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【事例】株式会社メディアドゥ

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※平成29年4月26日に株式会社メディアドゥより適時開示されている「会社分割による持株会社体制への移行及び定款一部変更(商号及び事業目的等の変更)に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行

開示概要

●平成29年4月26日開催の取締役会において、
平成29年9月1日をもって持株会社体制へ移行するべく
会社分割(新設分割)を実施し、
同日付で商号を「株式会社メディアドゥホールディングス」に変更し、
事業目的を持株会社体制に相応しい内容に見直す旨を決議。

●持株会社体制への移行は、
平成29年5月30日開催予定の定時株主総会において、
本新設分割に関する議案が承認されることを条件として実施する予定。

持株会社体制移行の背景

●「著作物のデジタル流通」を事業コンセプトとして、
「ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人に届ける」ことで
著作物の健全な創造サイクルを実現することを目指している。

●電子書籍の領域においては、
数多くの出版社から預かった電子書籍コンテンツを電子書店に提供、 配信しており、
急成長している国内電子書籍市場の一翼を担うとともに、
海外に向けて日本の優れたコンテンツを配信するべく事業展開を推進している。

●国内電子書籍市場は
2015年度には約1,826 億円(含む電子雑誌)となり、
2020年度においては3,480億円に拡大するものと予測されている。

●世界の電子書籍市場は
2014年の約110億ドル(約1.21兆円/$1=110 円換算)から
2018年には約190 億ドル(約2.09兆円)への成長(出所:PwC)、
紙と電子を合わせたマンガ市場においても
2014年の約3,541百万ドル(約3,895億円/$1=110 円換算)から
2020年には約4,695 百万ドル(約4,695億円)に成長すると予想されている(出所:Roland Berger)。

●但し、海賊版やライセンス、翻訳等の問題から、
国内コンテンツの電子書籍配信による世界市場での普及は、
現状、発展途上にあるものと思われる。

●このような市場環境に対応すべく、
迅速・果断な意思決定による創造的事業展開と、
持続的成長を促す事業理念に基づいた事業戦略を推進するため、
持株会社体制に移行し、中長期的な企業価値向上の実現を目指す。

持株会社体制移行の目的

●今後の成長戦略を支える経営体制として
持株会社制に移行する目的は次のとおりである。

 

①グループ戦略機能の強化
グループの全体戦略と各グループ会社の事業領域における
業務執行の意思決定を分離することにより、
グループ全体の経営効率の向上と意思決定スピードの向上を実現させる。

また、M&A含む新規事業展開
次世代テクノロジーの研究開発のための機能
グループ内経営資源の配分を最適化するための機能を強化することで、
統合的なグループ戦略の実現を推進していく。

 

②グループ各社における創造的事業展開の推進
グループ各社に権限と責任を委譲することにより、
意思決定の迅速化を図るとともに、
市場環境にマッチした事業戦略やチャレンジを実行する組織体制を構築し、
現場からの新しい「価値創造」 によって、
グループ全体の成長を牽引していく。

 

③優秀な人材の確保・育成
グループの成長においては優秀な人材の確保・育成は重要な課題である。
持株会社化によって経営責任の明確になったグループ各社においては、
専門的スキルを持った人材の確保とともに、
経営推進のためのリーダー人材の確保・育成を推進していく。

グループ各社の経営実践の中から、
今後の成長戦略を実現するために必要な次世代リーダーを、
グループ全体として確保・育成していきたいと考えている。

 

●持株会社体制への移行方法は、新設分割により、
現在同社が展開する電子書籍事業等の全てを担う事業会社を新設し、
当該事業を当該新設会社へ分割承継する。

●この結果、同社はグループ各社の持株会社として、
グループ戦略機能及び各グループ会社の管理機能を担い、
引き続き上場企業として企業価値の最大化を目指す。

持株会社体制への移行内容

●同社を分割会社とし、新設分割設立会社1社を承継会社とする
分社型新設分割を予定している。

●現行の同社の営む電子書籍事業、音楽・映像事業、
ゲーム事業及び広告・広告代理事業並びにこれらの関連事業を、
本新設分割により設立する「株式会社メディアドゥ」に承継させる。

●同社は、分割期日に持株会社体制へ移行し、
「株式会社メディアドゥホールディングス」へ商号変更予定。

新設分割の日程

①定時株主総会基準日:平成29年2月28日
②新設分割計画承認取締役会:平成29年4月26日
③新設分割計画承認定時株主総会:平成29年5月30日(予定)
④新設分割効力発生日:平成29年9月1日(予定)

 

Review

今回は「メディアドゥ」の事例です。

同社は、平成28年2月期の時点で、
関連会社を有しているものの、重要性が乏しいということで、
連結決算は開示しておりませんでした。

 

ただ、ここ最近では、
M&Aを加速させている印象です。

その流れの中での
今回のホールディングス化ということなので、
理解がしやすい流れではないでしょうか。

 

同社のホームページで、
最近のグループ経営関連のIRを確認してみると、

————————————————–
①2016年10月18日:株式会社フライヤーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
②2016年12月20日:メディアドゥ、徳島での合弁会社(子会社)設立のお知らせ
③2017年01月24日:メディアドゥ、株式会社マンガ新聞の子会社化のお知らせ
④2017年02月22日:当社子会社による事業譲受に関するお知らせ
⑤2017年02月28日:株式会社出版デジタル機構の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
⑥2017年04月06日:Lunascape株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
⑦2017年05月17日:IRIグループとの資本業務提携に関するお知らせ
————————————————–

 

ちなみに上記についての投資額を見てみると、

①408百万円
②23百万円
③記載なし
④800百万円
⑤7,940百万円
⑥379百万円
⑦1,070百万円

ざっと合計しても100億円を超える金額です!

 

スピード感といい、規模感といい、
結構すごいですね…。
これまで重要性の乏しい関連会社を
1社だけ保有していた会社とは思えない動きです。

実務現場の大変さが目に浮かびます…。
間違いなく「連結決算」が大変な状況になっていそうです。

 

また、当然、上記の投資には
資金が必要となるということで、
資金調達関連の開示も見ることが出来ました。

・2017年03月29日:資金の借入に関するお知らせ(108億円の融資調達

この調達額は、上記の投資額に近い額ですね。

 

ちなみに、同社の平成29年2月期の業績は、
・売上高:155億円
・営業利益:6.5億円
と発表されています。

現状の会社規模からすると、
上記の一連の投資は、かなり大きな投資だったことが見受けられます。

 

同社の過去業績推移も確認してみましたが、
売上高は拡大している一方で、
利益の方は伸び悩んでいる印象でした。

このような状況を打破するためにも、
今回の大きなM&A,グループ組織再編、ホールディングス化、
といった動きがあったのかもしれません。

 

成長のためにリスクをとって、
今回の経営判断が下されたと思います。

この決断が後々評価されていくためには、
やはり今後のグループマネジメントの体制が
きちんと整備され、運用されるかにかかっている気がします。

 

今回のホールディングス化の目的に記載されていた

——————————
①グループ戦略機能の強化
②グループ各社における創造的事業展開の推進
③優秀な人材の確保・育成
——————————

が、まさに不可欠な状況だと思われます。

 

今回の開示ではじめて同社の動きを知りましたが、
あまりの「攻めのグループ経営」に少しびっくりするとともに、
今後の展開をとても興味深く感じてしまいました。

どうなっていくのでしょうか?
目が離せません。

 

★★★★★★★
攻めのグループ経営と
ホールディングス化
★★★★★★★

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