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【事例】わらべや日洋株式会社

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※平成28年4月13日にわらべや日洋株式会社より適時開示されている「会社分割による持株会社体制への移行、当該移行に伴う分割契約の締結ならびに定款変更(商号および事業目的)に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行

開示概要

持株会社体制へ移行すること、当該移行のため、
平成 28 年9月1日(予 定)を効力発生日として、
営んでいる事業のうち「子会社を管理する事業」以外の一切の事業
に関して有する権利義務を、会社分割により、
わらべや関西株式会社に承継させることを決定。

●吸収分割の同社は、平成28年9月1日付で
わらべや日洋ホールディングス株式会社に商号変更し、
事業目的を持株会社体制移行後の事業に合わせて変更する予定。

●吸収分割後、同社の収入は関係会社からの
・配当金収入
・不動産賃貸料収入
・経営指導料収入
等が中心となる予定である。

持株会社体制移行・吸収分割の目的

●グループ理念「私たちは『安全・安心』と
『価値ある商品・サービスの提供』を通じて、
お客様の健康で豊かな食生活に貢献します」を掲げ、
食材の開発・調達から食品製造、配送・物流に至る
一貫システムを構築してきた。

●食品の安全性や価値ある商品に対する
お客様ニーズに対応するために、
①各事業子会社の意思決定の迅速化と機動的な事業運営の推進
②経営資源の最適配分
③ガバナンス強化
などを目的として、持株会社体制に移行する。

●地域ごとに分かれている製造体制を一本化して
①管理体制の集約・強化
②各社で保有するノウハウ共有
③専門人材の最適配置
などの効率化を行うため、
事業部門および製造子会社3社を1社に統合する。

●具体的には、
子会社である「わらべや関西」を吸収合併存続会社
「わらべや東海」「わらべや北海道」を
それぞれ吸収合併消滅会社とする吸収合併を行う予定。

純粋持株会社体制への移行方法

わらべや日洋を吸収分割会社とし、
わらべや関西を吸収分割承継会社とする会社分割

事業再編のスケジュール

①本吸収分割契約承認取締役会決議日(わらべや日洋・わらべや関西):平成28年4月13日
②本吸収分割契約の締結日:平成28年4月13日
③本吸収分割契約承認株主総会(わらべや関西):平成28年5月20日(予定)
④本吸収分割契約承認株主総会(わらべや日洋):平成28年5月26日(予定)
⑤本吸収分割の効力発生日:平成28年9月1日(予定)

Review

今回は、
「わらべや日洋」の事例です。

私はあまり同社のことを知りませんでしたが、
この機会にいろいろ確認をしてみますと、
興味深い会社だな、と率直に思いましたので、
今回取り上げさせていただきます。

 

同社は基本的に
「B to B」型のビジネスだと思いますので、
一般的には少し目立たない存在かもしれませんが、
事業内容を確認してみると、
かなり身近な存在の会社であることを感じました。

 

まず、グループ規模ですが、
平成27年2月期の有価証券報告書及び
直近の平成28年2月期の決算短信によると、

———————————–
・連結売上高:約2,000億円
・連結経常利益:約30億円
・グループ従業員数:約2,000人(他パート・アルバイト等:約11,000人)
・連結子会社10社
———————————–

と、かなり大きなグループ会社です。

 

このような大規模な会社の「メイン事業」は何かというと、
●米飯群、調理パン群、惣菜群などの調理済食品の製造、販売
●食品用材料の仕入、加工、販売
になります。

ただ、この事業規模に比して、
私たちの目に同社名が触れる機会は
多くないように思います。

 

それでは、
同社の売上先はどこになるかというと、
その70%以上が「セブンイレブン」とのことです。

つまり、普段私たちが手にする、
コンビニ(セブンイレブン)のお弁当等を
作っている会社ということです。

どうでしょうか?
同社のことが一気に身近に
感じることができるのではないでしょうか?

 

一般的には、
直接消費者に接する
「BtoC」型のビジネスの方が目立つものですが、
この裏には同社のような会社が
そのサプライチェーンを支えていることになります。

私は性格上、
目立たず裏で支える役割が好きということもあり、
同社の事業内容をもう少し知りたいと思い、
同社のホームページも確認してみました。

 

すると、
・商品開発力
・生産技術力
・生産能力
・品質・衛生管理力
・配送品質力
・環境調和力
という強みについて細かく説明がありました。
結構わかりやすいです。

ホームページの情報だけからでも、
同社がグループが一体となり、
食材の開発・調達から食品製造、配送・物流に至る
一貫システムを構築していることが伝わってきます。

 

そして、
グループ組織デザインとしては、
・機能別
・地域別
・製造種類別
といった要素をもとに、
グループ内が分社化している印象です。

 

ここまでが同社の基礎情報ということで、
そのうえで今回のホールディング化について、
最後に確認をしてみたいと思います。

 

今回のホールディングス化の目的として、

—————————————
①各事業子会社の意思決定の迅速化と機動的な事業運営の推進
②経営資源の最適配分
③ガバナンスの強化
—————————————

の3つが掲げられています。

 

また、ホールディングス化と同時に、

———————————————–
地域ごとに分かれている製造体制を一本化して
①管理体制の集約・強化(=シェアードサービス)
②各社で保有するノウハウの共有
③専門人材の最適配置
———————————————–

ということも開示されています。

 

この内容を考えると、
私の勝手な推測ではありますが、
ホールディングス化が先に検討されたというよりは、
管理体制の集約・強化やグループノウハウ共有、
といったグループ経営資源の適正配分や
より良いグループ経営管理体制について検討している過程で、
ホールディングス化という選択肢に行きついたのではないか、
という気がしました。

 

企業の成長とともに、
また時代の変化とともに、
最適なグループ組織デザインは
変わってくるものです。

企業拡大期において、
エリア別に徐々に拡大していくことはよくあることですが、
いったんある程度エリア戦略が落ち着くと、
今度は各エリアをどのように統括していくのか、
またどのように横串管理をしてくのか、
という次の課題が出てくるものです。

このような企業ステージごとに、
グループ組織デザインは変わるということです。

 

おそらく、
従来は地域別でグループ化していくケースは
多かったのかもしれませんが、
今の時代は、その次のステージのグループ経営が
より重要になってくる時代だと思います。

広がったグループ組織を
どのように横串管理していき、
グループノウハウを共有し、
グループ資源を活用していくのか。

グループ経営の「仕組み」構築
重要になってくるということです。

 

ちなみに、
同社の過去10年くらいの業績も
確認してみました。

グループ売上は順調に伸びています。
一方で、グループ利益については
それほど伸びていませんでした。

 

このような背景のなかで、
拡大するステージの次として、
筋肉質な組織、生産性の高い組織を
目指していく時期だという思いが強いのではないでしょうか。

その延長線上としての
「ホールディングス化」
「グループ組織デザインの変更」
ということなのだと感じさせられた事例でした。

★★★★★★★
今のグループ組織デザインは
最適になっていますか?
★★★★★★★

 

参考記事

●Vol.20「地域別に会社を分ける場合

●Vol.103「地域別グループ会社と連結決算管理

●Vol.38「ホールディングスの横串力とモノサシ作り

 

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