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Vol.179 ホールディングス化で経営資源の最適配分は可能?

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グループ経営資源の最適配分

ホールディングス化の目的の1つとして、
よく挙げられるのが、
「グループ経営資源の最適配分」
という目的です。

 

言葉だけ聞くと、
とても大切な目的だと思うのですが、
本当にホールディングス化で、
グループ内の経営資源の最適配分を
実現できるのでしょうか?

今回は、この点について、
もう少し深掘りして考えてみたいと思います。

グループ経営資源とは?

経営資源としてよく挙げられる項目が、
●人
●モノ
●お金
●情報・ノウハウ
といった項目です。

 

具体的には、
グループ内で資金を一元管理して
有効利用するグループCMSや、
システムの統合、シェアードサービス、
といったキーワードが連想されます。

グループ全体で
経営資源の最適配分を考え出すと、
いろいろな項目や視点があるものです。

 

但し、このなかでも、
最も重要な経営資源は何かというと、
やはり、
「グループ人材」
ということになると思います。

 

IT化が進む現代においても、
最終的には、すべての仕事は「人」に
行きつくのだと思います。

考えたり、動いたり、判断したり。
結局は「人」がいて初めて成り立ちます。

 

この「グループ人材」が
きちんと力を発揮できるような体制を築けるかどうかで、
生産性は大きく上がったり、
逆に下がったりします。

良くも悪くも、
投資をして一番レバレッジが高いのが、
「グループ人材」
と言ってもよいでしょう。

 

そう考えると、
ホールディングス化で求められる
重要なミッションは、

—————————-
グループ人材を
グループ内最適配分ができるかどうか
—————————-

という点に行きつくと考えます。

 

ただ、ここからが問題です。
実行していくには、
とても難しいテーマだと思います。

最適配分とは?

グループ人材の
グループ内最適配分を考える前に、
ここでいうところの
「最適配分」
とは、いったいどういう状態を意味するのかを
明確にしておきたいと思います。

言葉を曖昧にしたうえで議論をすると
議論自体も曖昧になりますので。

 

たとえば、
グループ内に事業子会社A・B・C
あったとします。

 

現状の各社の利益と人数が、

—————————–
A社:30百万円(2人)
B社:70百万円(8人)
C社:100百万円(10人)
合計:200百万円(20人)
—————————–

だとします。

 

この状態から、
グループ人材を配分し直すことで、

————————————————
A社:100百万円(5人)・・・ +70百万円(+3人)
B社:60百万円(7人)・・・▲10百万円(▲1人)
C社:90百万円(8人)・・・▲10百万円(▲2人)
合計:250百万円(20人)・・・+50百万円(±0人)
————————————————

に変えられるとします。

 

このような状態に変えることができるのであれば、
「グループ人材を最適配分が実現できた」
ということになるのだと思います。

仮に、
「生産性=1人当たり利益」
と定義したとすると、
上記の例では、
グループ全体の生産性が、
「10百万円/人⇒12.5百万円/人」
に向上したことになります。

グループ全体最適vs個社最適

それでは、
ホールディングス化することによって、
これまでできていなかったのに、
急に「グループ人材の最適配分」が
可能になるものなのでしょうか?

ここが今回の一番のテーマです。

 

おそらく理屈だけで考えると、
ホールディングカンパニーが存在することで、
グループ全体最適の視点を持つことができるようになり、
グループ人材の最適配分も可能になる、
ということなのだと思います。

これまで曖昧になっていた
「グループ経営資源の最適配分」
という仕事・視点が、正式に
「ホールディングカンパニーのミッション」
になりますので。

 

ただ、理屈で考えるほど
簡単なことではないでしょう。

 

グループ全体最適を考えるにあたっては、
グループ全体のことを隅々まで
理解できているのがベストですが、
ホールディングカンパニーが
グループ全体の隅々まで
理解できている状況ばかりではないと思います。

そのようななかで、
グループ経営資源の
最適配分を実現していくのは、
ハードルの高いミッションです。

 

さらに、たとえ、
「グループ全体最適だから!」
と言っても、
なかなか各子会社側ではピンと来ないものです。

たとえば、上記の例でいうと、
利益が上がるA社は満足すると思いますが、
逆にB社やC社は人材を失い、
利益も下がってしまうため、
なかなか納得ができる状況ではないはずです。

ただ、各子会社ごとに
設定している予算や目標がありますので、
このような思いが出ること自体は仕方ありません。

 

つまり、
グループ企業といえでも

—————————
グループの各子会社は
「個社最適」で行動していく
—————————

ということです。

 

このような「個社最適」で行動する子会社に
「グループ全体最適」の視点を訴えても、
なかなか響いてはくれない可能性が高い、
というのが現実ではないでしょうか?

ホールディングカンパニーに求められることは?

ここから先の議論は、
各会社の置かれている状況により、
様々だとは思いますので、
ホールディングカンパニーの対応も
様々だと思います。

 

ただ、ホールディングカンパニーが
今回のテーマに取り組んでいくためには、

—————————–
「グループ全体最適=他人事」という意識を、
「グループ全体最適=自分事」という意識に
書き換えてあげること
—————————–

が重要なのではないかと思っています。

 

そして、そのためには、

———————————–
●グループ全体の状況を見える化する
●グループ全体が良くなれば
 各子会社、各グループ社員にとっても
 メリットがあるような仕組みを整備・運用する
———————————–

といったことが求められると思います。

 

やはり、
自分の見えない世界のことは、
理解することができないものです。

各子会社の社員からすると、
他の子会社やグループ全体のことは、
自分の見えない世界(=他人事)になります。

必然的に「グループ全体最適」の視点は、
理解ができないことになります。

 

そのため、
グループ全体のことを理解してもらおうと思えば、
ホールディングカンパニーが、
積極的に、かつ意識的に、
グループ全体のことを「見える化」してあげることが
最低限必要だと思います。

 

さらに、そのうえで、
「グループ全体最適=自分事」
になるような「仕組み」づくりも欠かせません。

グループ最適を実現できれば、
仮に上記のようなB社やC社であっても、
よりメリットがあるような評価制度を整備する、
といったような仕組み・環境づくりです。

 

簡単な取り組みではないと思いますが、

—————————————
簡単ではないからこそ、
ホールディングカンパニーの存在意義がある
—————————————

という思いで、
「グループ人材の最適配分」
に取り組んでいただければと思います。

★★★★★★★
「グループ全体最適=他人事」
になっていませんか?
★★★★★★★

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