連結グループ経営 vs 複数会社経営
連結グループ経営は、
「ヨコの関係も意識する」
複数会社経営は、
「タテの関係のみ意識する」
今回のテーマは「グループ経営における横串管理」についてです。
この「横串管理」という表現が
一般的であるかはわかりませんが、
グループシナジーが働く連結グループ経営を
目指していきたい経営者にとっては、
やはり意識をしておいていただきた視点です。
子会社への投資方針は様々
子会社への投資スタイルは会社によって様々です。
たとえば、複数の子会社を持つ経営スタイルの場合に、
私なりの表現としては、大きく、
●連結グループ経営
●複数会社経営
の2つのタイプに分類してお伝えしています。
「連結グループ経営」の場合には、
グループ各社とも成長していき、
グループ全体としても成長していく経営スタイルです。
一方で「複数会社経営」の場合には、
グループ全体というよりは、
個々のグループ会社が頑張っていくような
経営スタイル(子会社投資スタイル)です。
この場合、結果を出している子会社もあれば、
衰退していく子会社もあるとは思いますが、
その中から大きく成長する会社が出てくれば、
グループ全体としては投資回収できる、
といった発想もあったりします。
どちらかの経営スタイルが唯一正しい、
というものではなく、
経営者の好みによる部分も多分にあります。
ただ、傾向としては、
上図の左側の方の「連結グループ経営」の場合には、
グループ全体として安定しながら成長し、
永続を目指していくような特徴があります。
一方で、上図の右側の「複数会社経営」の場合には、
数あるグループ会社の中から
大きく化ける可能性のあるスター企業が育ってくれれば、
投資回収ができると考える傾向があります。
その意味では、
複数会社経営スタイルの方は、
いわゆる「投資ファンド」の考え方に
近いイメージでしょうか。
とはいえ、
この両者の考え方を完全に別物として
考えられるわけではないと思いますので、
あくまで両社の違いの「傾向」についてのお話をしています。
連結グループ経営を目指しても、
結果として、子会社のいくつかが業績不振になることもあると思います。
そのため、経営者としては、
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どちらの経営スタイルを目指したいか?
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ということをまずは決める必要があるということです。
グループ全体の一体感を重視しながら
みんなで一緒に成長していくのか?
それとも、
それぞれの子会社が独自に活動することを許容し、
そのポートフォリオの中から、
少なくても良いのでスターを作っていくのか?
連結グループ経営と複数会社経営の大きな視点の違い
それでは、経営スタイルとして
連結グループ経営と複数会社経営の間で
大きく差が生じる視点はどこでしょうか?
この点に関して、
私の1つの考えとしては、
以下の点だと考えています。
上図の通り、
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横串で管理する仕組みがあるかどうか
——————————
という点です。
つまり、
連結グループ経営の場合には、
「横串管理」の仕組みを作り、活用している、
ということです。
そのため、
もし複数会社経営のスタイルではなく、
連結グループ経営のスタイルを目指されている経営者の場合、
グループ内に「横串管理」の仕組みがあるかどうか、
一度自社内を確認してみてはいかがでしょうか?
個人的には、
ただの「複数会社経営」ではなく、
グループシナジーを生かした「連結グループ経営」を追求していきたい、
という思いもあり、そのためには、
この「横串管理」の仕組みは必須の仕組みと考えています。
なぜ「横串管理」なのか?
それでは、
グループ内における「横串管理」が
なぜ有用なのかについても
少しお伝えさせていただきたいと思います。
①底上げ
まず1つ目のメリットは、
横串管理により
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グループ各社の底上げ
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につながる、という点です。
グループ各社を横に並べてみると、
業績が悪い会社が一目瞭然になります。
単純な視点ではありますが、
並べないよりは、並べた方が、
相対的に見えてくる部分が必ずあります。
このように横串管理の仕組みの中で、
グループ各社を並べてみることで発見される悪い部分について、
1つ1つ改善努力を繰り返していくことで、
グループ全体における「底上げ」効果が見込まれることになりますし、
グループ内の落ちこぼれ会社が減っていくことにつながります。
②標準化
次のメリットは、
横串管理により
——————————
グループ全体での標準化
——————————
につながる、という点です。
これも①と似ている視点ですが、
並べることで「異常点」に
気づきやすくなるものです。
このような「異常点」をこまめに潰していくことで、
結果的にグループ全体の「品質」が上がり、
同時に「標準化」が進むこととなります。
つまり「標準化=生産性向上」ということです。
③比較可能化
3つ目のメリットは、
横串管理により
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グループ各社について比較できる形になることで、
グループ全体として最適な経営判断ができるようになる
——————————
という点です。
何事も、ある1つの状態を見ていても、
なかなか良し悪しの判断が難しいものです。
これは、客観的な要素を持つ「数字」であってもです。
やはり物事は他の何かとの比較で初めて
良し悪しを判断できるようになるものです。
つまり、比較対象となる「モノサシ」が存在して初めて
良し悪しの判断につながるということです。
そう考えると、
グループ内における「横串管理」の視点は、
とても重要な役割を担ってくれます。
もっとも身近な企業であるグループ内の他社は、
比較するうえでは、最も適した「モノサシ」になってくれるからです。
また、グループ内比較という点を追求し、
横串管理を進めていくことで、
次第にグループ内の「目線」も統一されてきます。
これにより最終的には、
グループ内の経営判断の視点が統一されていくことも期待できます。
今回のまとめ
といった感じでしょうか。
要するに、
グループ内で「横串管理」の仕組みを作ることで、
・グループ各社の底上げにつながり、
・グループ内での落ちこぼれを減らすことができ、
・グループ内の異常点や良い点・悪い点に気づくことができ、
・グループ内で標準化が進んだり、
・グループ全体の目線が統一される
という効果が期待できる、ということです。
そして最終的には、
「グループ全体で成長していくことができるようになる」
ということです。
連結グループ経営と横串管理は
切っても切り離せない関係にあると思っています。
自社独自の「横串管理」の仕組みを構築し、
きちんと運用していけるかどうか。
これが、ただの複数会社経営に陥らないための
ポイントなのではないかと思います。