは「創造と挑戦」の経営理念のもと、
デバイスからシステムまでエレクトロニクス分野の
「ワンストップソリューション・グローバルサプライヤー」を標榜し事業活動を行ってきた。

●このような事業環境で、今後さらなる成長を実現していくためには、
各事業において環境変化への対応力を高めるとともに、
グループ全体の企業価値を最大化する経営体制を構築する必要があると考え、
持株会社体制へ移行することが最適であると判断した。

持株会社体制への移行方法

●萩原電気株式会社を会社分割により純粋持株会社と事業会社に分割し、
持株会社の傘下に、分離したデバイス事業及びソリューション事業の
2つの事業会社を置く形を想定している。

●平成29年6月下旬開催予定の定時株主総会において、
詳細の承認を得ることを検討している。

 

Review

今回は「萩原電気」の事例です

開示の内容を見る限り、
ホールディングス化の目的の詳細は、
それほど語られていません。

ただ、それだけに、
「なぜホールディングス化を決断したのだろう?」
と興味をひかれてしまいました。

 

同社のグループ会社数は、
親会社である萩原電気と子会社7社といった
グループ集団のようです。

また、同社の業績を確認してみると、
以下のような感じです。

————————————–
<平成28年3月期>
 ・連結売上高:932億円/連結経常利益:29億円
 ・単体売上高:860億円/単体経常利益:29億円
<平成27年3月期>
 ・連結売上高:890億円/連結経常利益:28億円
 ・単体売上高:828億円/単体経常利益:28億円
<平成26年3月期>
 ・連結売上高:876億円/連結経常利益:24億円
 ・単体売上高:825億円/単体経常利益:24億円
<平成25年3月期>
 ・連結売上高:852億円/連結経常利益:20億円
 ・単体売上高:813億円/単体経常利益:19億円
<平成24年3月期>
 ・連結売上高:788億円/連結経常利益:16億円
 ・単体売上高:763億円/単体経常利益:15億円
————————————–

とても安定的に成長をしている印象です。

 

ただ、特徴的なのは、
連結売上高は、徐々に拡大していますが、
経常利益が連結と単体でほぼ同額である点です。

グループが拡大してグループ売上高は伸びているのに、
グループ利益額がほとんど変わらないとなると、
単純に指標だけで考えると、
利益率は悪くなっているとも表現できるかもしれません。

 

つまり、
グループ全体としてのさらなる企業価値向上・生産性向上が、
同社の課題とも言えそうです。

このあたりに、
今回ホールディングス化を決断された理由の1つが
あるのかもしれません。

 

また、興味深い点として、
グループ各社の機能がほとんど同じという点です。

拠点としては、
シンガポール、アメリカ、中国、韓国、ドイツ、タイ、
といった国に進出して、現地子会社を有している状況ですが、
各現地子会社が実施している役割(≒おそらく販売子会社)は、
どれも同じような印象です。

事業内容としては、各子会社とも、
親会社同様に「デバイス事業」「ソリューション事業」を
展開している感じのようです。

 

このあたりの拡大の仕方は、
小売業が海外進出する際に、現地法人を作り、
各国で同様の店舗を展開していく感じに、
少し似ている気がしました。

 

今後、同社がホールディングス化した場合に、
どのようなグループ組織デザインになるかはわかりませんが、
このような同様機能を有する子会社を地域別に展開していくスタイルの場合には、
ホールディングス形態が結構効果的になるような気がしています。

同様機能の子会社が増えていくスタイルの場合、
各子会社同士の比較可能性が高い状態にあるため、
グループ全体での「横串管理」をするメリットが強くなる傾向にあるからです。

 

そして、
グループ全体の「横串管理」となると、
ホールディングス形態にしたうえで、
ホールディングカンパニーがグループ全体管理をしていく形が、
とても効果的だといえます。

このあたりの状況を見ても、
同社がホールディングス化に向いている組織デザインだとも言えます。

 

詳細のグループ組織デザインは今後開示されていくようですが、
1つ気になる点は、今回の開示の中で、
持株会社の傘下に「デバイス事業」「ソリューション事業」の
2つの事業会社を置く形を想定している旨のコメントがあった点です。

 

現状の萩原電気(親会社)の2つの事業部門をそれぞれ分割して、
2つの事業会社にしたうえで、
ホールディングカンパニーの子会社として位置付けるという点は、
イメージができました。

ただ、この際に、個人的に興味深いのは、
「デバイス事業」「ソリューション事業」の2つを展開している
海外子会社の方の組織デザインはどうするのか、
という点です。

 

各海外子会社は、それほど規模が大きくなさそうなので、
現状からそれほどデザインを変える感じにはならないのかもしれませんが、
さて、どうなるのでしょうか?

今後の組織デザインがどう固まっていくのか、
興味深く見守ってみたいと思います。

 

★★★★★★★
グループ企業価値を最大化するための
ホールディングス体制移行
★★★★★★★

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