連結グループ経営を実践するうえで社長にも知っておいていただきたい用語の解説です。
解説
前回に引き続き、
繰越欠損金についての解説となります。
【前回のレビュー】
——————————————————–
<前提>
・税率 40%
・税金=利益×40%
・第1期の利益:300
・第2期の利益:▲200
・第3期の利益:100
・第4期の利益:200
<第1期~第3期の税金>
・第1期の税金=300×40%=120
・第2期の税金=▲200×40%=▲80 ではなく「0」
・第3期の税金=100×40%=40ではなく「0」
——————————————————–
それでは、続きの第4期を
見ていきましょう。
第4期の税金
利益は200でています。
通常の計算をすると、
税額は、
「200×40%=80」
となります。
但し、第3期でも見ましたが、
過去の繰越欠損金がある場合には、
当期の黒字と相殺ができます。
繰越欠損金の状況をおさらいすると、
以下のような感じです。
<繰越欠損金の状況>
第1期:発生なし
第2期:▲200の繰越欠損金が発生
第3期:▲100の繰越欠損金を使用した(⇒残りの繰越欠損金は▲100だけ)
つまり、
第2期に発生した繰越欠損金のうち、
「▲100」については、
まだ黒字と相殺されていないため、
残っています。
そのため、
第4期で生じた黒字と
相殺することができます。
そこで、
再度、第4期の税金の計算をすると、
「{200(第4黒字)-100(第2期赤字の一部)}×40%=40」
となります。
繰越欠損金がある分だけ、
税金が減少しました。
そして、
第4期で繰越欠損金も
全額使い切ることができました。
以上が、第1期~第4期の
繰越欠損金と税金計算の概要となります。
いかがでしたでしょうか?
税金は事業年度ごとに計算がされます。
但し、
会社は当期の次は翌期、
またその次は翌々期と、
継続していくことが前提の組織です。
そのため、
税金計算においても、
過去とまったく切り離されて計算されるわけではなく、
過去とのつながりを意識した計算になる、
という側面もあるということです。
注意点
このような繰越欠損金ですが、
将来の黒字と相殺するためには、
2つの要件があります。
それは、
①繰越せる期間が9年間である
②資本金1億円超の会社は、相殺できる金額に制約がある
ということです。
これは具体的にはどういうことでしょうか?
まず①ですが、
たとえば、先の設例の場合ですが、
第2期に発生した繰越欠損金は、
9年後の第11期までに使わなければいけない、
ということです。
繰越期間の「9年」は長いので、
いつかは使えるだろう、
と思われるかもしれませんが、
一応、知識として、
「9年」
という数字を覚えておいていただきたいと思います。
そして、次に②です。
こちらは第3期の例をもとに説明を
させていただきます。
前回の記事にはなりますが、
第3期の税金計算は以下のように計算されました。
「{100(第3期黒字)-100(第2期赤字の一部)}×40%=0」
この計算式が、
資本金が1億円を超える会社の場合には、
以下のようになるということです。
「{100(第3期黒字)-80(第2期赤字の一部)}×40%=8」
どこが違うか、
すぐにわかりましたでしょうか?
繰越欠損金を使用できる金額が、
「100」ではなく「80」になっています。
結果として、
税金が「8」だけ発生することになります。
この「80」はどのように計算されたかというと、
「第3期の黒字100×80%=80」
という計算になっています。
つまり、
資本金が1億円を超えるような
大きな会社の場合には、
「体力もあるので少しは税金を払いましょう」
というルールになっているのです。
社長自らが税制の細かい点を
覚える必要は無いと思いますが、
ポイントだけは押さえておいた方が良いと思います。
このポイントを復習すると、
①繰越欠損金の概要を把握すること
②繰越せる期間に制限があること
③資本金が1億円を超える場合には使用制限があること
の3点になります。
1つ留意していただきたいのは、
このルールも、
毎年の税制改正で変わる可能性がある、
ということです。
この記事を書いている
2015年7月4日時点では、
このようなルールになっているということです。
ちょうど平成27年度の税制改正で、
上記②や③の期間や割合が変更されることにもなりました。
そのため、
現状のルールがどうなっているかは
税理士さんに随時確認される等の
対応が必要になります。
以上が「繰越欠損金」の概要解説になります。
いかがでしたでしょうか?
すでにご存じの知識であったかもしませんが、
この「繰越欠損金」というテーマは、
グループ経営になったときに、
より重要なテーマになってきます。
そのため、
まずは基礎知識として、
繰越欠損金の基礎を
お伝えさせていただきました。
次の機会では、
「グループ経営における繰越欠損金」
の解説をしてみたいと思っています。
参考
●「【グループ税制】企業組織再編における「適格」と「非適格」②」