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【事例】株式会社サダマツ

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※平成29年9月12日に株式会社サダマツより適時開示されている「持株会社体制への移行に関するお知らせ 」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行

開示概要

●平成29年9月12日開催の取締役会において、
平成30年3月1日(予定)を目処に持株会社体制へ移行する方針を決定し、
その本格的な準備を開始することを決議した。

●なお、持株会社体制への移行について、
平成29年11月29日開催予定の定時株主総会で
関連する議案が承認されることを条件として実施する予定。

移行目的

●「ジュエリーに愛と夢を込めてビジュー・ド・ファミーユ」という経営理念のもと、
ベトナムに製造拠点を構えるジュエリーのSPA企業として
百貨店やファッションビル、ショッピングセンターを中心に
現在国内80店舗、海外6店舗を展開している。

●同社が属する宝飾業界においては、
地域や所得環境を背景とした消費の二極化に加え、
テクノロジーやライフスタイルの変化等を背景とする
消費行動や顧客ニーズの多様化が加速度的に進行しており、
さらなる付加価値の訴求や消費の個別化への対応が求められる。

●また、ブランドビジネスにおいては、
訪日外国人の増加等を背景に国内マーケットもグローバル基準に近づいており、
海外で通用するブランドでなければ、今後、日本でも通用しなくなることが予想されるなど、
企業競争力の確保としてジャパンブランドの重要性が一段と増している。

●このような状況下、グループにおいては、中期5ヵ年計画で
「競争優位性を進化させる」
「環境変化にイノベーションで対応する」
「ベースを固め経営基盤を強化する」
の3つの基本方針を事業の中核と位置づけ、
基本方針に基づく重要な施策として、
・ブランドの強化
・本部機能の強化
を掲げている。

ブランドの強化では、
USP商品である“Wish upon a star” を主軸としたプロモーションをはじめ、
アパレルやアクセサリー、バックブランドといった異業種や他社ブランド、
精神価値を訴求する媒体とのコラボレーションを通じた
“Wish upon a star” の認知度を向上させる取り組みを推進している。

●また、基幹ブランド「フェスタリア ビジュソ フィア」の誕生10周年を迎えた節目として、
平成29年3月に世界の情報発信地である銀座中央通りに
「フェスタリア ビジュソフィア ギンザ」をオープンし、
グローバル旗艦店としてアジア本格展開への試金石と位置付け、
インバウンド需要やブライダル需要の獲得強化に加え、
海外に通用するジャパンブランドの確立に向け、経営資源の重点投入を進めている。

本部機能の強化では、
本社マネジメント機能として既存分野である店舗展開に加え、
成長分野であるeコマースや越境型O2O等、
多彩なチャネルの開拓に対する投資を推進するほか、
SPA企業としての成長に向けた取り組みを展開している。

●今後、既存ブランドの強化及び新規ブランドの立ち上げ、
海外展開、eコマースや越境型O2Oをはじめとしたチャネル構築を促進させ、
SPA企業としてグループの成長を実現するためには、
CI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新し、
コーポレートセンター機能の強化に向けたスキルの高い人材の獲得に加え、
これらを有機的に機能させる環境整備が必要であると認識している。

●さらに、事業を取り巻く外部環境が急速に変化しているなか、
グループのパフォーマンスを維持・向上させつつ、
さらなる企業価値の向上を実現するためには、
本社改革を中核としたグループ全体の構造改革により、
スピード経営に柔軟に対応できる組織体制への移行が不可欠であると認識している。

●そのような観点から、
グループ戦略機能を担う持株会社戦略実行する事業会社分離し、
・持株会社によるグループ全体最適視点での経営資源配分
・事業会社における迅速な意思決定による機動的な事業運営の推進
が必要と判断し、持株会社体制へ移行する方針を決定した。

移行方法

持株会社体制への具体的な移行方法等につきましては、
決定次第改めて報告する。

今後の予定

①取締役会における関連議案の承認:平成29年10月13日(予定)
②定時株主総会における関連議案の承認:平成29年11月29日(予定)
③持株会社体制への移行:平成30年3月1日(予定)

Review

今回は「サダマツ」の事例です。

ジュエリー業界ということですが、
業態としては多店舗展開型なので、
これまでもホールディングス化事例も多い業態だと思います。

 

同社のホールディングス化の背景のキーワードとしては、

——————————-
・ブランドの強化
・本部機能の強化
・経営資源の重点投入
・SPA企業としてグループの成長
・CI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新
・コーポレートセンター機能の強化
・本社改革を中核としたグループ全体の構造改革
・スピード経営に柔軟に対応できる組織体制への移行
——————————-

といった点が挙げられています。

 

どれもグループ経営においては重要な要素と言えると思いますが、
今回はこのなかでも「コーポレートセンター機能」という用語に
注目してみたいと思います。

個人的には、なんとなく専門用語的で得意ではないのですが、
「グループ経営力を高める本社マネジメント」(中央経済社)
という書籍から引用させていただくと、
本社部門の有する機能は大きく、

—————————
‣コーポレートセンター機能
‣サービスセンター機能
—————————

の2つに大別されます。

 

このうち「コーポレートセンター機能」とはどのような機能かというと、
‣本社部門において企業戦略の企画立案・モニタリングを行う機能
‣会社の「顔」として対外的な責任を担う機能
と上記の書籍では説明されています。

 

そして、この「コーポレートセンター機能」は、
大きく以下の3つの機能に大別されるようです。

———————————-
‣グループ戦略企画・推進機能
‣グループコントロール機能
‣コンプライアンス・社会的責任遂行機能
———————————-

 

また、上記の機能の具体例としては
以下のようなものが挙げられています。

<グループ戦略企画・推進機能>
‣ビジョン・ドメイン設定
‣ブランド構築
‣ポートフォリオ・資源配分
‣シナジー追求
‣グループストラクチャー

<グループコントロール機能>
‣各種計画策定・管理
‣事業・投資評価
‣リスクコントロール
‣モニタリング
‣その他調整

<コンプライアンス・社会的責任遂行機能>
‣CSR対応
‣IR・広報
‣CS、ES
‣コンプライアンス
‣監査

 

これらは、まさに
「ホールディングカンパニーとして求められる機能」
と言えるでしょう。

ただ、これらの機能はキーワードとしてはどれも重要なものですが、
完全に備えていくには相当な準備や努力が求められるかと思いますので、
まずは優先順位をつけて取り組んでいくことになるでしょう。

 

同社の業界に限らず、
どこの業界も競争が激化していく流れは変わりません。

今後、企業として競争優位を確立して、
他のライバルに負けないような組織体制を作っていくためには、
同社のように「コーポレートセンター機能」にも真剣に向き合って、
本社改革を進めていくような努力は不可欠な取り組みだと思います。

 

ホールディングス化を検討される場合には、
是非、上記の「コーポレートセンター機能」の例示を参考に、

——————————————-
・どこまでをホールディングカンパニーに要求するべきか
・ホールディングカンパニーに何を優先的に要求するべきか
——————————————-

について具体的にしておくとよいと思います。

抽象的なスローガンだけでは、
なかなか変わっていくのは難しいと思いますので。

 

ということで、
今回は「サダマツ」のホールディングス化の背景・目的をベースに、
「コーポレートセンター機能」について少し確認をしてみました。

上記に記載しました、もう1つの機能である
「サービスセンター機能」
については、次回あたりに別途お伝えしてみたいと思います。

 

★★★★★★★
ホールディングカンパニーに求められる
コーポレートセンター機能とは?
★★★★★★★

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