連結グループ経営を実践するうえで社長にも知っておいていただきたい用語の解説です。
解説
繰越欠損金については、
グループ経営をしている場合には、
大きな論点になることがあります。
ですので、
ご存知かもしれませんが、
「繰越欠損金」
についての考え方の概要を
簡単に解説させていただきます。
繰越欠損金は、
「くりけつ」
とか
「くりそん」
といった表現を使われる方もいます。
ざっくりいうと、
「過去の赤字額の累計」
かつ、
「まだ黒字と相殺されていないもの」
です。
どういうことか、
数値を使って説明してみたいと思います。
前提
・税率 40%
・税金=利益×40%
・第1期の利益:300
・第2期の利益:▲200
・第3期の利益:100
・第4期の利益:200
このような前提がある場合に、
各期の税金の金額はいくらになるでしょうか?
第1期の税金
利益が300でています。
税額は、
「300×40%=120」
となります。
ここまでは、大丈夫だと思います。
次に第2期を見てみましょう。
第2期の税金
利益ではなく、赤字が200でています。
税額は、
「▲200×40%=▲80」
となります。
税金がマイナスということは、
税金が戻ってくるのでしょうか?
実際には、
今の日本の税制では、
「▲200×40%=0」
と計算されてしまいます。
つまり、
税金が戻ってくることはありません。
利益が出たときは、
当然それに応じた税金が発生しますが、
赤字になったときは、
税金が戻ってくるわけではなく、
支払いが「0」になるだけです。
なんだか、
いいとこどりされた感じで、
少し損した気分ですね。
これは仕方がありません。
今の日本の税制がこうなっていますので、
まずは受け入れるしかないのです。
次に第3期を見てみましょう。
第3期の税金
利益が100でています。
税額は、
「100×40%=40」
となります。
ここで、
少し第2期のことを
振り返っていただきたいと思います。
赤字が「▲200」で、
税額が「0」でした。
普通に税額を計算すると、
「▲200×40%=▲80」
となり、
「80」の税金が戻ってきてもよさそうでしたが、
そうはなりませんでした。
実際には第2期の税金は、
「▲200×40%=0」
と計算をされました。
但し、
これでは不公平です。
黒字と赤字が出るタイミングによって、
税金の金額が大きく変わってしまいますので。
そこで、
今回の第3期のように、
過去に赤字が発生していて、
本来、税金が戻ってくるべきなのに
戻ってきていない場合に登場するのが、
「繰越欠損金」
の概念です。
つまり、
第2期の赤字額「▲200」のことを
「繰越欠損金」
と表現します。
第3期に、
繰り越された赤字ですね。
この繰越欠損金は、
将来黒字が発生したときに、
税金を計算するうえで、
その黒字と相殺ができる赤字
ということです。
具体的には、
第3期の税金計算がどうなるかというと、
「{100(第3期黒字)-100(第2期赤字の一部)}×40%=0」
と計算されるのです。
つまり、
第2期に発生した赤字「▲200」のうちの
一部である「▲100」を、
第3期の黒字「100」と相殺します。
そうすることで、
税金計算上の利益は「0」になり、
税金も「0」になるのです。
この結果、
第3期末時点で残っている
繰越欠損金は「▲100」だけとなります。
まだ使いきれていない第2期の赤字「▲100」は、
第4期以降の黒字と相殺ができるということです。
留意点
1つ注意をしていただきたいことがあります。
今回のお話は、
あくまで税金計算上の計算方法のお話です。
第3期は黒字になっていますが、
この利益が無くなるということを
意味するわけではありません。
繰り返しになりますが、
税金の計算プロセスのお話ですので、
ご留意ください。
長くなりましたので、
続きは次回に回したいと思います。
今回はこのへんで。
次回は「第4期」の税金計算と、
繰越欠損金の注意点をお伝えしたいと思います。