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【事例】株式会社クレオ

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※平成28年3月4日に株式会社クレオより適時開示されている「グループ組織再編の検討開始に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

グループ組織再編の検討開始

開示概要

●平成28年3月4日開催の取締役会において、
グループ組織再編の検討を開始することを決議。

●グループ全体を対象として、
事業再編とそれを行うために最適な形態への組織再編について
検討を開始する。

●再編後の具体的な組織構造、事業の配置等については
今後検討していく。

検討の背景と目的

●グループは、平成23年4月に
同社の会社分割と持株会社化を行い、
純粋持株会社である同社が
5社の事業会社を統括する持株会社体制に移行した。

●持株会社体制移行後の5カ年度の間、
グループは特に事業会社の自律性を重視し、
各事業に最適な経営体制の確立を通じて
各事業の収益の最大化を図ってきた。

●一方で経済情勢の変化、
IT市場におけるお客様のニーズの高度化に対応し、
お客様により価値の高い製品・サービス・ソリューションを提供するためには、
分社・持株会社体制化によって得られたメリット、
ノウハウは継承しつつも、
既存の事業会社の枠組みを超えた事業の再編と、
技術力、人財の結集により、
グループとしての全体最適を重視することが必要となってきた。

●これらの背景により、
同社は現在のグループ組織体制を見直し、
最適な事業・組織体制を構築するべく
検討を開始することとした。

●本件検討にあたっては、
グループ内のみならず、お客様、株主との対話も通じて
グループ企業価値向上に向けた最善の判断を行いたいと考え、
本件の検討開始を現時点で知らせることとした。

今後の予定と見通し

●現時点において再編の実施は
平成29年4月を予定している。

●ただし組織再編の形態によっては
株主総会において決議されることが再編実施の条件となる場合がある。

●また、再編により期待される
具体的なシナジー効果、業績に与える影響は現時点では未定。

レビュー

今回の事例は、
「持株会社体制を見直しを含めたグループ内組織再編」
についての開示です。

具体的な内容までは決定していないため、
あくまで個人的な推測が入ったコメントとはなりますが、

—————————————-
●持株会社体制では少し不都合が出てきた
●そのため、持株会社体制ではない
別のグループ組織デザインを検討している
—————————————-

といったことを
お知らせする内容なのだと理解しました。

 

一般的な傾向としては、
ホールディングス化(純粋持株会社移行)する方向の
組織再編が圧倒的に多いのですが、
おそらく今回の事例は、
この一般的な流れとは逆行するような内容に
なるのではないかと思います。

少し前に、
シチズンホールディングス株式会社
が「純粋持株会社」から「事業持株会社」へ移行する、
という一般の流れとは逆行する事例をご紹介しましたが、
今回の事例も、
流れとしては同様な流れと言えるでしょう。

 

多くの会社が「純粋持株会社」へ移行しているなか、
クレオ社は、時代と逆行するような
グループ組織デザインを検討していると言えますが、
その背景には、
いったいどのような考えがあるのでしょうか?

 

今回の開示内容から、
少しキーワードを拾ってみますと、

—————————————————-
●グループは平成23年
5社の事業会社を統括する持株会社体制に移行した。

●持株会社体制移行後は、
事業会社の自律性を重視し、
各事業に最適な経営体制の確立を通じて
各事業の収益の最大化を図ってきた。

●分社・持株会社体制化によって
一定のメリット・ノウハウは得られた。

●一方で、
既存の事業会社の枠組みを超えた事業の再編と、
技術力、人財の結集により、
グループとしての全体最適を重視することが必要となってきた。
—————————————————-

といったところでしょうか。

 

とくにポイントは、

——————————————————-
既存の事業会社の枠組みを超えた事業の再編と、
技術力、人財の結集により、
グループとしての全体最適を重視することが必要となってきた
——————————————————-

という点です。

 

この内容の行間を読むと、
以下のようなことを表しているのではないかと
推測します。

—————————————————–
ホールディングス化して、
各事業子会社が主体的な行動をとる体制には変わったが、
その副作用として「全体最適」ではなく
「部分最適(個社最適)」に陥ることが多くなってきた
—————————————————–

 

あくまで個人的な推測ですので、
実際のところはわかりません。

但し、
ホールディングス化によって
得られるメリットがある一方で、
デメリットが生じることも確かではあります。

そのデメリットの1つとして
よく言われるのが、
「部分最適」「各社最適」に陥る傾向がある、
といった主張です。

 

結局、物事には、
表があれば裏もあるということです。

ホールディングス化によって、
各グループ会社に権限委譲し、
自立性を高めれば高めるほど、
逆に「グループ全体最適」というバランスを失っていく、
という症状が生まれるということです。

 

個人的には、
「各社の自立性・主体性の向上」
「グループ全体最適の実現」
という一般的には相反する目的を調整する機能こそ、
ホールディングカンパニーに求められている役割
なのではないかと思います。

そこに、
ホールディングカンパニーの存在意義が
あるはずです。

 

ホールディングカンパニーが
グループリーダーシップを発揮して、
グループ全体のバランスをとる役割を担えるかどうか。

これが、
ホールディングス経営成功のカギと
言ってもよいかもしれませんが、
クレオ社はもしかしたら、
このあたりに苦しんだのかもしれません。

 

ただ、
ホールディングス経営が
常に万全なものであるわけではありません。

ホールディングス化して
良い面が生まれると同時に、
逆に失うものも出てくるものです。

このようなメリット・デメリットを
経験し、繰り返しながら、
最適なグループ組織デザインを
常に追求していくものなのだと思います。

 

その意味で、
同社が今後公表する
グループ組織デザインや検討経緯は、
いろいろな学びを与えてくれるものとなると思いますので、
要チェックだと思います。

★★★★★★★
グループ全体最適になっていますか?
個社最適、部分最適になっていませんか?
★★★★★★★

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