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【グループ税制】企業組織再編における「適格」と「非適格」③

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前回までの復習

まずはじめに、
前回までのポイントを
簡単に復習したいと思います。

—————————————-
<ポイント>
●組織再編の場合には「適格」と「非適格」がある
●どちらになるかは選択制ではなく、
  要件を満たすかどうかで自動的に決まる
●「適格の場合=簿価」
●「非適格の場合=時価」
●「非適格」の組織再編の場合には、
  譲渡損益が発生し、税金もかかってくる
●合併される側の会社の「繰越欠損金」を引き継ぎたければ、
 「適格合併」である必要がある
——————————

詳細は、
●「【グループ税制】企業組織再編における「適格」と「非適格」①
●「【グループ税制】企業組織再編における「適格」と「非適格」②
をご参照くださいませ。

 

グループ内の組織を変更する際に、
「合併」や「会社分割」といった手法を
用いることが多いのですが、
それが「適格」なのか、
それとも「非適格」なのか、
必ずどちらかに分類されることになります。

そこで今回は、

「『適格』『非適格』があるのはわかったけれど、
それでは『適格』になるためには、
どのような要件が必要なのか?」

という点についてお伝えさせていただきたいと思います。

 

今回も、複雑になりすぎないように
ざっくりとした解説とさせていただきます。

そのため、さらに詳細を知りたい場合には、
顧問税理士等の専門家へ追加確認を
していただければと思います。

大きく分けると

合併や会社分割といった組織再編は、
いろいろな会社との間で用いられることがあります。

法人税の世界では、
「適格」の組織再編とみなすかどうかは、
組織再編する会社の属性によって、
異なる要件を設けています。

 

その2つとは、

———————–
(1)グループ「内」組織再編の場合
(2)グループ「外」組織再編の場合
———————–

です。

 

このどちらであるかによって、
「適格」になるための要件が異なりますので、
それぞれ簡単に要件を見ていきたいと思います。

(1)グループ内組織再編の場合

まず、グループ内企業同士で
組織再編を実施するケースです。

たとえば、
・子会社同士の合併
・親会社と子会社の合併
・親会社の事業の一部を子会社へ分社化(会社分割)
といったようなケースが挙げられます。

 

グループ経営をしていると、
グループ会社内で組織再編をすることは、
結構あると思います。

このような場合において、
「適格合併」や「適格分割」として扱われるための要件は、
持株比率によって異なった取り決めがされています。

 

できるだけ専門的な用語を使わないように、
とてもざっくりした表現でお伝えさせていただきます。

———————————————-
①100%グループ会社間の組織再編の場合
・金銭等が交付されないこと
・今後も100%のグループ関係の継続が見込まれること

②50%超100%未満のグループ会社間の組織再編の場合
・金銭等が交付されないこと
・今後も50%超のグループ関係の継続が見込まれること
・事業の主要な資産や負債が移転していること
・80%以上の従業員が、継続して業務することが見込まれること
・再編される事業が、継続して営まれること
———————————————-

持株比率によって少し異なりますが、
上記を端的に表現すると、

——————————
企業組織再編前後で、
実態があまり変わらないような場合
——————————

ということです。

 

組織再編前後で実態が同じなので、
帳簿価額もそのまま帳簿価額のままで移行でき、
繰越欠損金もそのまま活用できる、
ということですね。

(2)グループ外組織再編の場合

それでは、次に、
グループ会社ではない会社との間で、
合併や会社分割といった
組織再編を実施する場合について、
お伝えさせていただきます。

 

グループ会社同士でなくても、
事業提携が進み、合併をしたり、
事業を分割譲渡したりすることはあると思います。

そのような場合に、
「適格」の組織再編と扱われるためには、
先ほどの「グループ内組織再編」とは
異なる取り決めがあります。

 

一般的に
「共同事業要件」
と言われるものです。

通常は、
グループ会社ではない会社との組織再編の場合には、
「適格」の組織再編と認められないのですが、
この「共同事業要件」を満たす場合に限り、
「適格」の組織再編として認められます。

 

この「共同事業要件」の具体的な要件とは、
以下の通りです。

————————————–
・金銭等が交付されないこと
・合併や会社分割をする両者が相互に関連する事業であること
・合併や会社分割する事業の規模が同等(5倍以内)であること
・事業の主要な資産や負債が移転していること
・80%以上の従業員が、継続して業務することが見込まれること
・再編される事業が、継続して営まれること
・組織再編により交付された株式の継続保有が見込まれること
————————————–

 

当然ですが、
経営者としてすべてを覚える必要はありません。

ここでは、あくまでイメージだけでも
つかんでいただければと思います。

 

上記をざっくり表現すると、

——————————-
同規模の同業種の会社との間の
実態(合理性)のある組織再編であれば、
「適格」として扱われる
——————————-

ということです。

最後に留意点

上記に見たように
「適格」の組織再編と扱われるためには、
ケース別に具体的な要件がいくつかありました。

 

ただ、
「適格」の組織再編というのは、
あくまで「例外」の規定です。

組織再編前後で、
実態に大きな変更が無いような場合に、
実務上の配慮から、
・帳簿価額のまま引き継げる
・繰越欠損金を引き継げる
といったルールを
例外として規定したものと言えるでしょう。

 

そのため、
「この例外規定が、
 税金逃れのためだけに意図的に行われる
 合理性の無い組織再編に悪用されては良くない」
という趣旨で、
もう1つ上位概念のルールを法律上は設けています。

それが、
「包括的な否認規定」
と言われるものです。

 

つまり、

——————————————-
仮に上記に挙げたような要件を満たしていたとしても、
全体として合理性が無い組織再編の場合には、
「適格」として認めません!
——————————————-

という憲法のような規定です。

 

これは、
伝家の宝刀のような規定ですので、
規定としては存在していても
なかなか、この大原則が適用されるケースは
聞かれませんでした。

ただ、昨年、
この「伝家の宝刀」が適用された事例として、
業界でも有名になった
・ヤフー事件
・IBM事件
があります。

※詳細は「【知識】グループ内組織再編に「税」の逆風?」を参照くださいませ。

 

このような前例が出来たことは、
今後の組織再編には大きな影響があると思われます。

ただ、1つ言えることは、
「実態がある組織再編が否定されているわけではない」
ということです。

形式だけ整えて、
税金逃れを主目的にするような組織再編が
否定されているということです。

★★★★★★★
組織再編の目的は、
何ですか?
★★★★★★★

 

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