「適格」「非適格」の2大論点

前回に引き続き、
グループ組織再編における、
税法の知識としての「適格」「非適格」について、
経営者にも知っておいていただきたい基礎知識を
お伝えさせていただきます。

まず前回のポイントの復習です。

—————————————-
●組織再編の場合には「適格」「非適格」がある
●どちらになるかは選択制ではなく、要件を満たすかどうかで自動的に決まる
「適格の場合=簿価」
「非適格の場合=時価」
—————————————-

 

組織再編をする際には、
それが「適格」に該当するのか、
それとも「非適格」なのか、を
検討する必要があるということです。

組織再編の中でよく活用される
・合併(≒くっつける)
・会社分割(≒切り離す)
を例にとると、
・適格合併
・非適格合併
・適格分割
・非適格分割
といった形の用語の使われ方になります。

 

合併にしても分割にしても、
「適格」「非適格」のどちらになるかで、
その後の財務状況に与える影響が異なるため、
経営者としても無視はできないポイントです。

そこで、今回は、
経営者としては知っておきたい
財務上の影響の違いにおける2つの論点について
お伝えできればと思っております。

 

その2つの論点とは、
「譲渡損益」の取り扱いの違い
「繰越欠損金」の取り扱いの違い
です。

譲渡損益

子会社Aと子会社Bをくっつける。
子会社Cを親会社にくっつける。

このような「くっつけて1つにする」ための
組織再編手法が「合併」です。
(詳細は「【用語】合併」を参照)

 

このような「合併」の場合、
財務上の影響はどうなるのでしょうか?

 

「グループ内の会社同士だし、
資産や負債、売上や費用といったものが、
1つに合算されるだけなのでは?」

このように思われるのが自然かもしれません。

 

基本的には、
この考え方で問題ありません。

但し、1つポイントがあります。

 

資産や負債をくっつけるときに、
「適格合併」か「非適格合併」かの違いで、

———————————-
適格合併の場合>
吸収される側の会社の資産・負債は
帳簿価額でそのままくっつける。

非適格合併の場合>
吸収される側の会社の資産・負債は
時価に直してくっつける。
———————————-

という違いが生じることです。
この点は、前回お伝えしました。

 

ただ、これだけだと
少しピンと来ない面があると思います。

そこで今回は、
財務的な影響を損益の視点で
もう少し考えてみたいと思いますが、
損益的な影響の違いについて、
イメージは湧きますでしょうか?

 

適格合併の方は、
これまでどおりの帳簿価額をくっつけるだけなので、
イメージと基本的に違いは出ないと思います。

一方で、非適格合併の方は、
時価に直すというステップがあるため、
ここで「時価と帳簿価額の差額」が発生することになります。

 

たとえば、
合併して引き継ぐ資産について
・帳簿価額:100
・時価:150
だった場合には、
差額の50(=150-100)が発生し、
この差額50は利益(譲渡損益)として
損益に計上されることとなります。

 

そしてこれが意味するところは、
「この譲渡損益に対して税金がかかる」
ということです。

グループ内の会社同士をただ単にくっつけただけで、
くっつけた瞬間に損益が発生し、税金がかかる、
という状況になります。

 

つまり、
実施しようとしている「合併」が、
「適格合併」に該当するのか、
それとも「非適格合併」に該当するのか、
の違いで財務上の影響も異なるということです。

 

経営者としては、
ざっくりとしたイメージだけでも良いので、
覚えておいていただければと思います。

————————-
「非適格」の組織再編の場合には、
時価で取引されるため、
譲渡損益が発生し、税金もかかってくる。
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そのうえで、
詳細は、顧問税理士等に
ご確認いただければと思います。

繰越欠損金

次のテーマは「繰越欠損金」です。

これは、グループ内組織再編においては、
必ずと言ってよいほど論点になるところですので、
ざっくりとでもよいので押さえておいていただきたい点です。

 

たとえば、
子会社Bは赤字体質で、
過去に損失の累積である
「繰越欠損金」が残っている会社とします。

一方で、
子会社Aは黒字体質で、
毎年税金も多額に収めている会社だとします。

この状況の中で、
グループ経営者としては、
グループ全体のバランスを図るため、
子会社Bを子会社Aに吸収する形で合併することを
考えたりするものです。

 

この発想は、
多くのグループ経営の現場で
比較的起きている自然な発想と言えるでしょう。

 

そして、
ここで論点になるのが、

「子会社Bの『繰越欠損金』を、
合併した後も子会社Aに引き継いで
使うことができるのか?」

という点です。

 

実は、合併の種類によって
この考え方に違いが生じます。

つまり、
それが「適格合併」なのか、
それとも「非適格合併」なのか、によって、
法人税法のルール上、
子会社Bの「繰越欠損金」を引き継げるかどうかが、
変わってくるということです。

 

細かい規定はいろいろあるのですが、
ざっくりいうと、

————————————
適格合併の場合>
吸収される会社の「繰越欠損金」を
吸収する会社の方で引き継げる

非適格合併の場合>
吸収される会社の「繰越欠損金」は
吸収する会社の方で引き継げない
————————————

といった違いがあります。

 

この「繰越欠損金」を引き継げるかどうかは、
財務上とても大きな影響があるので、
気になる点でしょう。

実際には、
適格合併で「繰越欠損金」を引き継いでも、
状況によって、使用できる金額の制限があったりもして、
すべてを使用できる場合ばかりではありません。

但し、
非適格合併の場合には、
「繰越欠損金」を引き継ぐこと自体ができないので、
使用できる、できない以前の問題となります。

 

そのため、
まず覚えておいていただきたいポイントは、

——————————
合併される側の会社の
「繰越欠損金」を引き継ぎたければ、
「適格合併」である必要がある。
——————————

という点です。

最後に

組織再編における「繰越欠損金」の論点は、
とても多岐にわたるため、
完璧にこの場で説明することは難しいですし、
そのつもりもありません。

誤解を招くもとにもなりますし。

 

ただ、今回お伝えしたいのは、

————————————-
これから実施しようとしている組織再編が、
「適格」なのか「非適格」なのかで、
財務上大きな影響があるため、
事前検討と戦略的な取り組みが必要
————————————-

という点です。

 

経営者の思いつきで、
組織再編を強引に決めたりすると、
財務上は想定外の悪影響が生じる場合もあるため、
そのあたりの事前シミュレーションも検討したうえで、
慎重に取り組んでいただきたいと思っております。

決して、財務上の影響が
検討事項の最優先になるとは考えておりません。
財務上の影響を上回る高い優先順位の目的も
当然あると思いますので。

ただ、思いとしては、
きちんとシミュレーションをしたうえで、
財務上の影響額の良し悪しのリスクを検討材料にしながら、
総合判断をしていただきたい、ということです。
ちなみに、
このような疑問もあると思います。

「『適格』『非適格』があるのはわかったけれど、
それでは『適格』になるためには、
どのような要件が必要なのか?」

 

この要件については、
押さえておいて損は無いと思いますので、
次回に改めてお伝えさせていただきたいと思います。

★★★★★★★
財務的な影響を考えて、
組織再編を検討していますか?
★★★★★★★