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今週の「減らす」決断(2015年8月17日~8月21日)

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平成27年8月17日~8月21日の適時開示情報をもとに、
今週決断された「子会社を減らす」事例をご紹介いたします。

はじめに

今週は5件の事例をご紹介させていただきます。
「子会社を減らす」という決断は勇気がいるものですが、
経営者として重要な仕事の1つです。

是非、各事例における経営者の決断から
学べる部分を学ばせていただきましょう。

事例1)株式会社光彩工芸

●平成27年8月20日開催の取締役会において、
連結子会社であるKOSAI VIETNAM CO.,LTD.を解散し、
清算手続きに入ることを決議。

●同社グループは、事業環境の変化に対応するため、
当期を事業構造改革の年と定め
新たに構造改革プロジェクト「SRP」を立ち上げている。

●「SRP」を通じて、
・収益構造の分析
・重点強化分野の選定
・不採算事業の見直し
の実施を通じて業の選択・再構築」を推し進めている。

●KOSAI VIETNAM CO.,LTD.は、平成23年10月
一般的な普及加工技術であるキャスト(鋳造)加工による
ファッションジュエリー・ブライダルジュエリーの生産を目的として設立。

●以下の影響で、業績不振が続いている。
円安基調でのコスト上昇
・ファッションジュエリーの受注単価下落

●同社グループは、「SRP」の一環として、
同社の強みである設備加工技術(圧延・プレス・ 切削等)による
高付加価値商品の重点拡販を推進するとともに、
グループ赤字の原因である一般加工技術による
生産・販売からの撤退を行うことを決定。

●それに伴いKOSAI VIETNAM CO.,LTD. の解散及び清算することにした。

事例2)佐渡汽船株式会社

●平成27年8月20日開催の取締役会において、
連結子会社である株式会社海鮮横丁の解散および清算を決議。

●株式会社海鮮横丁は、同社両津港ターミナル近隣に
食事処「海鮮横丁」と食道楽「海賊」を開店し、
食堂、喫茶の経営、食品加工品の販売等を実施してきた。

●しかしながら、以下の理由により業績悪化傾向が顕著となっておりました。
佐渡観光の需要低迷による利用客の減少
食材費高騰

●今後も業績回復は困難と判断されることから、解散および清算を決議。

事例3)株式会社ロジコム

●平成27年8月17日開催の取締役会において、
連結子会社である SJ AlmadenⅡ, Inc.を解散することを決議。

●平成27年6月30日に開示した
「米国カリフォルニア州所在の土地建物の譲渡」に伴い、
本件不動産の所有及び賃貸を事業活動としていた SJ AlmadenⅡ, Inc.は、
その事業活動が終了したため解散。

事例4)アトミクス株式会社

●平成27年8月17日開催の取締役会において、
子会社である阿童木(無錫)塗料有限公司の解散および清算の決議。

●阿童木(無錫)塗料有限公司は、
平成15年10月に中華人民共和国江蘇省に設立し、
中国国内市場に向けて床用塗料と道路用塗料を製造販売してきた。

●主に、日系企業工場の床改修を中心に販売活動を行ってきた。

●しかし、以下の理由により長年にわたり業績不振が続いてきた。
相次ぐ日系企業の撤退等による販売網の縮小
現地ローカル企業との価格競争

●原価低減、販売網の見直しなど、
当子会社および同社で各種改善に取り組んできた。

●但し、今後も人件費高騰による収益圧迫や法改正等により
中国国内における事業環境は一層厳しい状況が見込まれ
抜本的な損益改善の目処が立たない。

事業継続が困難と判断し、当該子会社を解散し清算することを決議。

事例5)株式会社フェリシモ

●平成27年8月20日開催の取締役会において、
香港子会社である Felissimo International Limited(FIL社)を、
平成27年8月20日付で解散・清算することを決議。

●100%出資子会社であるFIL社は、
同社のグローバルコレクション事業をサポートする役割を担っていた。

平成24年1月から営業活動を停止した状態が続いているため、
解散・清算することといたしました。

レビュー

今週の事例は、
いかがでしたでしょうか?
少しだけレビューをしてみたいと思います。

 

事例1)では、
グループの事業内容を改めて分析をしたうえで、
不採算事業からは撤退し、
自社の強みに再度特化することが、
背景にあったようです。

 

事例2)では、
もともと中核事業の海運・観光事業の
周辺領域をカバーする事業として、
売店・飲食事業を開始したものと思われます。

ただ、中核事業自体の伸び悩みにより、
周辺領域の需要確保まで
結びつかなくなってきた背景があったように
見受けられます。

まずは、中核事業自体の集中する
意志の表れかもしれません。

 

事例3)の子会社については、
もともと特定の目的をもって設立された経緯のようです。

当初の目的を完結したことにより、
子会社自体も自然に解散という方向になった
事例といえそうです。

 

事例4)については、
中国子会社の事例です。

中国という巨大マーケットは、
魅力的である一方で、
成功できている会社は多くないようです。

当事例では、
・日系企業の撤退、
・人件費の向上
・価格競争
・法改正
といった撤退要因を挙げられています。

中国特有のカントリーリスクとも
上手く付き合っていけるかどうか。
ハイリスク・ハイリターンのマーケット
言ってよいかもしれません。

 

事例5)は香港子会社の事例です。
特徴的なのは、平成24年1月から
営業停止状態だったとの内容です。

早期に撤退の決断が
できていればよかったのかもしれませんが、
決断までには3年半かかっています。

それだけ、
「減らす」「止める」「捨てる」
といった決断が難しいものだということが伺えます。

参考記事

Vol.101 グループ企業を「減らす」視点も忘れずに

 

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