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【事例】株式会社ラクーン

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※株式会社ラクーンより適時開示されている「持株会社体制への移行の検討開始に関するお知らせ(平成30年3月27日)」「会社分割による持株会社体制への移行及び 定款一部変更(商号及び事業目的)に関するお知らせ(平成30年6月8日)」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行

開示概要

●平成30年3月27日開催の取締役会において、
平成30年11月を目途に持株会社体制へ移行するための検討
開始することを決議した。

●平成30年6月8日開催の取締役会において、
平成30年11月1日(予定)を効力発生日とする新設分割及び吸収分割により
持株会社体制に移行すること、並びに、
平成30年年11月1日(予定)を効力発生日として、
商号を「株式会社ラクーンホールディングス」とする
定款の一部変更を行うことを決議した。

●本件は、平成30年7月28日開催予定の定時株主総会に付議するものであり、
当該株主総会での承認を条件として実施するものである。

●なお、100%子会社である株式会社トラスト&グロースにおいては、
会社法第796条第1項の略式吸収分割に該当するため、
株主総会の承認を得ることなく行う。

●持株会社体制への移行に伴い、
株式会社トラスト&グロースは「株式会社ラクーンフィナンシャル」に
商号変更することを予定している。

会社分割並びに持株会社化の目的

●同社は「企業活動を効率化し便利にする」を経営理念に掲げ、
各企業間取引のインフラサービス事業として、
スーパーデリバリーを主力とするEC事業、Paid 事業、保証事業の
3事業を展開している。

●これまで 3 事業とも順調に成長しており、
売上、利益ともに年々拡大を続けている。

●しかしながら、現状よりも成長スピードを加速させ、
さらなる売上、利益の拡大を実現し、
企業価値の向上を図っていくことが必要であると考えている。

●具体的にはこれまで培ってきた既存事業の成長スピードを上げていく。
加えて、今後、積極的に新規事業の創出や、M&Aを実施していく。

●このような取り組みにより、
グループ全体の売上、利益の力強い成長を図っていく方針である。

●そのために経営管理体制を再構築する必要があると判断し、
持株会社体制へ移行することとした。

●会社分割により、
EC事業は新設する「株式会社ラクー ンコマース」に承継させ、
Paid 事業につきましては、保証事業と関連性が強いことから
株式会社トラスト&グロースに承継させることとした。

持株会社体制へ移行するにおける具体的な取り組み

①既存事業における意思決定の迅速化
●持株会社体制への移行により、グループ経営管理と業務執行を分離すると共に、
各事業ごとの権限と責任を明確化し自律的な経営を推進する。

●意思決定の迅速化を図ることで戦略的かつ機動的な事業運営を推進し、
競争力を一層高め、グループ全体の企業価値向上を目指す。

②新規事業の創出及びM&Aの実施
●積極的な新規事業の立ち上げを図っていくために
イントレプレナー制度(※)を新設する。
(※)企業内において新しいビジネスの立案者にその責務を担うリーダーを任せる制度

●また、必要に応じてM&Aを実施し
成長性のあるビジネスを成長に取り込んでいく。

●持株会社においては、
こうした新規事業の創出やM&Aを戦略的かつ機動的に推進できる組織体制を構築し、
グループ全体の成長戦略を推進していく。

③経営資源の適性配分の実施によるグループシナジー効果の最大化
●持株会社を中核に、人材の採用、育成及びシステム開発を
横断的・効率的に行っていくことで、 グループシナジー効果の最大化を図る。

持株会社体制への移行方法

●同社を分割会社とし新たに設立する「株式会社ラクーンコマース」に
EC事業を承継させる新設分割、
100%子会社である「株式会社トラスト&グロース」に
Paid 事業を承継させる吸収分割を実施する。

会社分割の日程

●新設分割(対象会社:株式会社ラクーンコマース)
①新設分割計画承認取締役会:2018年6月8日
②新設分割計画承認定時株主総会:2018年7月28日(予定)
③分割期日:2018年11月1日(予定)
④分割登記(効力発生日):2018年11月1日(予定)

●吸収分割(対象会社:株式会社トラスト&グロース(※1))
①分割契約承認取締役会:2018年6月8日
②分割契約締結:2018年6月8日
③分割契約承認定時株主総会(※2):2018年7月28日(予定)
④分割期日:2018年11月1日(予定)
⑤分割登記(効力発生日):2018年11月1日(予定)
⑥商号変更日:2018年11月1日(予定)
(※1)2018 年 11 月1日付けで、「株式会社ラクーンフィナンシャル」に商号変更予定
(※2)株式会社トラスト&グロースにおいては、会社法第796条第1項の略式吸収分割に該当するため、
株主総会の承認を得ることなく行う。

Review

今回は「ラクーン」の事例です。

同社については、過去の業績を確認してみても、
堅調に業容拡大している印象です。

 

そのようななかで今回のホールディングス化となりますが、
その目的としては、

①既存事業における意思決定の迅速化
②新規事業の創出及びM&Aの実施
③経営資源の適性配分の実施によるグループシナジー効果の最大化

という3つを挙げています。

 

このなかで「②新規事業の創出及びM&Aの実施」という点において、
以下の2つが目に留まります。

—————————————————
●積極的な新規事業の立ち上げを図るためのイントレプレナー制度の新設
●M&Aで成長性のあるビジネスを成長に取り込む
—————————————————

 

イントレプレナー制度とは、
「企業内において新しいビジネスの立案者にその責務を担うリーダーを任せる制度」
とのことで、いわゆる「社内起業制度」です。

また、積極的なM&Aで
成長性のあるビジネスにも投資をしていきそうな印象です。

 

これらから伝わってくるイメージからすると、
ホールディングス体制のなかで、
次世代の経営人材が育つような環境を整備して、
事業子会社を増やしていこうとする形を目指しているものと思われます。

そして、その基盤として、
ホールディングカンパニー側では、
「こうした新規事業の創出やM&Aを戦略的かつ機動的に推進できる組織体制を構築し、
 グループ全体の成長戦略を推進していく」
「人材の採用、育成及びシステム開発を横断的・効率的に行っていくことで、
 グループシナジー効果の最大化を図る」
という役割を担っていくとのことです。

 

自由な雰囲気の中で
チャレンジする経営人材を育成する風土と合わせて、
それぞれバラバラにならないように、
横串で管理して全体最適を目指す役割を構築していくことは
重要なポイントです。

 

個人的には、
グループ経営のなかで、最も重要な課題は、

————————————–
グループ内の
横断的な連携や経営管理
————————————–

であると考えています。

 

放っておいて、自然と、
このような横断的な取り組みが可能になるものではありません。

経営者が強い意志をもって取り組まなければ、
実現は難しいでしょう。

そのためのメッセージとして、
ホールディングス体制というカタチに移行するというのは、
グループ全体で目指すべきカタチが共有できるという良い効果があると考えています。

 

ちなみに、同社のホームページのリリースを見ていると、
ホールディングス移行の検討のタイミングで、
以下のタイトルでリリースがありました。

今期の新体制について

 

このような形で応援されながら独立ができる環境は、
とても素晴らしいカタチだと思いますし、
今回のホールディングス移行と何らかの関連も
あるのではないかと推察されます。

 

★★★★★★★
社内起業と
ホールディングス
★★★★★★★

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