前回の【ワーク1】では、
社長自ら実施していただきたいワークとして、
以下のようなワークを出させていただきました。
<ワーク>
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①グループ会社の財務諸表(決算書)を自分の手で集めてください。
②集めたグループ会社の財務諸表(決算書)の数値を合計して下さい。
③上記②の数値からグループ会社同士の取引を取り除いてください。
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社長自らの手で、
取り組んでいただけましたでしょうか?
本日は、
その解説をさせていただきますが、
先にお伝えさせていただきますと、
このワークについては、
何か解答のようなものがある類のものではありません。
実は、
社長がワークに実際に取り組まれ、
この解説までたどり着いた時点で、
目的は、ほぼ達成だと考えています。
というのも、
このワークの趣旨は、
「社長自らが現場の作業を知ることで、
今後の連結グループマネジメントを
円滑にしていただきたい」
というところにあるからです。
多くの社長は、
営業や商品分野については、
現場の流れなどもわかっているため、
マネジメントがきちんとできることが多いです。
但し、
その情報が数値になって、
社長のところまで伝わってくる流れについては、
社長自身が当業務に直接関与した経験が少なく、
現場の流れがイメージできないがゆえに、
マネジメントが上手く機能しない場合があります。
当然、
社長自らが、会社のすべての業務を
高いレベルで把握するところまでは、
必要ないと思います。
適切な人材に直接のマネジメントを委任し、
社長は、全体をコントロールできていれば、
問題はありません。
但し、
最低限の現場の業務がわからなければ、
マネジメントを委任することすら、
できなくなってしまいます。
つまり、
丸投げになってしまいます。
そうなると、
任せる状態というよりは、
放置する状態になってしまい、
会社全体のマネジメントは上手くいきません。
そのため、
たとえ社長が管理部機能や経理機能といった領域について
専門領域でないとしても、
最低限の現場実務は知っておいて
いただきたいと思っています。
ということで、
すこしだけ今回のワークについて
補足をさせていただきます。
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①グループ会社の財務諸表(決算書)を自分の手で集めてください。
●決算書の収集
決算書はすぐに集めることができましたでしょうか?
すぐに集めることができなかった場合は要注意です。
その理由を明らかにしておきましょう。
●入手先
誰から決算書を入手されましたでしょうか?
もし「税理士」といった回答の場合は要注意です。
なぜかというと、
社外の税理士に作業を丸投げしている状況では、
社長がコントロールできる社内の仕組みに
なっていないからです。
決算書等の数字は、
あくまで社内のことなので、
社内の適切な人、部門から入手できるように
なっている必要があります。
●入手する決算書の時期
グループ各社の決算期が一緒であれば、
迷うことなく直近の決算書を使われたかもしれませんが、
決算期がバラバラの場合は迷われたかもしれません。
決算期の考え方については、
「Vol.61 子会社の決算日はいつにするべきか?」
でも記載していますので参考にしてみてください。
●入手情報の形態
入手する際には汎用性のあるデータで
きちんと入手できましたでしょうか?
やはり、すぐにExcel形式で入手できることは
必須条件だと思います。
②集めたグループ会社の財務諸表(決算書)の数値を合計して下さい。
●財務諸表の合計、作成する資料
各社の情報は、簡単に合計できる状況でしょうか?
たとえば、
Excelデータを使って合計をする場合において、
簡単に合計できましたでしょうか?
会社ごとに財務諸表の使用科目が違ったりして、
合計が難しいといったことはなかったでしょうか?
連結決算書を作る場合には、
各社の数値を合算しやすいように、
感情科目やフォーマットを統一しておくような仕組みが
必要であることを実感していただけたのではないでしょうか?
③上記②の数値からグループ会社同士の取引を取り除いてください。
●グループ内取引
ここが最も難関かもしれません。
グループ内の取引がいくらあるかを
すぐに把握、入手できたでしょうか?
ここに苦労された場合には、
その原因を明確にしておくことが重要です。
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以上、簡単ではありますが、
補足をさせていただきました。
上記の①~③が、
連結決算書を作成する基本的な流れですが、
①~③が連動した形の表をもとに、
いつでも即座に連結決算書を作成できる「仕組み」が必要です。
社長としては、
出来上がった資料を確認できれば問題ありませんが、
この資料が正確でなかったり、
すぐに完成しない場合には、
上記①~③のどこかにボトルネックがあるはずです。
それは「現場レベルの問題」です。
社長が望むデータを
望む時期にきちんと入手できるようにするには、
現場レベルの問題を1つ1つ解消していき、
仕組みにしていく必要があります。
そのためには、
社長自らが現場の悩みを把握する姿勢をもつことが
とても重要だと思います。
ただ待っているだけでは、
問題点は社長のところまでは上がってきません。
社長自らが、
現場に下りて行って現状把握し、
起きている問題点や、必要な情報を
「集める」
努力をする必要があります。
そのうえで、
次のステップとして、
「集める」から「集まる」ような「仕組み」
に変換していく必要があります。
このような仕組みの全体像をデザインし、
そのために現場が動きやすい環境を作るのが、
トップである社長の重要な仕事になります。
是非、今回のワークを、
連結決算の仕組みを作るための
1つのきっかけにしていただければ幸いです。