平成27年8月31日~9月4日の適時開示情報をもとに、
「子会社を減らす」決断をした事例をご紹介いたします。

はじめに

今週は4件の事例をご紹介させていただきます。
「子会社を減らす」という決断は勇気がいるものですが、
経営者として重要な仕事の1つです。

是非、各事例における経営者の決断から
学べる部分を学ばせていただきましょう。

事例1)ニプロ株式会社

●低価格でありながら、日本製と変わらぬ品質を備えた
魔法瓶中瓶の製造・販売を目的として、
平成7年12月、当社70%出資による中国企業との合弁会社、
上海日硝保温瓶胆有限公司を設立した。

●平成9年より上海市において魔法瓶中瓶の製造・販売を行ってきた。

●しかし、その後、上海市の環境規制を含めた都市計画の変更により、
所在地が宅地予定地と設定され、強制退去の指導を受けました。

●そのため平成17年3月末をもって生産を停止し、
事実上の休眠会社となっていたが、
この度、上海市との間で土地譲渡交渉の目処が立った。

●中方出資者より、当方を含めた日方出資者の持分譲渡に
応じる旨の申し出があり、本契約の締結に至った。

事例2)株式会社インタートレード

●平成27年9月2日開催の取締役会において、
完全子会社である株式会社健康 プラザパル(「健康プラザパル」)と
完全子会社である株式会社ビューティーグルカン(「ビューティーグルカン」)の
合併を行うことを決議した。

●健康プラザパルは、
自社グループブランド品を含む健康食品等のカタログ通販や卸売を、
ビューティーグルカンは、
自社グループブランド品のインターネット通販を中心に事業を展開。

●同社グループは、平成27年8月12日公表の
「平成27年9月期 業績予想の修正、
特別損失の計上及び配当予想の修正に関するお知らせ」において、
迅速性と効率性の向上を目的とした
グループ内組織再編を検討する旨開示していた。

●今回の合併はその具体策の一つであり、
業態が近いグループ会社を統合することで、
販売活動の効率性間接費の削減を目的とするものである。

事例3)株式会社エナリス

●平成27年9月2日開催の取締役会において、
子会社である PT. ENERES INTERNATIONAL INDONESIA を
清算することについて決議。

●バイオ燃料によるディーゼル発電所向けの燃料調達を自社で行う目的で
本子会社をインドネシアに設立した。

●現在、事業の選択と集中を進めており、
バイオ燃料の自社調達を取り止めることから、
本子会社を清算することを決定した。

事例4)株式会社メディビックグループ

●平成27年9月4日開催の取締役会において、
連結子会社の株式会社サイトクオリティー(「サイト社」)の株式
同社がサイト社に対して保有する債権譲渡することを決議。

●サイト社では、これまで治験コーディネート業務を行ってきた。

●現在治験事業での収益獲得が厳しい状況が続いており、
今後サイト社の資金繰り等に対する懸念も大きいと考えていた。

●サイト社が引き続きグループにて
SMO事業(臨床試験受託試験事業)を継続していくことは、
グループ全体の収益バランスを
不安定にするリスクの可能性が高い

●また、SMO事業を拡大するために必要となる
人材育成にかかる時間及びそのコスト等を勘案した場合、
今後グループの成長分野および戦略的事業として治験事業に対し資本投下を行い、
事業立て直しを推進して行くことが難しい状況である。

●さらに現時点では異なるものの、
サイト社が現状の経営状況のままであると債務超過となる可能性も高く、
将来的な収益改善の見通しが立っていない状況である。

●現状のサイト社に対して有する債権(子会社貸付)についても
回収の見込みが立たない状況であること等を勘案した結果、
現時点でサイト社を売却し、
資金化することがグループとして得策と判断した。

●売却先を模索し、複数の候補の中より
株式会社クリニカル・トライアルと交渉を重ねた結果、
本株式譲渡契約および債権譲渡契約につき合意に達した。

レビュー

今週の事例は、
いかがでしたでしょうか?
少しだけレビューをしてみたいと思います。

 

事例1)は、
中国企業との合弁会社
中国での事業をしている子会社です。

開示の中には、
「上海市の環境規制を含めた都市計画の変更により、
所在地が宅地予定地と設定され、
強制退去の指導を受けました。」
とあります。

このあたりは、
いわゆる「チャイナリスク」
言ってよいのかもしれません。

但し、
中国に限らず、
とくに新興国では法整備の遅れや
規制緩和が進んでいないことから、
想定外の事象も十分に考えられます。

新興国への進出にあたっては、
その国特有のリスク面の考慮も、
十分に必要であることを教えてくれる事例でした。

 

事例2)は、
「子会社間合併」の事例です。

迅速性と効率性の向上を目的とした
グループ内組織再編を進めていく中での
具体的施策とのことです。

子会社同士と言っても、
やはり相性や相関性、親和性を
考慮しなければ、
後々上手くいかなくなることが多いものです。

今回の事例では、
「業態が近いグループ会社を統合する」
とありました。

このように
業態の近い子会社がある場合には、
「本当に複数社にしておく必要があるのか?」
という視点は、
グループ経営においては重要な視点です。

というのも、
やはり会社が1社でも増えると
管理維持コストがそれなりかかりますし、
グループ内コミュニケーションが難しくなるため、
グループ会社数は、
少なければ少ないに越したことはないからです。

今回の事例でも、
子会社間合併の目的として
・販売活動の効率性
・間接費の削減
の2つが掲げられています。

複数会社にしておくべきか。
経営者として、改めて考えてみていただく
きっかけにしていただければと思います。

 

事例3)では、
インドネシアにある「海外子会社の清算」の事例です。

海外子会社を設立する、
という事例はとても多く見かけますが、
一方で、
海外子会社の撤退が
同時に起こっているのも事実です。

今回の事例では、
事業の選択と集中の一環として、
海外子会社を清算する、
とのことです。

海外展開は重要な戦略であるとともに、
撤退する場合には労力やお金がかかります。

他社の事例も参考にしつつ
最善の準備をして臨んでいただきたいと思います。

 

事例4)は、
「子会社株式の譲渡」の事例です。

先に挙げた事例3)と同様に
事業の選択と集中の一環での、
事業撤退が理由にあるようです。

なかなか子会社の事業の収益化が難しく、
撤退を決断したようですが、
子会社へは貸付金もあるとのことです。

子会社への投資は、
出資にとどまらず、貸付等も発生するのが
一般的です。

上手くいけばよいですが、
そうでない場合には、
出資額だけでなく、貸付金の回収も
難しくなってしまうものです。

資金融通の見極めは、
本当に難しいところではあります。

今回の事例は、
グループとしての今後の成長分野への投資として、
「戦略的子会社」
であったことが読み取れます。

既存事業も重要ですが、
経営者としては、
新規事業への投資も
常に頭にあることだと思います。

どこまで我慢をするべきか。
難しい決断だと思います。

但し、
損切りを見誤ると、
組織としては致命傷になりかねません。

また、
グループ内資金融通もズルズルいきがちなので、
ある程度「撤退ルール」
事前に明確にしておく方がよいかもしれません。

 

ということで、
今週の事例は以上となります。

参考記事

Vol.101 グループ企業を「減らす」視点も忘れずに