経営人材の育成
上場会社では、
3月決算の決算発表が
徐々に本格化してくる時期になりました。
同時に組織体制の変更についても
多くの開示がされています。
上場しているかどうかにかかわらず、
3月決算の多い日本では、
年度初めのこの時期に、
組織体制の変更を行うことが多いものです。
そのなかにおいて、最近は、
ホールディングス化移行事例も多い印象ですが、
各社の「ホールディングス化の目的」を確認すると、
目的は似たり寄ったりです。
たとえばですが、
意思決定の迅速化、
戦略的なグループ経営の実行、
M&Aのため、経営人材の育成、
等々です。
そこで本日は、
ホールディングス化の目的の1つとして
よく挙げられる項目の
「経営人材の育成」
というテーマにについて、
もう少し深掘りして考察してみたいと思います。
なぜホールディングス化で経営人材育成になるのか?
このテーマについては、以前に
「Vol.74後継者育成のためのホールディングスの仕組み」
という記事のなかで、
私なりに考えるところをかなり書きました。
「なぜホールディングス化で経営人材育成になるのか?」
このことを検討してみた記事です。
よく言われることとしては、
ホールディングス化して
子会社に権限委譲することで、
子会社側で経営人材が育つとともに、
経営のスピードも上がる、
といった主張があります。
これはこれで、
それっぽくは聞こえるのですが、
逆説的に考えたときに、
「別にホールディングス化しなくても、
子会社に権限を委譲すれば、
同様の効果が得られるのでは?」
という疑問にもつながります。
このような疑問をスタートに、
「Vol.74」の記事では、
いろいろと考察した記事になっています。
詳細は「Vol.74」の記事に譲りますが、
私なりの理解としては、
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後継者や今後の幹部候補を
ホールディングカンパニー人材として登用するのであれば、
経営人材育成につながる
———————————
というものです。
「子会社側」ではなく、
あくまで「ホールディングス側」で
経営人材育成を行う、
ということです。
ホールディングス人材として
グループ全体の視点を養い、
グループ全体を指揮していく能力・経験を身につけるとともに、
事業子会社の現場を知り、助け、
それにより子会社から信頼されることで、
グループ全体を引っ張っていけるような人材に育っていく、
ということです。
ホールディングカンパニーに期待したい業務
総論としては上記のように考えていますが、
それでは、具体的には、
ホールディングカンパニーの人材は、
どのような業務からスタートしていけばよいのでしょうか?
やるべきことは山積みだと思いますが、
是非、ホールディングス人材としては、
「グループ業務フローの作成」
にチャレンジしてみていただきたいと思っています。
たとえば上場会社ではJ-SOX法のもと、
業務フローを作成していることがあります。
また、ISO取得にあたり
業務フローを作成している場合もあると思います。
このような業務フローは
当然役に立つものもあると思います。
ただ残念なことに、
私の経験上、ほとんどの会社が
せっかく苦労して作った業務フローを
実際の業務では活用していない、
という印象が強いです。
全ての会社がそうだとは断言できませんが、
私自身が多くの会社の業務フロー作成を
過去に実施・支援してきたこともあり、
あながち外れていないはずです。
これは、
過去の自分の業務への
反省の思いも込めています。
私自身、当然ではありますが、
本来は業務で活用されるような業務フローの作成を期待し、
コンサルティング等を実施していましたが、
結果的には「現場業務のため」としては、
活用されないことがほとんどでした。
この理由は、
—————————-
業務フロー作成の「入口」が
法律の要求に基づくものである限り、
現場で活用されるものにはならない
—————————-
ということに尽きると思います。
やはり「法律」の要求のもと作成されたものは、
法律のためだけにしか使われない、
ということです。
ただ、だからといって、
業務フローが不要なものだとは思いません。
とくにグループ経営となると、
グループ全体の「つながり」が、
とても重要な要素になります。
専門的にグループ経営を実践していくためには、
グループ全体の業務のつながり(フロー)を
きちんと見える化することは、
必ず意味のあるものになるはずです。
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J-SOX法やISOで要求されるものではない、
「グループ経営」を経営するための業務フローを作ること
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これこそが、
グループ経営人材育成に
効果的だと思っています。
グループ経営のための「業務フロー」作り
ただ、実際に業務フローを作るとなると、
現場の協力が必要となります。
一方で現場の社員は、
業務フローの必要性を感じていなかったり、
そのような協力を面倒くさがったりするものです。
トップダウンの業務命令で
子会社の現場に嫌々協力してもらっても
なかなか成果は上がりません。
ここで、
あきらめてしまう会社も多いと思いますが、
ホールディングス化したのであれば、
なんとか、このような障害を乗り越えて、
「グループ経営のためのグループ業務フロー作り」
にチャレンジをしていただきたい、
と思っています。
ホールディングス化は、
グループ経営を専門化していく意志が
組織デザインに表れたものだと思います。
そうなのであれば、
是非、遠慮・妥協という思いに負けず、
トライしてみてください。
きっと、このようなチャレンジが、
他社との差別化につながっていくはずです。
ということで、
「実際にどのように業務フローを作ればよいのか?」
についても書こうかと思いましたが、
ちょっと長くなってきましたので、
続きは次回の記事で書かせていただきたいと思います。
★★★★★★★
ホールディングス化により
経営人材育成をするためには、
何を実践しますか?
★★★★★★★
参考記事
ちなみに、
業務フロー作りについては、
これまでも記事を書いたことがありましたので、
参考までに、いくつか下記に掲載をさせていただきます。
●Vol.129 シェアードサービスとバリューチェーンの関係
●Vol.130 業務のつなげ方のポイント
●Vol.131 業務フローで「インプット」と「アウトプット」の見える化
●Vol.132 業務フローで「組織力」を見える化
●Vol.136 グループ経営にとって重要なマーケティングとは?
●【コラム】実はすでに存在する「業務の見える化」資料