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Vol.18 複数会社化と社員の気持ち

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会社を複数化するにあたり、
どのようなデザインにするかは様々なケースがあり、
正解があるわけではありません。

経営者自らの意志のもと、
決めていく部分になると思います。

但し、1つ会社を増やすということは、
法人維持管理コストがかかる、
という現実は避けられません。

最低限の税金や、
その他必要手続きも増えます。
税理士等への顧問料もかかります。

多くの経営者が会社を複数化する際に、
この管理コストの部分を
計算に入れていないケースが多いように思います。

Vol.18(1)

この管理コストをかけてまで、
本当に複数会社化すべきなのか?

この問いについては、
経営者自らが自信をもって答えられるように
しておいていただきたいと思います。

そしてもう1つ、
複数会社化するにあたって、
経営者には押さえておいていただきたい
ポイントがあります。

それは「社員の気持ち(モチベーション)」です。

とくに新規事業を、
別会社を作って開始するような場合には、
既存の会社の社員に堂々と説明できるように
しておいていただきたいと思います。

Vol.18(2)

というのも、
「新規事業のために別会社を作る」
というケースが事例としては最も多く、
かつ、それが既存の会社の社員の不満を招き、
逆に組織がバラバラになるケースが
多くあるからです。

既存事業に影響させないために、
既存事業とは切り離して、
別会社を作って新規事業を開始したい。

このような社長の思いで、
別会社を作るケースは多くあります。

この思い自体は悪くないのですが、
現実はどうかというと、
別会社を作り、新規事業を実施することで
既存事業に大きく影響するケースが多いのです。

これは、なぜでしょうか?

それは、
新規事業のためには「お金」が必要で、
既存事業から生み出された「お金」が
投入されるケースが多いからです。

この場合、
既存の会社と別の会社は
深く関係することになります。

お金の流れというのは、
それほど重要なものなのです。

社員は自分の頑張りの結果
生み出された収益であるお金が
自分の給料に還元されることを期待しています。

そのお金が、
自分とは関係ない全く別の事業に使われたり、
さらにその別事業が赤字になったりすると、
社員のモチベーションは著しく下がります。

Vol.18(3)

社長個人のポケットマネーで
別会社を作って新規事業をするのであれば、
それほど問題はありません。

問題になりやすいのは、
既存事業の利益(お金)を使って
新規事業のために子会社を作り、
そちらにお金を回す場合です。

経営者としては、
「自分の会社のお金をどう使おうが自由」
という思いはあるかもしれません。

但し現実には、
社員はそうは思ってくれません。

社長の発想は
「会社のお金=社長のお金」
かもしれません。

一方で、社員の思いは
「会社のお金=みんなのお金」
なのです。

社長が想像している以上に
社員は「会社のお金の流れ」を意識していますし、
お金がどこに流れているかを、
よく知っています。

その「みんなのお金」を
新規事業に使う場合には
とくに注意が必要なのです。

まだ既存の会社のなかで
新規事業を実施する場合には、
理解をしてくれる社員はいるかもしれません。

これが別会社となると、
社員としては自分と関係ない世界になります。

別会社になると、
適切に「お金」が使われているかが、
社員からすると、
より見えづらくなります。

Vol.18(4)

小さなことかもしれませんが、
これがいずれは大きな溝になり、
社員のモチベーション低下にもつながってくるのです。

「新規事業が上手くいけば問題ない」
という考えもあるかもしれません。

しかし、経営者としては、
最悪の想定もしたうえで、
経営判断はしていく必要があります。

複数会社化を検討する際には、
是非、社員の気持ちも考えたうえで、
お金の流れを整理して、
社員にも説明できるような形で
取り組んでいただきたいと思います。

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