ホールディングス化の目的
先週は、英国の選挙で、
EU離脱という結果になりました。
最後には、
「EU残留」という結果になると予想していたため、
個人的には、とても意外でしたが、
一方で今後の経済がどうなっていくか、
不安なところです。
景気の良い時や平時のときは、
なんとなく事業継続ができる場合もありますが、
経済混乱のなかでは、
本当に実力のある会社でなければ、
生き残っていくのは難しいものです。
そして、経済混乱のなかでは、
いろいろな理由で、
会社自体の売買(M&A)も
今後、増えていくかもしれません。
景気の良いときには、
拡大路線、多角化、M&A、
のメリットばかりが注目されがちですが、
経済状況が厳しくなると、
一気にデメリットが表に出てくることが多いです。
そこで、
今回は「M&A」というテーマに注目して、
書いてみたいと思いますが、
ホールディングス化の目的として、
「M&Aに対応していくため」
といった目的が挙げられることが多いこともあり、
ホールディングスと絡めて「M&A」を
考察をしてみたいと思います。
なぜ、ホールディングスがM&Aに適しているのか?
本当にホールディングスがM&Aに向いているのか?
改めて考えてみたいと思います。
なぜホールディングスがM&Aに適しているのか?
なぜ、ホールディングス形態は、
M&Aに適しているのでしょうか?
なんとなくはイメージできるかもしれませんが、
改めて考えてみると、意外と「なぜ」なのかが、
出てこないのではないでしょうか?
一般的には、
「ホールディングス=グループ経営機能の専門化」
と表現できると思います。
そして、
ここでいう「グループ経営機能」のなかに、
「M&A」も含まれるということなのだと思います。
確かに、グループ経営機能があれば、
そこで、グループ全体の戦略立案したり、
子会社の管理をしたりすることが求められるため、
その延長線上にM&A対応というものも
含まれると言えるでしょう。
その意味で、
ホールディングカンパニーに
M&A対応というミッションも課すことで、
片手間ではなく、専門部隊として、
M&Aもきちんと実践していけるはずです。
一方で、
ホールディングス形態でなくても、
このあたりを意識して取り組めば、
きちんとM&Aにも対応できるということなのだと思います。
M&Aの難しさ
ただ、「M&A」の失敗は、
本当によく聞かれますし、見かけます。
そこで、
改めて「M&A」の難しさについて考えてみると、
多くの会社は、どこで一番失敗したり、
苦しんだりするのでしょうか?
いろいろなケースにおいて、
いろいろな理由はあるのでしょうが、
個人的に思うのは、
———————
異なる企業文化で育った社員同士が、
「変化」に上手く対応できないこと
———————
が挙げられるような気がします。
業績が苦しい子会社を再生しようと、
子会社化するケース。
新市場に進出するために、
該当市場の企業を子会社化するケース。
業績は問題ないが後継者がいないため
事業を引き継ぐ形で子会社化するケース。
どのようなケースであれ、
異なる企業文化同士が交じり合うことになります。
経営者や親会社としては、
この異なる企業文化を上手く融合して
グループが一丸となれる状況を作り上げなければ、
最終的にM&Aを成功に導くのは難しいでしょう。
新たに子会社になった社員の意識を
変える必要があるとともに、
親会社側も新たな企業文化を受け入れる
寛容さも求められます。
但し、
基本的に人間は「変化」には弱いですし、
「変化」に抵抗するのが自然な反応ですので、
意識を変えたり、他の文化を受け入れるのは、
容易ではありません。
ここにM&Aの失敗の
多くの原因があるように思います。
変化への対応
それでは、もう一度、
「変化への対応」
という視点で、
ホールディングスとM&Aの関係を
考えてみたいと思います。
つまり、
「ホールディングス形態の方が、
『M&Aによる変化』へ各社員が上手く対応できる」
のであれば、
ホールディングス形態の方が
M&Aに適していると言えるはずです。
ここから先の議論は、
私の”感覚的な側面”が強くなりますが、
個人的には、
———————
ホールディングス形態の方が、
親会社社員も子会社になる社員も
M&Aによる「変化」へ対応しやすい
———————
と思っています。
その理由は、
「親会社≠事業会社」
だからです。
事業会社が親会社も兼ねる場合には、
どうしても、
・親会社の事業=上
・子会社の事業=下
という関係が成り立ちやすいと感じます。
たかが「資本関係」だけとはいえ、
これが大きな「上下関係」を生み、
事業間に上下関係ができてしまうのです。
そして、
————————–
この「事業間の上下関係」は、
「変化」への対応を鈍らせる傾向がある
————————–
ように思うのです。
子会社の社員は、
どうしても親会社の社員に引け目をもち、
受け身体質になりますし、
逆に親会社は子会社社員を「格下」と見ることで、
親子間の事業シナジーが生まれづらくなります。
M&Aで外から他の企業を買収する場合には、
なおさら「上下関係」の意識が生じやすいといえます。
本来、グループの各事業会社は、
お互いに助け合ったり、ときには切磋琢磨したりすることで、
シナジー効果を発揮していく形が理想的です。
そのためには、
——————————-
グループの各事業会社同士は、
お互い「上下関係」の意識を持たない方が、
健全な関係のもと、お互いに協力し、切磋琢磨しながら、
結果的には「変化」へも対応しやすくなる
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ように思います。
本当にホールディングスがM&Aに向いているのか?
一方で、
ホールディングス形態の場合は、どうでしょうか?
ホールディングスの場合、
グループの各事業会社が並列的な資本関係にあるため、
事業会社間においては、
資本関係による上下関係は存在しないため、
グループ各社同士が協力し合ったり、切磋琢磨するような
健全な関係を築きやすい環境があると言えます。
さらに、ホールディングカンパニーが
子会社管理という明確なミッションを持ち、
「グループ経営」を経営すること自体を専門にしている点は、
大きな違いと言えるでしょう。
M&Aによって生じる
グループ内の「変化」に対応できるような
仕組み作り、環境整備、等の配慮も意識していくのも、
ホールディングカンパニーの役割です。
事業をもたないホールディングカンパニーが
その独自の立ち位置で、
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・全体調整役としてのミッションを明確にし、
・事業間の壁や上下関係を取り除く役割をこなし、
・「変化」を受け入れる環境や仕組みを整備すれば、
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自ずとM&Aの成功確率も
上がるのではないかと思います。
★★★★★★★
グループ内の「変化」への対応ができる
仕組みを作れていますか?
★★★★★★★