連結グループ経営を実践するうえで
社長にも知っておいていただきたい用語の解説です。
はじめに
連結グループ経営においては、
欠かせないキーワードの1つが、
「のれん」
です。
会計用語です。
聞きなれないと、
「のれん?暖簾?」
となってしまうかもしれません。
もしかしたら、
「営業権」
と表現した方がピンと来る
社長もいらっしゃるかもしれません。
会計用語ではありますが、
概念としては重要ですので、
今回は「のれん」についての
基本的な考え方を確認したいと思います。
設例
<前提>
・A社の株式を購入して子会社にする
・A社の帳簿上の純資産は100である
・A社の実際の価値についてDDをした結果、「140」と評価された
・交渉の結果、A社株式を150で購入することとなった。
<「のれん」の計算>
のれん=株式購入額150-A社の純資産100=50
解説
上記の設例でもイメージして
いただけるかと思いますが、
「のれん=購入した際の超過額」
と表現できます。
本来A社の価値は、
帳簿上は「100」なのですが、
企業価値評価をしたり、交渉の結果、
実際の購入額は「50(=150-100)」だけ
高い金額の「150」で
A社株式を購入しています。
金額自体は、
会社の将来性を反映したりして、
交渉で決まっていきます。
帳簿上の純資産が「100」だからといって、
購入額も「100」である必要はありません。
また、
DDの結果の評価額が「140」であっても、
そこから多少の調整が入り、
異なる金額で決まることも実務上はあり得ます。
いずれにしましても、
帳簿上の価値が「100」であるのに対して、
実際の購入額は「150」ということは、
何らかの付加価値を感じて、
差額「50」を多く支払っていることになります。
将来性かもしれません。
また、オーナーシップを手にするプレミアムかもしれません。
いろいろな要因はあると思いますが、
会計上は、これを
「のれん」
として表現をします。
つまり、
「のれん≒超過収益力≒プレミアム」
です。
この「のれん」は
資産として帳簿にも計上されます。
価値を認められているということです。
ただ実際には、
この「のれん」の価値は、
永久に続くものとは言い切れません。
当初見込んだほどの将来性がなかったり、
計画が変わったりして、
「のれん」の価値は目減りすることもあり得ます。
そこで、
日本の会計上では、
資産計上した「のれん」を
減価償却のような形で、
一定期間で費用化していく処理を行います。
先の例でいうと、
たとえば、5年間で償却をする場合、
「50÷5年=10/年」だけ、
毎年償却して費用に計上します。
ちなみに、
国際的な会計基準(IFRS)では、
この「のれん」は、
基本的には償却しないこととなっています。
先の例ですと、
「50」で計上した「のれん」は
償却せずに「50」のままです。
のれんは適正額で
やはり他社の株式を購入する場合にも、
割安な価格で買いたいものです。
感覚的に安いと感じても、
実際の帳簿価値をもとに計算すると
多額の「のれん」が発生することもあり得ます。
「のれん」が多額に生じるということは、
高い買い物をしていることになります。
それに見合った収益を
上げることができれば問題はありませんが、
やはり「のれん」は小さいに越したことはありません。
そのためにも、
きちんと「DD」を行ったうえで、
株式購入額を検討し、
適正な「のれん額」になるように
注意をしていただきたいと思います。