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【事例】株式会社ジョイフル

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※平成27年10月12日に株式会社ジョイフルより適時開示されている「子会社の設立及び会社分割(簡易分割・略式分割)による持株会社体制への移行並びに子会社との吸収分割契約書締結のお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

子会社設立
会社分割(簡易分割・略式分割)による持株会社体制への移行
子会社との吸収分割契約書締結

開示概要

●平成27年3月14日に、
直営店舗の事業部門を分離し、
子会社に承継させる「会社分割」を公表している。

●上記の計画にもとづき、
平成27年10月12日開催の取締役会で、
平成27年11月2日(予定)に100%出資子会社を設立し、
平成28年1月1日(予定)を効力発生日とする
吸収分割契約を締結することを決議。

持株会社化の背景

●今後のわが国経済は激化する国際競争の中で、
少子高齢化社会の急速な進行とそれに伴う国内人口の減少という
歴史的な構造変化に対応していかなくてはいけない。

●この構造変化は、
同社へ「直接的な影響」をもたらすことが想定され、
あわせて変化の激しい経済情勢から、
予断を許さない経営環境が続くことが予想される。

持株会社化の目的

●そこで、同社が今後も安定的な成長を
継続していくことを目的に、
・経営戦略機能
・各地域に密着した直営店舗の事業執行機能
の2つの機能を分離することで
意思決定の迅速化を図り、
経営人材の育成機動的で且つ柔軟な事業運営を実現する。

●あわせて平成28年10月より適用される
社会保障に関する法改正に備える観点から、
子会社を設立し、会社分割により
持株会社体制へ移行する方針を決定した。

持株会社体制への移行の要旨

●移行方式
同社を吸収分割存続会社とし、
子会社を吸収分割承継会社とする吸収分割。

●会社分割の日程(予定)
①子会社設立の取締役会決議日:平成27年10月12日
②吸収分割契約書の取締役会決議日:平成27年10月12日
③子会社の設立日:平成27年11月2日【予定】
④吸収分割契約書の締結日:平成27年11月2日【予定】
⑤会社分割の効力発生日:平成28年1月1日【予定】

新設会社の概要

●地域ごとに11社の子会社を設立し、
①ファミリーレストラン「ジョイフル」店舗の運営
②上記に係る付帯業務
の分割を実施する。

●11社の子会社に「分割する事業」の売上高
・株式会社ジョイフル東関東・東北:売上高 2,337百万円
・株式会社ジョイフル西関東・北陸:売上高 3,181百万円
・株式会社ジョイフル東海:売上高 4,577百万円
・株式会社ジョイフル近畿:売上高 4,437百万円
・株式会社ジョイフル中国:売上高 6,465百万円
・株式会社ジョイフル四国:売上高 3,929百万円
・株式会社ジョイフル北九州:売上高 5,529百万円
・株式会社ジョイフル中九州:売上高 6,709百万円
・株式会社ジョイフル東九州:売上高 5,253百万円
・株式会社ジョイフル西九州:売上高 7,944百万円
・株式会社ジョイフル南九州:売上高 7,186百万円

Review

今回の事例は、
いかがでしたでしょうか?

今回の同社の開示を機に、
同社の過去のIR資料を確認したのですが、
とても特徴のある事例だと思いました。

どこが特徴的かというと、
①過去に地域子会社を親会社へ吸収合併している
②今回は逆に地域ごとに子会社を設立する
③それも地域子会社を一気に11社増やす
といった点です。

時代とともに
グループ経営のスタイルが変わっていることが
とてもわかります。

今回はホールディングス化の事例であり、
・経営戦略機能
・各地域に密着した直営店舗の事業執行機能
の2つの機能を分けることを
目的としています。

 

多くのグループ経営会社で
ホールディングス化が進んでいる背景には、
親会社に集中している権限を
子会社(現場)に分権化することで、
機動性の高い経営を目指したい意図があります。

経営環境の変化が著しい現在、
現場主導で、迅速に決定し、
動いていくことが求められるからです。

 

一方で、
同社においても過去には、
地域子会社を親会社へ吸収合併し、
「分権化⇒集権化」
といった逆の流れがありました。

10年以上前のことでしたので、
会社の置かれている状況や
外部環境も大きく変わっているため、
同列で比較検討することは難しいです。

ただ、他社の事例でも、
行き過ぎた分権化から
集権化に移行する例も見かけます。
(ホールディングスの廃止、子会社の吸収合併、等)

結局、
分権化と集権化のどちらか一方が良い、
というものではなく、
それぞれにメリット・デメリットがあり、
上手く使い分ける必要があるということだと思います。

とはいっても、
この両者の使い分けは簡単ではなく、
どうしても、その時々で、
分権化と集権化のどちらかに
寄ってしまうものです。

したがって、
分権化が進み過ぎると、
集権化への揺り戻しの流れが浮上し、
逆に集権化が進み過ぎると、
分権化の波が押し寄せてくる、
といった感じを繰り返しながらバランスをとっていく、
というのが実態のように感じます。

 

今回の同社の例では、
おそらく10年前くらいに
親会社に集権化したスタイルが、
今の時代では、
逆に弊害が目立つようになったことが
背景にあるのではないかと推測します。

ちなみに同社の過去の業績を
この機に確認してみましたが、
グループ売上高はそれほど変わっていませんでしたが、
グループ利益水準は概ね半減しているような印象でした。

環境変化の激しいなか、
10年間利益の出る状況を継続していること自体は、
とても素晴らしいことだと思います。

一方で、
この10年間の利益水準については、
おそらく同社も納得したものでは無いのだと思います。

このようななかで、
グループ経営改革の1つとして、
現場へ分権化しつつ、
重要なところは集権化して取り組む、
ホールディングス移行を決断されたのだと思います。

ホールディングス化によって、
今後の業績にどのような影響があるのか、
私も同社の今後に注視していきたいと思います。

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