記事一覧

【事例】株式会社 幸楽苑①

Pocket

※平成27年5月8日に株式会社幸楽苑より適時開示されている「持株会社体制への移行に伴う分割準備会社の設立、吸収分割契約締結及び定款一部変更(商号及び目的の変更)に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社制移行及び子会社(分割準備会社)の設立
吸収分割契約の締結
定款一部変更(商号及び目的の変更)

開示概要

●持株会社制への移行に向けての準備を開始する。

●以下を決定した。
①平成27年7月1日を効力発生日として「会社分割の方式」により持株会社体制へ移行する。
②平成27年5月15日に分割準備会社として当社100%出資の子会社を設立する。

日本国内の飲食店の直営店舗運営事業に関する権利義務の一部を分割準備会社に承継する。

フランチャイズ事業及びグループ会社の経営管理を行う機能は分割準備会社へ承継しない

●持株会社の主な収入は以下の通りとなる予定である。
①子会社への食材販売
②子会社からの経営指導料
③ロイヤリティ収入
④配当収入

●持株会社の費用は、グループ会社の経営管理を行う機能等が中心になる予定である。

●平成27年6月18日開催予定の定時株主総会による吸収分割契約の承認を条件とする。

持株会社化の目的

●これまで、以下のような経営を実施してきた。
①グループ1,000店舗体制の実現と業界シェア拡大に向けた
新規出店継続によるドミナント化を推し進めてきた。

②グローバル企業として海外への店舗展開を進めてきた。

③お客様に感動・感激の場所を提供できる店舗づくりを目指し、
商品価値の向上と店舗QSCレベル向上対策を継続して実施してきた。

④コミッサリー(食品加工工場)での大量生産システムのメリットを最大限に発揮し、
価格競争力のある“製造直販業”として効率的な経営体制の確立と
“食の安全・安心”を提供できる供給体制を構築してきた。

●安全・安心でかつ価値のある商品を、客層を広げたより多くのお客様に提供し、
グループの持続的な成長と企業価値の最大化を実現するためには、
①権限委譲とともに責任を明確にし、
②より一層の経営の効率化を図ることで、
③市場環境の変化に即応できる機動的かつ柔軟な意思決定と業務執行を可能とする
連結グループ経営体制への移行が必要と考え、株会社体制への移行を決定した。

●持株会社体制への移行後は、以下を目指していく。
①グループ全体の経営戦略の立案
②経営資源の最適配分
③ガバナンスの強化に取り組み
④グループ全体の企業価値の最大化

持株会社体制への移行の要旨

●移行方式
当社を分割会社とし、当社100%出資の分割準備会社を承継会社とする分社型(物的)吸収分割の方式により行う。

●会社分割の日程(予定)
①分割準備会社設立及び分割契約締結承認取締役会:平成27年5月8日
②分割準備会社設立:平成27年5月15日(予定)

nagatanien(2)
③分割契約締結:平成27年5月15日(予定)
④分割契約承認定時株主総会:平成27年6月18日(予定)
⑤分割の予定日(効力発生日):平成27年7月1日(予定)

nagatanien(3)

分割準備会社の概要

●事業内容:飲食事業(国内直営事業)
●資本金:10百万円
●設立年月日:平成27年5月15日(予定)
●決算期:3月31日
●大株主及び持株比率:株式会社幸楽苑100%
●人的関係:取締役及び監査役は分割会社の取締役が兼任する予定

 

Review

最近のホールディングス化の方式は、
100%子会社である分割準備会社を設立し、
そちらへ事業を移す(会社分割)方法が
ほとんどのようです。

今回の幸楽苑も同様の方式です。

幸楽苑のホールディングス化の主な目的は、
①権限委譲と責任の明確化
②より一層の経営の効率化
③機動的かつ柔軟な意思決定と業務執行
の3点が挙げられています。

目的自体は、
他の事例と基本的には同じではあります。
結局、目指す理想形はどの会社も
同様になってくるのだと思います。

Vol.31(1)

但し、実際に想定通り運営していけるかどうかは
会社によって違いが出てくるのだと思います。

そのため、今後の経営状況を引き続き
確認していきたいですね。

そして、今回の幸楽苑の事例において
一番注目したいポイントは「スケジュールの早さ」です。

今回のホールディングス化の決議日が
2015年5月8日です。
そして、ホールディングス移行日が
2015年7月1日です。

つまり、決議日から移行日までが、
2ヵ月弱ということで、
他の事例と比べても相当早い移行に
なっていると思います。

有価証券報告書を確認する限り、
グループ企業の数もそれほど多くなく、
比較的シンプルな事業構造だったことも
1つの要因かもしれません。

とはいえ、入念な準備のもと、
少しでも早くホールディングス経営に
移行したいという意志が感じられます。

また、もう1点注目したいのが、
ホールディングス化した後の、
ホールディングカンパニーに残る機能です。

開示資料には、
移行後の組織体制案が同時に
掲載されていました。

ホールディングカンパニーに残る主な事業としては、
●経営機能
●国内事業本部(国内事業の経営管理)
●海外事業本部
●商品本部
●開発本部
●管理本部
●FC事業部
●新規事業部
といった機能が見受けられました。

つまり、現場の業務(ライン業務)を子会社にしたうえで、
管理業務全般(スタッフ業務)は
ホールディングカンパニーに残しています。

 

私が理想的だと考えている
ホールディングスの機能としては、
ただ単に株式を持つといった役割ではありません。

グループ経営の頭脳として機能し、
間接業務も引き受け、業務の標準化を図り、
強いリーダーシップをもって
連結グループ経営を実践していくのが
ホールディングカンパニーの役割だと考えています。

Vol.5

幸楽苑の組織予定図を見ると、
私が考える理想的なスタイルに近いように感じました。

また、幸楽苑の有価証券報告書によると、
「中期経営計画の経営方針」には
以下の方針が挙げられています。

イ)1,000店舗体制に向けた出店強化
ロ)既存店活性化対策
ハ)商品開発力の強化とコア商品のブラッシュアップ
ニ)マーチャンダイジングシステムの再構築
ホ)大量出店に対応した人材確保と教育システムの強化
ヘ)財務体質の強化
ト)コーポレートガバナンス重視経営

このような方針を実現するにあたっても
ホールディングス経営が向いていると思いますし、
ホールディングス化は良い経営判断だと思っています。

Vol.12

個人的な予測ではありますが、
フランチャイズ事業を推進してきている幸楽苑は、
ホールディングス経営にスムーズに移行していける
のではないかとも考えています。

というのも、
「フランチャイズ本部の役割」と「ホールディングスの役割」は、
結構近い要素があると考えています。

そのため、自然とホールディングス経営のコツを
身に付けられているのではないかという気がしています。

ただ一方で、
まだまだホールディングカンパニーの機能が
少し重すぎるような気もしました。

当然重要な役割を担う会社なので、
それなりの機能は必要なのですが、
もう少しスリム化もできるのではないかと感じます。

おそらくではありますが、
まずは規模の一番大きな国内事業について、
子会社へ分社化をしたうえで、
徐々に子会社化できる他事業が育てば子会社へ分社化したり、
新たにM&Aで子会社化することを
今後意図しているのではないかと感じます。

Vol.2

そうしていくことで、
幸楽苑が「ホールディングス化の目的」として挙げている
①権限委譲と責任の明確化
②より一層の経営の効率化
③機動的かつ柔軟な意思決定と業務執行
が達成できるのだと思います。

幸楽苑の今後の動向を注視しておきたいと思います。

関連記事

【事例】株式会社 幸楽苑②(考察)

 

 

関連記事