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【事例】株式会社 中央経済社

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※平成27年10月20日に株式会社中央経済社より適時開示されている「会社分割による持株会社体制への移行及び子会社(分割準備会社)の設立に関するお知らせ 」をもとに情報を整理しています。

内容

会社分割による持株会社体制への移行
子会社(分割準備会社)の設立

開示概要

●10月20日の取締役会において、
平成28年1月1日(予定)を効力発生日として、
吸収分割の方式により持株会社体制へ移行することを決議。

●同時、平成27年11月上旬(予定)に
分割準備会社として100%出資の子会社である
・株式会社中央経済社分割準備会社
・株式会社中央経済グループパブリッシング分割準備会社
の設立を決議。

●編集関連事業等及び販売・校正・製作関連事業等は、
分割準備会社2社にそれぞれ承継させることを予定。

●持株会社体制への移行を条件として、
平成28年1月1日付で
「株式会社中央経済社ホールディングス」(予定)に商号を変更し、
引き続き持株会社として上場を維持する予定。

●会社分割による持株会社体制への移行については、
平成27年12月中旬に開催予定の定時株主総会決議による承認
及び必要に応じた所管官公庁の許認可等が得られることを条件に実施する。

持株会社化の背景

●わが国の出版市場は、長期的な縮小傾向が継続しており、
グループの出版領域についても、
近年大きな制度改正がないことや
読書習慣の減退、購買意欲の低下など、
引き続き厳しい環境が続くものと考えている。

●一方で、
・「企業の経営問題とその対処」
・「時代によって移り変わる企業経営の実務」
の2つを主要テーマとするグループにとって、
変化が絶え間なく起こる昨今の経済環境は、
求められる社会的使命をますます果たす好機とも捉えている。

●このような環境下において、
持続的成長を実現し、企業価値の最大化を図るためには、
機動的かつ柔軟な経営判断を可能にする
グループ運営体制を構築することが望ましいと判断し、
持株会社体制へ移行する方針を決定。

持株会社化の目的

●持株会社体制に移行することによって、
以下のようなメリットが得られると考えている。

(1) グループ戦略の構築・遂行
持株会社が、有力企業との提携や
M&A なども含めたグループ戦略機能を担い、
経営資源を最適配分することによって、
戦略遂行度の向上を図る。

(2) 管理機能集約による効率化
情報システムの共通化など、
各事業会社の管理機能を集約することによって
効率化を図る。

(3) 個別事業の成長
各事業会社が、
個別の事業活動へ注力できる体制とすることで、
その成長を加速させる。

(4) ガバナンス強化
各事業会社の責任及び権限を明確にするとともに、
持株会社が業務執行に対する監督機能を担い、
ガバナンスを強化する。

(5) 人材育成
今後の成長を支える人材を各事業会社の経営幹部として配し、
経営人材として育成する。

持株会社体制への移行の要旨

●吸収分割方式
株式会社中央経済社を吸収分割会社とする
会社分割(吸収分割)により、以下の事業を承継。
□編集関連事業等
⇒株式会社中央経済社分割準備会社へ
□販売・校正・製作関連事業等
⇒株式会社中央経済グループパブリッシング分割準備会社へ

●会社分割の日程(予定)
①分割準備会社2社設立承認取締役会:平成27年10月20日
②分割準備会社2社の設立:平成27年11月上旬(予定)
③吸収分割契約承認取締役会:平成27年11月中旬(予定)
④吸収分割契約の締結:平成27年11月中旬(予定)
⑤吸収分割契約承認定時株主総会:平成27年12月中旬(予定)
⑥吸収分割の効力発生日:平成 28年1月1日(予定)

新設会社の概要

<株式会社中央経済社分割準備会社>
●事業内容:編集関連事業等販売
●資本金:100百万円
●設立年月日:平成 27年11月上旬(予定)
●決算期:9月30日
●大株主及び持株比率:㈱中央経済社 100.00%

<株式会社中央経済グループパブリッシング分割準備会社>
●事業内容:販売・校正・製作関連事業等
●資本金:100百万円
●設立年月日:平成 27年11月上旬(予定)
●決算期:9月30日
●大株主及び持株比率:㈱中央経済社 100.00%

Review

今回のホールディングス化の事例は、
中央経済社です。

中央経済社といえば、
私の専門領域である「会計」「経営」分野では有名で、
これまで私自身も何冊も投資をしてきました。

ただ、出版社としては意識をしていても、
企業体としてはそれほど意識する機会は
あまりありませんでした。

そのため、この機会に
同社の有価証券報告書も確認してみました。

 

まず直近の業績推移を見てみると、
赤字と言うわけではありませんが、
黒字幅が年々減少し、
最近は少し苦戦をしている様子が見受けられました。

また、「対処すべき課題」としては、
以下の3つが挙げられていました。

—————————————————————-
①新しい読者の創造
企業社会が大きく変貌するなかで、
求められる経営実務、知識は何かについて不断に研究を続け、
必要とされるコンテンツを開発してまいります。

②読者ニーズへの対応
近年読書スタイルや読書に費やす時間は大きく変化しており、
どのような構成・誌面が読者ニーズを満たすのか、
編集力の更なる向上を図ってまいります。

③有限な経営資源の効率的な活用
出版業界の返品問題に対し正面から取り組み、
解決策を多方面から検討し、無駄を極力排しながら、
必要な本を読者に確実に届ける
効率的な出版ビジネスモデルを追求してまいります。

(平成26年9月期 同社の有価証券報告書より)
—————————————————————-

インターネットが普及した現在、
出版業界も過去の延長線上のビジネススタイルでは、
継続が難しくなると予想されます。

このような環境の中で、
上記の課題に対応していくために、
同社がホールディングス化を決断した目的は、
以下の通りです。

<ホールディングス化の目的>
(1) グループ戦略の構築・遂行
(2) 管理機能集約による効率化
(3) 個別事業の成長
(4) ガバナンス強化
(5) 人材育成

 

歴史がある会社ですが、
事業環境の変化に対応していくために、
グループ経営の仕組みを変えていく
意志表示だと感じています。

ちなみに、
同社の有価証券報告書の
上記の「対処すべき課題」の最後には、

「当社グループがこれまで培ってきたブランドとノウハウを活かし、
これらの試みを更に積極的に行い、
『所有する価値ある専門書づくり』『社会の変化に敏感に対応した本づくり』を
1冊1冊丁寧に行いながら今後も対応してまいります。」

という一文(メッセージ)がありました。

私も一読者として
お世話になっている中央経済社ですが、
是非、ホールディングス化によって
より魅力的な企業グループを
目指していっていただきたいと思います。

そして、
「所有する価値ある専門書」
これからも提供していただきたいと思っています。

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